宇宙工場サブファイロット 07章 囚われの制作者3
「――それは、ご命令でしょうか。」
スペアは目を丸くして、目の前のロボットを見上げた。
「もちろん命令だ。知っているなら教えてくれ。」
ロボットは無言で、目のライトをいっそう点滅させた。パドが壁際から身を起こし、静かにスペアの隣に歩み寄る。そして、隙のない様子でじっと青いロボットの様子を伺った。青い異形のロボットは、天井の高い中央会議室の中にあっても、ひときわ大きく見える。それが黙っているのは、どこか恐ろしげだった。
しばらくして、R4は無機質な声で答えた。
「私は、そのご質問に答える権限を持ちません。IS354にお尋ねを願います。」
「IS354?」
聞き慣れない型番にスペアが眉をひそめる間に、R4はするすると元いた場所に戻っていってしまった。腰のビームライフルに手をかけていたパドが、ロボットたちの列を油断なく眺め回す。スペアは隣のナット、ボルトを振り向いて、
「IS354って、そんなロボット知ってるか?」
「知らない。」
ナットがすぐに首を横に振る。ボルトも首を傾けて、
「Iナンバーなら、どのみち情報管理用に動いているロボットだろう。それならリーダーのI222に聞けば分かる。I222、出てこい。」
すると今度は、会議室の一番奥にいた小型の白いロボットが、彼らの前に進み出てきた。この前、パドの故郷について恐るべき報告をしたロボットだが、ボルトは既に発声のロックを解除し、通常の状態に戻している。スペアは不審そうに、横の二人に小声で尋ねた。
「質問に答える権限を持たないって、そんな風にロボットが答えることがあるのか?」
「今あったじゃないか。」
ボルトがぶっきらぼうに答える。ナットはボルトを見て、それからスペアを振り返ると、
「とても重要な情報だと、むやみに聞かれた人すべてに答えないように、ロボットのリーダーだけが質問に答える場合があるはずだよ。でもR4はリーダー・ロボットだから、下位のロボットとは違うのに。」
「それに、I222に聞けって言わないのもなぜだ?」
ボルトもぼそっと言う。いつの間にか、三人のすぐ後ろに立っていたパドが、ロボットたちから目を離さずに低く言った。
「つまり、あのR4とかいうごついロボットやIの222より、そのISなんとかの方がさらに偉いロボットなんだろうよ。お前たちがそれを知っていたかどうかは別だが。」
「おっさん、リーダー・ロボットのR4の上は、いまロボット全体を統括しているA3がいるだけで、他に上位のロボットはいない。I222にしたって同じことだよ。」
白いロボット、I222は、いつの間にか四人の前で停止してアームを交差し、命令を待っていた。スペアの隣のボルトは、優雅なロボットにぶっきらぼうに尋ねた。
「I222、答えろ。IS354っていうのは、どこのロボットだ。」
白いロボットは、華奢なアームをゆるやかに上げ、まるで人間が手をあげて説明するように答えた。
「ISナンバーはみな、大統領府管理センター直属の情報ロボットです。ボルト様。」
パドが厳しい目つきでロボットを睨む。ボルトもすぐに言葉を続けた。
「お前たちIシリーズそのものが、みんな大統領府付きのロボットのはずだろう。何がどう違うんだよ。」
白いロボットは、目のライトを明滅させた。
「ISナンバーのロボットは、私の指揮下にありません。ISナンバーはみなそれぞれ、管理センターの部門別に所属し、その指揮系統に入っております。」
スペアたちは顔を見合わせた。ボルトがさらに声を低くして尋ねる。
「じゃ、IS354の所属部門は。」
「存じません。」
「所属も分からないのか?」
「はい、私の指揮系統にIS354はおりませんので。ナンバーだけは、確認できますが。」
ボルトはしばらく無表情で黙っていた。その間にナットが前に進み出ながら、きっぱりとした態度で言った。
「I222、IS354を呼び出せる? 呼び出すことは出来るよね?」
「はい、できます。ナット様。」
「じゃ、すぐにIS354を呼び出して。話があるから。」
彼らが落ち着かない気分で待っていると、会議室の入り口から、やはり白いが、今までのロボットとは形が異なる一台のロボットが現れた。
次回更新は10月上旬の予定です。




