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死んでほしくないと言ったから



「ぜぇ、はぁ……」



 苦戦していたはずのウィザーを粉々に破壊し、戦いに勝利する。肩で息をするひまわりは、すさまじいほどの速さと力で、ウィザーを圧倒した。


 これまでにないほどの、かなりの力を消費したはずだ。それこそ、今のひまわりには耐えきれないほどの。


 だけど……ひまわりの体に、異変はない。それどころか、欠けていた腕が元に戻り、現在も健在だ。これは本来、ありえないこと……あの理屈親父の班目がどんな顔をしてるか、見てみたいもんだな。



「ひまわり……」



 俺はゆっくりと、ひまわりに近寄っていく。ひまわりも同様に、俺に歩みを向けて。


 ウィザーの体は、ゆっくりと消えていく。



「すげーよ、こんな化け物を倒しちゃうなんて。あ、べにがさとたんぽぽもお疲れ……」


「別に。後半ひまわり一人で倒してたし」


「うんうん」


「あはは……」



 戦ってくれていた二人にも声をかけるが、なんか素っ気ない。もしかして、ちょっと拗ねてる? かわいいとこもあるじゃないか。


 実際問題、二人がウィザーの相手をしていてくれたから、勝てた部分もある。拗ねる必要はないというのに。



「ユウキ……」



 そこへ、ひまわりが口を開く。あんな戦いの後だというのに、彼女の顔はどこか晴れやかだ。


 なんか……少し大人っぽくなった、ような気がする。俺よりも小さいはずの女の子が、とても大きく見える。



「勝てたのは、ユウキのおかげ」



 彼女は、穏やかに話す。



「お、俺? 俺はなにも……」


「ユウキがあの時、死んでほしくないって、言ってくれたから……あの時、力が出た。だから、ユウキのおかげ」



 ……やっぱりあれ、聞こえてたんだよな。俺はなんて恥ずかしいことを……まあ、そのおかげでひまわりが勝てたのであればいいけど。こりゃ、後で班目やガーベラにからかわれるな。



「ま、お話は追々。そろそろ、戻りますよ」


「あぁ、そうだな」



 たんぽぽが口を挟んだことで、一旦会話は中断。そう、話は後からいくらでもできる。ひまわりが言いかけたことだって、そのときに聞けばいい。


 あのウィザーの体が完全に消えたら、俺たちもいつもの光景に戻って……



「……あれ?」



 ……あの無機質な、地下室に……戻らない。いつもであれば、周りの景色が変わり、どこを見てもたくさんの樹があるはずだ。なのに……ウィザーを倒し、消滅したのに景色が変わらない。


 いや、変わったことはある。先ほどまで目の前にいたはずの、べにがさとたんぽぽの姿がない。たった今話していたはずなのに……目の前から、消えたのだ。



「あ……れ? おかしいな……どうなってんだ?」



 まさかとは思うが……べにがさとたんぽぽだけが戻されて、俺とひまわりは残されたってことなのか? 今までこんなことはなかったのに、いったいどうして……



「ユウキ……あれ」


「え……!?」



 そして俺は……俺たちは、信じられないものを目にした。


 ……ウィザーの大群が、押し寄せていた。その光景は、今までに見たことのないものだ。


 これまでにも、複数のウィザーが同一か所に現れることはあった。だがそれでも、せいぜい三体……今空から現れたのは、最低でも十はくだらない。あくまで、見えている範囲は。



「……うそ、だろ……」



 この数を……ひまわり、一人で……?

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