似ている二人
クレープを食べに行ったあの日から、数日が経った。
あれ以来も、ウィザーの襲来は少なからずあったのだが……ひまわりやガーベラ、ヘリコニアにボタン……さらに他の少女たちの連携により、危なげなく撃破することが出来ていた。
その間、俺は少女たちとの仲を確かに深めていた。特に、はじめの方から関わりのあった四人とはいっそうに。相も変わらず俺はひまわりたちのお世話係なのだが、ま、これといって何をするわけでもない。
この間みたいにクレープを食べに行くどころか、外出することも出来ない。最近はウィザーの出現が活発化しているらしく、たとえ強い個体でなくとも油断は禁物。よって、おいそれとここを離れるわけにはいかない。
だが、それを残念に思っているのは俺だけではない。
「あの、ユウキさん! 次はいつ、くれーぷ食べに行けますかね」
クレープを食べに行った日以来、特にボタンが懐いたように俺と行動を共にすることが多くなった。俺としても、まるで妹ができたみたいに思っていた。
どうやらクレープがかなりお気に召したらしく、俺としても願いを叶えてやりたいのだが……そう、うまくもいかない。それを俺もボタンもわかっているからこそ、余計にもどかしい。
「そうだなぁ、班目……さんに、聞いてみないとな」
「ユウキさんは、マダラメさんが嫌いですか?」
純粋に聞いてくるボタンの目が痛い。
「嫌い、じゃないけど……なんか、苦手意識があるんだよなあ」
実際には、苦手、なんてかわいげのあるものではないかもしれないが。
あの男は、この子たちのことを人間として扱っていない。だから嫌い、なのだろうか。……だけど、完全に兵器としてしか見ていないっていうのも、なんだか違う気がする。
「そうですか。二人とも、仲良くなれそうですけど」
「はぁ!? 俺があい……あの人と!? ないない! 想像つかない!」
いきなり、何を言い出すんだボタンは。俺があのおっさんと仲良く? ないない。
「でも、二人は似てますし」
そこへ、またも聞き捨てならない言葉が。
「に、似てる……? 俺とあの、人を誘拐するようなおっさんが!?」
「とんでもない言い方しますね」
とんでもない、とは言うが、仕方ないだろう。それが事実なんだし。
俺とあのおっさんが、肩を組んで笑い合っている姿を想像する。……うぇ、吐きそう。
「いったいどこが似てるって言うのさ、俺とあの人が」
「だって二人とも、すごく優しいですから。自分がいつ消えてしまうかわからない日々の中で、こんなにも素敵な人に二人も会えたんですから」
俺と班目の共通点……それは、優しいところだと感じる。それが、俺にはしっくりこない。
俺は……自分のことを優しいと思えるほどにうぬぼれるつもりはないけど、少なくともこの施設の人間の誰よりも、この子たちに親身に接している自覚はある。それは、お世話係という枠組みとは関係ないものだ。
対して、班目は……この子たちを、ぞんざいな扱いしかしない。ウィザーの戦いから戻っても、「お疲れ様」の一言すらない。
そんな男と同列にされるというのも、少し……いやだいぶ不満ではあるが。
「そんな二人を見ていると、このあたりが、ぽかぽかしてくるんです!」
自らの薄い胸に手を当て、うっすらと頬を赤く染めながらそう話す彼女に、違うと否定する気には、なれなかった。
「えっと、なんでしたっけこの気持ち……教えてもらったんです。胸がぽかぽかして、自分が満たされていると感じる瞬間。今この時がとてもあたたかくて、全然嫌じゃないんです」
誰かに教えてもらったらしい『感情』の正体を、思い出そうと頭を悩ませるボタン。さっきから表情がころころ変わって、面白いな。
その『感情』に心当たりがある俺は、その正体を教えてやる。
「それって多分、『幸せ』じゃないかな」
「しあわせ……そうです、しあわせです! いけませんね、忘れっぽくて。せっかくマダラメさんに教えてもらったのに」
「班目、に?」
恥ずかしそうに話す彼女の口から出てきたのは、予想もしていなかった名前。
あの班目が、よりにもよって『幸せ』なんて感情の言葉を、教えたというのか。似合わない。
ボタンは、俺と班目が似ているなんて言うけど。それって、性格とか見た目の話じゃなく……
「なあボタン、その言葉……」
ビーッ! ビーッ!
自分の中に生まれた疑問、それをボタンに問いかけようとしたその時……ウィザー出現の、警告音が流れ出した。




