宇宙工場サブファイロット 05章 探索機の去来5
「お前、そこの白いの。Iのなんとかとか言ったな。」
「私にお尋ねでしょうか、ボルト様。I222です。」
白一色の、妙に美しい小型ロボットが前に進み出てきた。二本のレッグパーツを交互に動かして移動する、大変珍しいタイプのロボットである。
「I222、サブファイロットの戦闘ロボットは、本当にこのパドの宇宙ステーションを攻撃したのか? その記録はあるか?」
「その宇宙ステーションの名前をどうぞ。」
白いロボットが美しい声で答える。ボルトはパドを振り返った。
まだ、彼のステーションの名前を三人は聞いていなかった。――恐くて聞けないでいたのだ。パドは腕を組んで壁にもたれていたが、投げやりな態度で腕を解いて広げた。
「俺の話を信用してなかったのか? ボルト。」
一瞬ひるんだ様子を見せたボルトは、珍しく感情的な声で答えた。
「そうじゃない。そうじゃないけど、ロボットなんてどれも似たり寄ったりなんじゃないか? ここ以外にだって製造工場はあるはずだ。」
するとナットもためらいがちに、
「そうだよ。僕たちの作ったロボットがそんな事したなんて、やっぱり信じられない。僕も確認したい。パド。」
勢い込む二人の前に、スペアが回り込んでいた。押しとどめるように手を広げ、
「ちょっと待て。ボルト、ナット。おっさんに辛い話を蒸し返させる気か? やめろよ。もうその話はやめよう。」
するとボルトとナットはさっと顔色を変えて押し黙ったが、パドはゆっくりと手を上げて言った。
「なに、構わないよ。この際はっきりさせておくのもいいだろう。ただナット、泣くなよ。お前もだボルト。俺のいた宇宙ステーションは、パズサワー宇宙ステーション。ステーション記号はP227のU。」
白いロボットがその大きな青い目を明滅し始めた。そして、滑らかな声で答えた。
「そのステーションには納入記録があります。合計8種、582体の戦闘ロボットが納入済みです。取扱いはルーミス兵器商業、アーチボルト宇宙産業です。」
「I222、おっさんのステーションにも俺たちの戦闘ロボットが納入されていたのは分かった。意外だったけど。でもボルトが聞いたのは、おっさんの宇宙ステーションを、サブファイロットのロボットが攻撃したかどうかって事なんだ。」
「分かっております、スペア様。パズサワー宇宙ステーションを攻撃、破壊したのは、そのロボットです。」
一瞬、パドが動きを止めた。
「何だと?」
壁から飛び上がり、ロボットを凝視する。
「記録があります。正確には、納入された582体の戦闘ロボットのうち、532体がライトタワー宇宙ステーションに秘密裏に移されました。ライトタワー宇宙ステーションにはサブファイロットから562体のロボットが納入、うち1体は到着後不良品として処分されておりますので、561体のロボットがあり、そのロボット軍に追加編入されました。」
「意味が分からん、どういう事だ!」
「おっさんやめろ!」
激高して華奢なロボットに襲いかからんばかりのパドを、必死に制止しながらスペアが叫んだ。
事情を理解できないロボットは、目のライトを点滅させながら淡々と続けた。
「パズサワーとライトタワーは交戦間近の緊迫した状態にありました。そのためどちらにも納品数を増やすことに成功しました。原因は、中間地点の鉱物衛星の所有権をめぐるものと記録にはあります。」
「でたらめを・・・この鉄くずが・・・」
パドが激しい調子で、
「交戦間近だと? 鉱物衛星だと? そんな事パズサワーではなかった!」
「落ち着けって、おっさん!」
しかしパドはスペアを振り払い、よろめいたスペアは壁に背中をぶつけた。すぐナットが駆け寄り、スペアを支える。そして不安げに、別人のようなパドの形相を見つめた。
「パズサワー政府との交信記録があります。間違いはありません、パド。ですが、開戦直前にパズサワー防衛大臣がライトタワーへ打診、532体のサブファイロット製攻撃ロボットはすべて非公式に移送されました。またその際、ロボットの戦闘性能、戦闘時のシミュレーションについて、こちらに再度確認がありました。」
怒りのせいか、それとも驚きのためかパドは言葉も発せず、ただ怒りをみなぎらせて目の前のロボットを睨みつけている。I222はマウスパーツを動かしかけたが、その前に壁際のスペアが低く、震えながら尋ねた。
「間違っていたらそう言ってくれ、I222。パズサワーとライトタワーは戦争間近だった。どちらにもサブファイロットから戦闘ロボットが納入されていた。でも、パズサワーの分はその大臣が裏切ってライトタワーに持ち込み、それがパズサワーを攻撃した――。そう言っているのか?」
次回更新は7月上旬の予定です。




