切羽詰まった事態
「ユウキ、ボタン、ウィザーが現れた。至急オペレータールームに来て」
スピーカーから流れる警告音。それに加えて、ひまわりの言葉もスピーカーから流れる。それにより、事態は一変する。せっかくなにか重大なことを聞けそうだったというのに。
ひまわりの指示に従い、急ぎオペレータールームへ。そこには、ひまわりや斑目、それにガーベラや他の子たちもいた。
いつもは、花の少女は居ても数人だというのに……どうしたんだ?
「ウィザーが各地に発生した。よって、これより数を分けて各個撃破してもらう。まずは……」
詳しい説明もなしに、ウィザーを対処するための班がわけられる。それだけ、事態が切迫しているということか……?
モニターには、ウィザーが現れている場所が映し出されている。それも複数だ。斑目が言うように、それぞれ別の場所に一体、または二体のウィザーが出現している。
「これはいったい……」
「さて、お前さんはひまわり、ボタン、たんぽぽと行ってくれ」
「りょ、了解」
事態を把握する間もなく、斑目からの指示。俺が現場に出るのは、見学である初めての日からずっと続いている。
力のない俺がひまわりたちの近くにいるのは、俺も彼女たちも危険だと思うかもしれない。だが、斑目はこう言ったのだ。
『お前さんが一緒にいると、どうやらあいつらの力が安定するようなんだ。だから、お前さんも出ろ』
『お、俺!? なんで!?』
『さあな。……ま、あいつらにも守りたい対象ができたってことじゃないか? よくあるだろ、守るものがあるから強くなる、みたいな話』
『俺はか弱いヒロインってわけですか』
実際にそんなことを言われては、仕方ない。
俺が言うのもなんだが、『世界』なんて規模のでかすぎるものより、『俺』という身近な存在が側にいることで、守らなければという気持ちが強くなるのかもしれない。
それだけ、俺が彼女たちの力になれている……と喜べばいいのだろうか。
「では、ウィザーがこちらに侵攻してくる前に、なんとしても食い止めろ!」
今回相手にするのは一体のみ。それに対して三人の戦力。これは、手早く倒して他の手伝いにも向かえということだろう。
ひまわりやボタンは、特に俺との関わりが深い。だからこの二人と、俺が組むことになったのだろうか。そして、もう一人……
「さっさと倒してしまいましょう」
たんぽぽは、あまり喋ったことはないが……性格としては、おっとりとしたタイプ。それでいて、どこか鋭い印象を受ける。一言で言うなら女王様?
俺たち四人はウィザーの暴れている場所へと転送され、迎え撃つ。相手をのんきに観察している暇はない。
先手必勝とばかりに、ひまわりは植物の剣を、たんぽぽは手のひらから複数の蔦をまるで鞭のように操り、それぞれがウィザーへとダメージを与えていく。
返ってくるウィザーの反撃を、ボタンが植物を操り防ぐ。前衛二人に後衛一人と、ちゃんと役割分担もできているようだ。
これなら、楽勝だ!
「せやぁ!」
ウィザーが放つ、まるでタコのように複数にうねる触手。それを、たんぽぽが蔦で押さえる。攻撃の手を防がれたウィザーに向かい、ひまわりが一気に攻め立てる。
触手を斬り、飛び、ウィザーの丸い体を斬りつける。断末魔のような雄叫びを上げ、ウィザーは苦しそうだ。斬りつけられた体は真っ二つに割れ、それぞれが左右に倒れ……体から伸びていた触手も、活動を停止する。
花の少女たちは人数が少なくはない。だからこそ初日のひまわり、ガーベラ、ヘリコニア、の組み合わせもあれば今回のように、ひまわり、ボタン、たんぽぽの組み合わせもある。
組み合わせが変わっても、三人は連携が充分にとれていた。それは事前に示しあわせていたのか、花の少女特有のなにかか。それとも仲間として信頼しあっているか。この勝利は、当然とも言えるだろう。
思いの外呆気なかったが、苦戦してしまうよりずっといい。あとは、まだ戦っている仲間のところへと駆けつけて……
「……あれ?」
景色が元に、戻らない? ウィザーを倒したら、周りの景色は変わり、あの地下室に変わるはずだ。それに、倒したウィザーも消えていない。
「……まだです!」
ボタンが、叫ぶ。その瞬間、とっさに俺の体が吹き飛んだ。直後、俺が立っていた場所に、触手が突き刺さる。地面に突き刺さるほどに硬いそれが、体に刺さっていたらどうなっていたか……
想像するだけでも、寒気がする。
「あ、ありがとう……」
「礼は不要です。そんなもの言う暇があるなら、次からは油断しないように」
俺を助けてくれたたんぽぽからは、冷たく言い捨てながらも確かな優しさを感じた。俺を守るために突き飛ばしてくれたのが、その証拠だ。
言い方はキツいけど、暗に俺に油断するなと忠告もしてくれてる。
「って、マジかよ……」
油断しないと決め、改めてウィザーを見る。すると、真っ二つに割れた体がそれぞれ動き出していた。言ってしまえば、分裂……に近いのかもしれない。




