朝稽古
翌朝の五時。
「真さん、起きてください」
「うっ…ん…今何時?」
「五時です。稽古に行きましょう」
いつもならこの時間帯はまだ寝ているのだが、稽古があるためにそれよりも
早く起きなければならないのは少々きつい。
だが起きないわけにもいかないので、重い身体を起こしてぐぐっと背伸びを
する。
「はい。真さんの道着です。父のお古ですが、多分合うと思いますので」
「ありがとう」と桜子から道着を受け取るのだが…。
「桜子、先に行ってて」
「いえ。待ちますよ?」
「いや…その、着替えたいから廊下で待ってて」
「あっ。すみません」
やっと気づいたのか、桜子はささっと部屋を出て行った。
「まったく…」
桜子は力輝とは違うけど、大胆というか…これがもし計算でやっているのなら
それはそれで怖い。でも、多分こいつは天然でやらかしているんだと僕は思う
。どうみても嘘とか付けなさそうだし、そんなことしてこいつに何のメリット
もつかないし。
道着に着替えて、廊下で待っていた桜子と一緒に道場へと向かった。
「では、まずはコントロールを強化するところから始めましょうか」
「…よろしくお願いします」
「真さん、そんなに固くならなくていいですよ。いつも通りにしてください」
「いや。でもこれぐらいはちゃんとしておきたいから」
正座はさすがにきついけど、最初と最後ぐらいはきっちりしていた方が
いい。
「そうですか?では、やり方を教えますのでその通りにやってみてください」
午前七時、「はい、今日はここまでにしましょう」と桜子の合図で今日の
稽古は終了した。
コントロールを強化するのに、これだけ体力を消耗するなんて思っても
見なかった。もう汗びっしょりかいてて、気持ち悪い。
「真さん、大丈夫ですか?」
「うん。汗かいたから風呂入ってもいい?」
「えぇ、構いませんよ。では一緒に行きましょう」
私も久しぶりだったので、汗かいてしまったので。と桜子は僕の手を引っ張
って銭湯へと向かった。
家だからまだ良いとしても、他の場所ではそんなの絶対に許されないだろう。
同性ならまだしも、異性と入るということをこいつはどう認識しているのか
それは桜子にしか分からない。もしかしたら僕のことを父親と同じような人間
だと思ってるのかもしれない。まぁ…力輝よりは理解力あると思うので、
とりあえず…
「いいか。服着るまで絶対に僕に近づくな?身体とかは自分で洗えるから
ね」
「真さん、背中まで手が届くんですか?」
「とにかく、いい?絶対に近づかないでよ?」
桜子はふくれっ面で渋々同意したが、恐らく納得していないだろう。
でも、これは僕のためでもあり彼女のためなのだ。




