宇宙工場サブファイロット 06章 コモンプログラム1
02 コモンプログラム
第06章 コモンプログラム
それから数日は何事もなく、平穏に過ぎた。
スペアはひとり、副会議室で膨大なデータの解析に明け暮れ、他の三人は、発着場にある管制塔のモニタールームで、曳航船やパドの船のエンジン、発着場の修理などを作業ロボットに指示し続けた。もちろん、彼らにもスペアを手伝いたい気持ちはあったのだが、製造室のナットにしろ、調整室のボルトにしろパドにしろ、データの解析には向いていない。
「スペアの解析、長くかかってるね。根詰めすぎにならないといいけど。」
管制塔のモニタールームに並んだ白い椅子に腰掛け、モニター越しにロボットの動きをチェックしていたナットが言うと、隣に座ったボルトも小さくうなずいた。
「会議室のパネルデスクなんて、設計室にあるような高性能のパネルデスクとは違うからな。十倍か二十倍は時間が掛かるだろう。」
ナットを挟んでボルトの反対側に腰掛けていたパドが、のんびりと二人を振り返る。
「なんだい。設計室ってとこは、そんなにいい機材があるとこなのかい。」
「そりゃあそうだよ。僕らの使ってたパネルデスクとも全然違うんじゃないかな。ねえボルト。」
「そうだな。製造室のパネルデスクがどんなのか知らないけど。多分、私たちの調整室が一番下だろうな。いつもおさがりの型落ちがまわってきたし。」
「調整室ってそんなだったの? 全然知らなかった。僕らだってそんないいのを使ってた訳じゃないけど、だいたいTR7850っていう中型のが多かったかな。」
目を丸くしてナットが話す。
「あの、銀色にオレンジのラインの入ったやつか? それだけのデスクをこっちにも回してもらえたらなあ。調整室にはそれだって二台しかなかったよ。ひどいもんだ。『調整室の皆さんは、調整に慣れておいででしょうから』なんていって、古い動作不良のパネルデスクが次々送られてくる。」
口を尖らせて皮肉たっぷりに口まねするボルトに、思わずパドは吹き出した。
「おやおや、お前たちもずいぶん苦労してたんだな。」
「そりゃあそうさ。スペアがいないから言うけど、設計室のひょろひょろ野郎・・・、設計室の奴らの事だけど、設計士と調整士が『直にお話させていただく』なんて事、普通あり得ないんだから。」
そう言うと、ボルトは傍らのレバーをぽーんと押し、背もたれを倒してそのままごろんと転がった。だだっ子のような様子をナットは呆れて見て、
「でも、そんなこと言ったって調整しなかったらロボットは一台も出荷できないんだし。調整室だって設計室同様、重要な仕事じゃない。」
「いいなあ、そんな風に言えて。あんまり言いたくないけど、設計室はエリート揃いだろ。製造や調整を、下っ端みたいに見下してるような奴も多いんだぞ。」
腹ばいになって頬杖をつき、横目で言う彼女をナットはきょとんとした顔で見た。彼はまだ、スペアやボルトほど長いサイクル(勤務時間)を積んでいなかったし、だいたいが楽天的で陽気な性格なので、そう言った面にまだ触れたことがなかったのだ。
「でも、スペアは全然僕らを見下してなんかないよ。」
次回更新は7月下旬の予定です。




