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宇宙工場サブファイロット 07章 囚われの制作者2


 一方スペアは、どこか恐ろしい気がするコモンプログラムの解析は自動処理に任せ、同じく自動で解析を進めていた、もう一つのパネルデスクに向かっていた。そのデスクには、曳航船が人工衛星で取得したデータが入れてある。航行中の曳航船は外部センサーを動かし、船の状態だけでなく人工衛星の情報もあらゆる面から収集していたが、それゆえにデータが膨大で、解析に時間がかかっていた。


 しかし、それもようやくデータの可視化が進み、ひとつの形にまとまりつつあった。とはいえ、すべてを自動で出来るほどこのパネルデスクの性能は良くないし、そのためのプログラムも入っていない。

 スペアは文句も言わず、作業を淡々とこなしていった。もちろん建物データの解析など、設計室の彼ははじめてだったが、設計室の仕事で得た知識と経験が存分に役立っていた。彼は中型のパネルデスクが色とりどりの線で描き出す人工衛星の様子を丹念に追っていき、戦闘ロボットの格納場所らしいところを発見した。


「いよいよとなれば、ここを真っ先に攻撃して、先手を打つこともできるな。」

 思わずつぶやいたが、そうなるとその近くにある、太いエネルギーラインへの損傷は免れないだろう。

「ここを破壊すると、爆発が起きるか。それはちょっとまずいな。このエネルギーの供給元はどこだろう。」

 パネルを叩き、黄色い一筋の線をたどっていくと、やがて幾筋もの黄色い線の出発点になっている大きな施設にたどり着いた。

「エネルギー発電所か。」

 スペアは腕を組んで、しばらく考えた。発電所からエネルギーの供給を止める。そうすれば、爆発は起きないだろう。

「だけど、発電所に着く前に、戦闘ロボットが襲ってくるだろうなあ。」

 スペアは傍らに置いた容器を取り上げ、飲み物を少し飲んだ。後ろでひとつにまとめている髪を一度解いて縛り直し、考えをめぐらす。そしてふと、一本の黄色い線が、発電所から他と違った方向に伸びているのに気がついた。何の気なしにその先を追ってみると、おかしな事が分かった。他の色の線、水色や緑の線などが、その黄色の線と平行して走っていくのだ。

「エネルギー、それに水、空気のラインだな。このピンクのもいつの間にか平行して走っている。エネルギー発電所以上に、どこか重要な場所に向かっているのか?」


 スペアはキーを叩いた。線の向かう先は、曳航船が降りた場所からはずっと遠く、データが少ない。着陸前にわずかに取得したデータがあるだけである。彼は頭をしぼって、パネルデスクが自動解析時に振り落としたわずかなデータを探し出し、情報に加えていった。

 どのくらい時間が経ったか、新たな画像がパネルデスクに描かれ始めた。

「これは・・・?」

 スペアは、途切れがちの細い線で描かれた画像をじっと見つめ、目を何度も瞬いた。

「この建物。何だろう。――エネルギーラインが、どれもこれを通っている。水、空気、エネルギーに、これは何だ? こっちの工場のようなところで作られた・・・、食料か何かか?」

 パネルデスクには、明らかに他と違った、異様な形の建物の輪郭が描き出されている。

「明らかにデータセンターじゃない。いったいこれは、何だろう?」

 スペアはいつまでも画面を見つめていた。




 夕食前に中央会議室で行われる、定例のロボット会議では、発着場の修理が六割がた終わったこと、その他の施設も計画通り、順調に修理が進んでいることなどがロボットたちから報告された。相変わらず、パドは壁際で壁にもたれ、ロボットの列から距離を置いて腕組みをして立っており、三人は並んでロボットたちの報告を聞いている。リーダー・ロボットの報告が終わると、スペアはずらりと会議室の両側に立ち並んだロボットたちにねぎらいの言葉をかけた。

「ところで、A3。人工衛星の施設について、ちょっと聞きたいんだが。」

「はい、何でしょうか。」

 スペアは、人工衛星の様子を記録したデータチップがあるとは言えないので(ロボットがまたデータチップを破壊したがるかもしれないからである)、慎重に言葉を選びながらA3に尋ねた。

「人工衛星には、たくさん施設があったみたいだな。」

「はい。大小合わせて、682の施設がありました。」

「そのほとんどは、お前たちが誤作動を起こした時に、破壊されている。」

「おっしゃるとおりです、スペア様。」

「だけど、破壊を免れた建物もあったんじゃないのか?」

 A3は頭部を回転させ、目のライトを明滅させた。

「はい。それは、R4にお聞きになった方がよろしいかと思います、スペア様。」

 すると、戦闘ロボットのリーダー、R4が前に進み出てきた。この巨大なロボットは、人工衛星をステーションから攻撃したRW型のリーダーでもある。

「人工衛星にあった623の施設については、全壊、半壊したと判断しております。残り59の施設については、レーザービームの直撃を免れたと判断しております。」

「その59の施設だけど。施設の内訳をお前、答えられるか。」

 するとR4もまた、その目のライトを明滅させて内部データを検索し始めた。ナットとボルト、それにパドも、スペアがこんな質問を始めたのか理解できず、驚いた表情で彼を見ている。そっとナットがスペアに囁いた。

「スペア、ねえ、人工衛星の施設がどうかしたの? 戦闘ロボットの、格納庫のこと?」

「いや、後で詳しく話すけど、ちょっと気になる施設が人工衛星にあったんだ。何かそこだけ、ひっかかるんだよ。」

 そのうちに、R4は目を明滅するのをやめた。しかし、ロボットが言ったのは、スペアの問いに対する答えではなかった。


次回更新は9月下旬の予定です。

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