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ひまわりという少女



「ひまわり!」



 再び、戦場へと足を踏み入れる。今度は、いまわりが戦っている戦場へと。地下室から飛ばされた先には、ウィザー相手に戦っている三人の姿があった。



「! ユウ、キ……!?」



 俺の声に反応し、ひまわりが一瞬気がそれる。その隙を狙うウィザーだが、そのくらいで後れをとるひまわりではない。迫る手を切り落とし、跳躍して俺の傍へ。



「なにしに、きたの!」


「なにって……お前たちが、お前が心配で」


「だからってこんなところに来るなんて! 戦えもしないのに、足手纏い!」



 額から『赤い血』を流すひまわりの言葉には、はっきりとした拒絶の言葉があった。


 どう、したんだ……そりゃ、いきなり来た俺も悪いかもしれないけど。今までは、こんな言葉を言うことは……こんな風に怒ることは、なかったのに。



「……ひまわりお前、怒ってる、のか?」


「……」



 そんな場合ではないのはわかってる。けど……感情のないはずのひまわりが怒っているとしたら、それはいったいなにに?



「ひま……」


「きゃああああ!」



 悲鳴が、届く。今のは……たんぽぽか!? いつも上から目線のあいつが、こんな声を……


 事態は、予断を許さない。それがわかっているから、ひまわりは力を使うことを躊躇しない。



「……ぁ」



 ひまわりが手に持つ、壊れかけの剣を、地面から伸びる根が修復していく。修復と言っても、壊れたプラモデルを接着剤でくっつけるような、そんなお粗末なもの。


 だが、彼女が扱う植物の剣は、これでいい。むしろ、根が重なることで力を増す仕組みになっているらしい。


 その仕組みの原理はわからない、が……



「ひ、ひまわり……!」



 力を使うたびに、ひまわりの左手が土に戻り、朽ちていく。それは、ボタンが散ってしまったあの時と、まったく同じ現象だ。



「大丈夫。右手が残っていれば、剣は振るえる」



 そういうことでは、そんなことでは、ない。だがひまわりには、自分が自分でなくなってしまうという恐怖が、感情がないのだ。



「さっきは、怒鳴ってごめん……そっか、さっきのが『怒ってる』なんだ」



 俺に背を向けたまま、彼女は続ける。



「なんであんな声出したのか、わからないけど……ユウキには、危険な目にあってほしくない。なのに、こんな所に来て…………気づいたら、あんなこと言ってた」



 感情というものがわからないままに、感情任せにひまわりは叫んでいた。もしひまわりが、感情というものを理解しつつあるなら、なにかが、変わるかも……


 だが、そんな時間は残されていない。



「ひまわり、俺は……」


「大丈夫、ユウキは、私が守るから」



 振り向き、うっすらと微笑む。その笑顔は、初めて会ったあの時とは、まるで別のものだった。


 跳躍し、ウィザーに立ち向かう彼女を……俺は、止められない。伸ばした手も、届かない。結局俺は、ただ守られるだけの役立たずなのか……



「ひまわり! お前、さっき俺に言おうとしたことがあったんだろ! だから……」



 叫ぶ。俺に出来るのは、それくらいだから。せめてひまわりにも、この声が届くように……



「俺はお前に死んでほしくないんだよ、ひまわりー!!!」


「!」



 その瞬間、周囲から、植物の根が伸びてくる。俺の周囲だけではない、広範囲からだ。それが誰によるものか、考えるまでもない。


 生きろと願ったひまわりは、それでもなお力を使って……



「え?」



 だが、俺の想像とは真逆の光景が、そこにはあった。力を使い朽ちていく少女の姿ではない。伸びた植物が、ひまわりの無くなった左腕を覆っていく。


 覆い、覆い……覆われた腕が露になったとき……無くなったはずの腕が、そこにはあった。



「バカな、ありえん!」



 その光景に、驚く班目……なぜだかその姿が、頭に浮かんだ。


 そして、ひまわりは速度を増していく。それは他の少女二人も驚く速度でウィザーを斬りつけていく。体を斬り、手が伸びようものなら即座に根元から斬り落とす。


 ウィザーに反撃の隙を与えない。三人でも押されていた相手を、ひまわり一人が圧倒していく。



「ぁあああああああ!!!」



 植物の根が絡みつき、剣はその大きさを増していく。倍とか、そんな生易しいものではない。ざっと十倍のでかさはあるだろうか。


 それを、思い切りウィザーの脳天におみまいする。ゴンッと剣にあるまじき音を立て、それはウィザーを真っ二つにする。それに留まらず、さらに地面から伸びた根がウィザーの二つに割れた体を包み込む。


 そして、まるで手で卵を握り潰すように、ウィザーの体を粉砕した。

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