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フラッシュバック



 ガーベラ、ヘリコニア、そしてボタン……今日は、いろんな子とよく話す日だ。


 蝶々の髪飾りを付け直すボタンを見つめながら、俺はそう思っていた。そんな俺の視線を受け、ボタンは……



「ど、どうですか?」



 と、聞いてきた。なので俺は、正直に……



「あぁ、似合ってるよ」



 こう答える。残念ながら俺に気の利いた言葉を期待するのは、無理という話だ。これくらいしか言えない。


 それでもボタンは、嬉しそうに微笑んでくれた。


 不思議な感じだな。以前のボタンとは違うのに、話している様子はまるでボタンそのものだ。やはり、記憶がないだけで、姿形が少し違うだけで、ボタンはボタンなのだろう。



「……」


「……」



 しかしそのあとの、会話が続かない。なんだこの、気まずい雰囲気は。俺今まで、ボタンとどうやって話してたっけ。



「あ、ユウキとボタン」



 その気まずい雰囲気をぶち壊すように、そこへやって来る人物が一人。綺麗な黄色の髪を伸ばした、ひまわりだ。廊下で立ち話している俺たちを、不思議に思ったのだろう。


 これがガーベラのような、歩く拡声器であれば、なにも言わなくても会話が弾むのだが……欲しがりは言っていられない。



「ユウキ、あの……」



 ビーッ、ビーッ!



 なにかを言いかけたひまわり……しかし、その言葉を遮るように、設置されたスピーカーから警告音が鳴る。これは、ウィザーが現れたときのそれだ。


 そのせいで、ひまわりがなにを言おうとしたのか、途切れてしまう。



「ひまわり、今なにを?」


「……いい、戻ったら、言う」



 彼女は先ほどの言葉を続けることはなく、優先事項としてウィザーとの戦いへと向かう。俺とボタンも、遅れてひまわりのあとを追いかける。


 オペレータールームにたどり着くと、すでに待機していた斑目が俺に目を向け、続いてひまわりにも目を向ける。



「今回は、ひまわりとべにがさ、それとたんぽぽだ。それから、もう一か所にはガーベラ、ヘリコニア、ボタンと勇樹が向かえ」


「え……今回も、同時に別の場所に?」



 二手に分かれる指示をした班目の言葉に、俺は胸の奥がチクリと痛むのを感じた。別々の場所に、ウィザーが……それではまるで、ボタンが散った、あのときと同じ……


 頭の中に、あのときのことが鮮明にフラッシュバックする。



「? ユウキ、さん?」


「え? あ、あぁ、悪い」



 困惑したボタンの声に、何事かと視線を向ける。ボタンの視線は下へと向いており……そこには、俺と手を繋いだ光景があった。


 ……いや、正確には、俺が無意識に握ってしまったのだ、ボタンの手を。



「い、いえ。でもどうしたんです? 顔色が悪いですよ」



 咄嗟に手を離すが、それにより俺の異変がバレてしまったらしい。だが、ボタンのことが心配で……なんて本人に言えるわけもない。



「……ほらお前たち、ひまわりたちはもう行ったぞ」


「え、あ、あぁ」



 気まずい雰囲気を感じ取って、というわけではないだろうが、班目が声を上げる。確かにもうそこにひまわりたちの姿はなく、ガーベラは不思議そうに首を傾げている。



「まー心配すんなよユウキ! このガーベラ様がちゃちゃっと片づけてやるからさ!」


「意気は結構ですが、バカみたいに突っ走るのは勘弁してほしいのですがね」


「なんだと!」


「だから早く行けぇ!」



 俺の不安をよそに、三人は地下室へ。俺もそのあとを追いかけるが……



「……お前さんがそんなだと、あいつらの力も不安定になるぞ」


「……わかってますよ」



 ボタンは、ガーベラは、ヘリコニアだって実は優しいのだ。そんな彼女たちのことだ、俺が不安そうにしていたら彼女たちはきっと俺のことを気にして、存分に戦えない。



「……よし!」



 なので俺は軽く深呼吸をしてから、頬を叩く。先に行った三人に続いて、戦場に足を踏み入れるために。

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