静かな少女
みんな同じように樹から産まれ、けれどみんな同じわけじゃない。一人一人が違う、それは人間と同じだ。
無表情でなにを考えているかわからないひまわり。活発でまるで子供のような明るさを持つガーベラ。おどおどしているが実は優しい心を持ってるボタン。それに……
「……あら、どうしたんですこんなところで」
……おとなしく、冷静なヘリコニア。
今俺は、建物の外の、庭が見渡せるベンチに座っている。この施設は、施設から外に出られない……と言っても、なにも建物の中からも出られないわけではない。
こうやって、建物の外になら自由に出られる。施設の敷地内である大門から外には許可がないと出られないだけだ。
……それにしても、庭や噴水まで作るなら、クレープ屋の一つも作ってやれよと思う。とはいっても、花の少女たちに食事は不要だから意味がないとされたんだろうが。
「ちょっと考え事。ヘリコニアこそ、どうした」
「風に当たりに来ただけですよ」
そう言って、彼女は当たり前のように俺の隣に座る。三人座れるため二人座っても密着するわけではない。人一人分、距離が空いている状態だ。
……なぜ、隣に座る。
「なにを、考えていたんですか?」
「ええっ!?」
まさかの、ヘリコニアから話し掛けてくるとは。彼女はひまわりとはまた違った意味で、なにを考えてるかわからないんだよな。
それでも、決して無表情なわけではない。なんというか……ミステリアスな、そんな感じだ。
「なにって言われても……たいしたことでは」
「私たちのことですか?」
速攻でばれてしまった。
「な、なぜ……」
「だってユウキさん、えっと……やさしい?ですから。だから、私たちのことをよく考えてくれてるのかなと」
「優しいって……」
実際ヘリコニアの推理は間違っていない。常に……とは言わないが、この子たちのことを考えてはいる。それはボタンの件を経て、いっそうに。
ただ、優しいなんて言われてしまうと、むず痒い。俺はそのつもりはないのだから。
「あまり考えすぎるのはやめたほうがいいですよ?」
「あはは、ガーベラにも似たようなこと言われたよ」
考えすぎるなと、ガーベラにも言われた。それに、私たちは俺に助けられてる、とも。その自覚はないが、少なくとも一人でもそう思ってもらえてるならありがたい。
俺ってば、みんなに心配かけてばかりだな。でも、いくら考えたって足りないんだ……この子たちのことは。
せっかく産まれた命を戦いのために使い、散り、記憶を失ってまた繰り返す……それだけの人生に、胸が痛む。
たとえ、胸を痛める感情が本人たちにないとしても、どうにかしてやりたいのだ。
「まあでも、そうだよな。考えすぎはよくないよな。けど最近ちょっとした悩みがあってさ」
「悩み?」
「ボタンがさ、以前は俺の肩くらいまでの背しかなかったのにさ、今じゃ俺と同じくらいの背じゃん? いやぁ参っちゃってあっはっはー」
「……そうですか」
ウケなかった。いや、別にウケ狙いってわけじゃないんだけどさ。どうにかしてやりたいって、少しでも笑わせてやろうとか思った訳じゃないけどさ。
……それにしても、やっぱりボタンについての言及はなしか。背丈の問題とか、目に見えてわかるものだと思うんだけどな。俺の肩から今目線が同じだなんて、相当だぞ。
それも気づいていない……ってことはないだろうけど、わざわざ気にかける感情すらないんだろうな。
「ユウキさんは面白いですね。ひまわりやガーベラがなつくのもわかります」
「そ、そうかな?」
やはり、ひまわりはなついてるのか……わかりにくいが、まあガーベラもそう言ってたし、そうなんだろう。
こうして話していると、彼女たちが重い使命を背負っているなんて、忘れてしまいそうになる。
花の少女、か……謎な存在だよな。そもそもからして、樹から産まれるなんてことから謎だ。その謎は、斑目にだってわからないし、本人にもわかるはずもない。
なぜなら、斑目がすでに聞いたから、らしい。
『?』
産まれてきた少女たちに、どうして樹から産まれるのか尋ねても……答えは、得られなかったと。なので、これは謎のままだ。
花の少女の基本にして、最大の謎。これがわかることがあれば、なにか彼女たちを救う方法が見つかるかもしれない。
「どうしたんです、私の体をじっと見て」
「えっ、あぁいや……」
「もしかしてよくじょうしたんですか?」
また斑目の仕業か! あいつこの子たちになにを教えてるんだよ!
まるでいたずらっ子のように笑うヘリコニアに、俺は翻弄されるばかり。こうして話していると、意外にお茶目な部分もあるんだなとか、新しい発見もいっぱいだ。




