産まれた理由
ヘリコニアと話していると、なんていうか……今いる自分を、客観的に見れる気がする。彼女が基本冷静なタイプだから、話しているこちらも冷静になるのだろう。
けど……俺のことを客観的に見たからと言って、だからどうしたって話だ。俺が知りたいのは、ヘリコニアたち花の少女のことなのだから。
というか、さっきの欲情発言からヘリコニアの視線が痛いよ。まるで、愉快なおもちゃを見つけたみたいだ。
「それにしてもさ、ウィザーってなんなんだろうな」
なので、どうにか興味を削いでしまおうと、話題を変える。だが、これは別に適当なものではない……実際、気になっていたものだ。
直接戦っているヘリコニアたちなら、なにかわかるのではないかと思っていたのだが……
「さあ? 私にはわかりません」
彼女はあっさりと、首を横に振る。
「そもそも、アレらが出現する理由なんて考えても答えなんか出ませんよ。私たちが産まれるその前から、まだ解明されてないんですから。言ってみれば、災害と同じです」
「災害?」
「えぇ。たとえば……地震、台風。そういったものはたとえ発現する理由がわかっても、対処しようがないでしょう。ウィザーも、たとえ生まれる理由がわかってもどうしようもない……ならば、より効率よく殺す方法を考えた方が、有意義じゃありませんか?」
考えても無駄、か……ヘリコニアの言うことは一理あるかもしれない。
彼女の言うように、災害だって原因が解明されても、どうしたって起こることを止めることはできない。ならば被害をどう最小限に抑えるか……それとウィザーは、同じだと。
そんなこと、考えたこともなかった。あの化け物はどこから来て、なんで世界を滅ぼそうとするのか……斑目は『そういう存在、いや現象だ』と言っていたが。
「私たちのことや、ウィザーのこと……他にもいろんなことを考えてたら、そのうち頭がパンクしちゃいますよ?」
意味深に笑みを浮かべ、ヘリコニアは俺のおでこに人差し指を当てる。思わぬ距離感の近さに動揺してしまうが、彼女は涼しげな顔だ。
「私たちのことは、私たちにもわかりません。そもそも産まれた瞬間から、『この世界を守るために戦うこと』を宿命付けられて、それに従いウィザーと戦う」
「それだけの人生なんて……まるで、死ぬために産まれたみたいじゃないか」
ヘリコニアの言葉に、つい言葉を返してしまう。こんなこと、彼女に言ってもなんの意味もないんだけどな。
だけど、彼女は嫌な顔一つせず、楽しげに口を開いた。
「死ぬために、ですか。私たちには死ぬという概念はないですが、それは置いときましょう。けどユウキさん、人間だって、最終的には死ぬ……死ぬために生きてるのは、あなたたちも同じでは?」
「そ、れは……」
ヘリコニアの顔が、近い。だがそれによって感じる動揺は……先ほどとは、違うものだ。
「それは……そうかも、しれないけど。けど、人は生きる意味を見出だすために生きて……」
「それを言うなら私たちも同じですよ。戦いの中に生きる意味を見つける……これのなにか、いけませんか?」
「いけないことは、ない、けど……」
「ただあなたは、納得できないだけ。私たちの在り方が、自分の常識とは違うから、認めたくないだけ。でも、私たちにとってはこれがあなたの言う『生きる』ことなんです」
ヘリコニアの言葉に、なにも言い返せない。表情こそ変わらないが、それはヘリコニアの本心のように、思えた。
勝手に決めつけて、勝手に哀れむなと……そう、言われた気がした。
「なので、ユウキさんはユウキさんの役割をただ果たしていただければ、問題ないんですよ。ウィザーの意味とか、私たちが産まれた意味とか、そんなことは考えずに。ね、私たちの世話係さん」
顔を離して、うっすら微笑む彼女から目が離せない。
ガーベラのように、気持ちを素直にぶつけてくれた方が、まだマシだ。ヘリコニアは、いったいなにを考えているのか……本当に、わからない。
ただ、自分の在り方に後悔があるわけでも、抗っているわけでもない。受け止め、ただ使命のままに生きているんだ。




