表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/35

初めての



 クレープを食べるために駅前にやってきた……が、まさかの休業。店にはシャッターが下りていて、無機質な扉が俺たちの歩みをあざ笑っているかのようだ。



「ユウキ、どうかした?」



 と、ひまわりが聞いてくる。まさかここまで来てクレープが食べられないなんて、それはとんでもないことだ。


 まさか「クレープ屋が閉まってるみたいだから、もう帰るか」なんて言えるはずもない。どうしたもんか……手段は、一つしかない。俺は、スマホを取り出し近くにあるクレープ屋を検索。


 目の前のクレープ屋が閉まっているなら、別の場所を探せばいいじゃない! ひまわりたちは、俺が取り出したスマホを見て不思議そうにしている。そうか、クレープを知らないんだ……スマホなんて知らないよな



「なあユウキー、なんだそれー。なあなあー」


「ちょ、落ち着いてくれガーベラ……てか下りて」



 背中に登ってくるガーベラは、俺の耳元で「なあなあ」と話し続ける。う、うっとうしい……重くないから、いいものを。


 ……そう、重くない。それはガーベラが小さな女の子で、軽いから……とかそんな次元の話じゃない。人としての重みを、感じられない。それに、首に回された手からはやはり、体温を感じない。


 これが、現実だ。体温だけでなく重みもないなんて。どうりで、ウィザーとの戦いではあんなに身軽だったわけだ。



「おいどしたー?」


「……いや、なんでもない」



 今は、干渉に浸っている場合ではない。さっさとクレープ屋を見つけないと、いつまでも下りそうにないしな。周りから変な目で見られつつあるし。



「お、あったあった。悪いなみんな、もうちょい歩いてくれ」


「えー。このままおんぶしてくれよー」


「却下。若いんだから自分で歩きなさい」



 徒歩五分くらいの所に、クレープ屋を見つけた。ちゃんと休業日でないのも確認済みだ。なので、そこを目的地にして進む。


 結局、ガーベラが下りてくれなかったのでおんぶして行くことに。うぅ、周りの目が痛い。しかもさっきら、ボタンは頬を膨らませているし。そんなにクレープお預けが気に入らなかったのか?


 ひまわりに至っては、近くを飛んでいる蝶々に夢中だ。蝶々も、ひまわりの周りにあんなにたくさん……たくさん!?



「まさか、花の少女だから養分に引かれてやってくる、なんてことはないよな?」


「おー、たけー!」


「……お前この何倍のジャンプ力あるんだから、これより高い景色見てるだろ」



 なんだここは、保育園かなにか?


 はしゃぐガーベラが暴れるので、落ちないようにしっかり掴む。体温はなくても、どこに触れてるかくらいはわかるからなあ……手のやり場に困る。


 ……ようやくクレープ屋ににつく。なんだろ、すごい疲れた。


 ガーベラを下ろしてから、店の前に出ている看板を確認。屋台のようなものなので、そこへ店主のおっちゃんが話しかけてくる。



「いらっしゃい。兄ちゃん、家族サービスかい? 優しいなあこの」


「あっはは……まあ、そんなとこです」



 気さくなおっちゃんだが、どうやら俺たちは兄妹に見られているらしい。訂正するのも面倒なので、そういうことにしておこう。


 その妹三人はというと、メニュー看板に夢中のようだ。以前、ひまわりは自分たちは水さえあれば生きていけると言っていたから……おそらくこれは、単なる興味だろう。それとも、生きるのに必要というのとは別に、食欲があるのだろうか。



「なんだいお嬢ちゃんたち、もしかしてクレープは初めてかい?」



 はい、そうです。



「ほら、どれがいいのか選びな」



 しかし……妹がいたら、こんな感じなのかね。一人はうるさいし、一人はどこか距離感があるし……一人は、なにを考えているのかわからない。



「うーん……ユウキに任せる」


「ぷっ」



 そう言い振り返って俺を見るひまわりは、よだれを垂らしている。無表情なのが逆に、ギャップを感じさせて……つい、吹き出してしまう。


 ここには、バニラやイチゴ、バナナに抹茶などと、様々な種類がある。だが、それからいきなり選べと言われても無理な話かもしれない。しかも、この子たちは初めて見るものばかりなのだ。


 だが、俺だって女の子の好みなんかはよくわからない。なので、おっちゃんにおすすめ三つを聞くと、バニラとイチゴとチョコを勧められた。全員一緒にしなかったのは、これなら三人別々のものだからシェアだってできるだろうと考えたからだ。


 それらを注文して……出てきたクレープを目にして、三人とも興味津々だ。



「うおー、なんだこれ、なんだこれ」


「これが、くれーぷ……食べられるん、ですか?」


「興味深い……」


「ははは、嬢ちゃんたち、かわいいからサービスしといたよ」



 そんな三人の様子を見て、サービスしてくれたとおっちゃんは告げる。ありがとうおっちゃん。


 それぞれ、ひまわりはバニラ、ガーベラはチョコ、ボタンはイチゴを選択。クレープどころか、それらも初めて見るという彼女達は、近くのベンチに座ったまま、クレープとにらめっこしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ