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ありがとうと、伝えたくて



  現れた大群のウィザー。以前の、ボタンが散ったあのときとはまた違う、異常な状態。あんな数、今までに見たことがない。


 それに加えて、こちらの戦力はひまわりただ一人……いくら、ひまわりが先ほど俺のおかげで勝てたとは言っても、この数の前ではそんなもの関係ないだろう。



「あ、あれ……どう、したら……」



 こんな状況、陥ったことがないからなにをどうしたらいいのか、わからない。それは、ひまわりもおそらく同じはずなのに……


 ……驚くほどに、涼しい顔をしていた。



「ひまわり……?」


「大丈夫。ユウキは……みんなは、私が守るから。ユウキは、ここにいて……私に、守るための力を、貸して」



 ただ、それだけを告げて……ひまわりは力を解放する。たくさんの植物の根が地面から生え、それらがウィザーへと襲いかかる。


 捕らえ、捕らえられ、砕き、砕かれ。その繰り返しではあるが、平行線とはいかない。どんどん湧いてくるウィザーとは別に、ひまわりは一人。しかも、力も有限だ。


 証拠に、先ほどまではなんともなかったはずの体が……再び、崩れ落ち始めていた。先ほどの謎の現象は、都合よくは働かない。


 根を伸ばし、駆け走り、剣を振るい……ひまわりは、奮闘する。どれだけ奮闘しても、倒しても、ウィザーの数は減らない。それでも、ひまわりは諦めない。


 彼女は……わざと派手な動きをして、ウィザーの注意を引き付けている。それは、俺に危害を加えさせないためだ。


 ひまわりはその言葉通りに、俺を、みんなを、守るために戦っている。



「……!」



 ウィザーの触手に、肩を貫かれる。しかしひまわりはそれを切り落とし、植物の剣でウィザーの体を貫く。


 ウィザーの巨体に、体当たりをされる。よろめくひまわりは吐血しながらも重心を揺らし、回転蹴りを放つ。


 ウィザーの小さな体が自滅し、ひまわりにダメージを与える。左足が膝から下が吹っ飛ぶが、植物の根により急ごしらえの脚を作る。



「ひまわり……!」



 見ていて、痛々しい。だがひまわりは、止まらない。体が朽ちようとも、赤い血を流そうとも。


 痛々しくて見ていられない……しかし、俺は目が離せなかった。ひまわりのその姿を、最後まで目に焼き付けようと……まばたきすら、惜しく。


 そして……



「……!!」



 大群に囲まれたひまわりは、すでに満身創痍だ。もはや、ウィザーに押し潰されるのを待つしかない……


 だが。



「お前たちには……なに、も……奪わせ、ない!」



 ひまわりの、魂からの叫びが聞こえ……彼女の背中から伸びる植物の根が、周りのウィザーを串刺しにしていく。


 それに伴い、ひまわりの体も朽ちるスピードを早め……



「…………」



 俺は、動けない。怖くて……ではない。怖いは怖いが、そんなことを言っている場合でないのはわかっている。


 ならば、なぜか……答えは、俺の足に、植物の根が絡み付いているからだ。ひまわりが、俺がひまわりに駆け寄らないように防いでいるのだ。


 だから俺は、見ているしかできない。そんな俺を、ひまわりはただ……うっすらと、微笑みだけを浮かべて、見ていた。



『ありがとう』



 口が動き……こう言ったように、俺は感じた。


 直後……ひまわりの体がはぜ、植物の根が四方八方に伸びていく。それはウィザーを串刺しに、目に見える範囲すべてのウィザーを仕留める。


 それに留まらず、根は伸び続ける。それはやがて、俺とひまわりの間を分かつように、壁となりそびえ立つ。植物の根で作られた、大きな大きな金網のような壁が、俺たちの世界とウィザーの世界を分け隔てた。

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