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氷魔法師、氷浦真の日常  作者:
春日野氷麗
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被服部


 その日の放課後、枯野が僕達がいる教室までわざわざ迎えに来てくれた。教室にはもう僕と桜子の

 二人だけしか残っていなかったが、それでも上級生の教室であるためなのか、中には入らずその場で

 「ひっ、氷浦先輩」と声を掛ける。でもこの場合、僕にしても桜子にしても『氷浦』なわけで彼女が

 どちらに対して呼んでいるのか分からないが、とりあえず自分達を呼んでいることには間違いないこと

 だけは分かったので、先に反応した桜子が枯野の姿を見て「はーい、今行きまーす」と返事を返す。


 「真さん、枯野さんが迎えに来ました」

 「あぁ…うん。分かってるよ」

 

 帰り支度を済ませた僕は桜子と一緒に教室の外へと出た後、枯野の案内でそのまま被服部へと向かっ

 た。


 「アリスさん、来られなくて残念ですね」

 「仕方ないよ、部活なんだし。無理言って休ませたら悪いでしょ?」

 「…そうですね」


 桜子のテンションが段々と下がっていく。

 

 「被服部って枯野さんの他に何人いるの?こいつと一緒に見学したの運動部ばっかだったから、文化

  部のことよく知らなくて」

 「あっ、はい。えっと…私を含めて…4人だと思います」

 「あれ?意外と少ないんだね?てっきり僕は10人以上はいるかと思ってたけど」

 「あっ、いえ…その…部長が新入生だけでなく二年生の方々にもいろいろと声を掛けて、強引?と

  いうか、なんというか……「あぁ、ごめん。もう大丈夫だよ、枯野さん」

 

 だいたい言いたいことは分かった。

 

 「すっ、すみません。上手く説明できなくて」

 「いや。むしろ僕こそ変な質問してごめん…って桜子?」

 

  桜子が話に入ってこないのが気になって、僕は彼女に声を掛けると、「はっ、はい!?なんです

  か?」と慌てて僕の方に聞いてくる。

 「どうしたのさ?珍しく黙り込んでるだなんて、熱でもあるの?」

 「いっ、いえっ。大丈夫です」

 「そう?それならいいけどさ」

 「…」

 

  桜子の様子が少しおかしいなと思いつつも、僕達は枯野の案内で被服部の部室へと到着する。

 「ここが被服部の部室です」と僕と桜子と告げてから部室の扉をノックし、「どうぞ」と中から

  返事が返ってくると枯野はすぐさま扉を開けて先に中へと入る。


 「失礼いたします。音無部長、お客様をお連れしました」

 「「…」」


 それから僕と桜子は枯野から声を掛けられ、被服部の部室へと入った。


 「先輩方。こちら、私が所属する被服部部長の音無千優おとなしちひろ先輩です」と枯野から

 紹介を受ける。

 「三年の音無だ。ようこそ、我が城…いや、我が被服部へ」

 「どっ…どうも…」

  

 なんだろう…すごくやりずらい。

 

 「うちの枯野が世話になった。私の方からも礼を言わせてもらう」

 「あっ、いえ…そんな大したことしてないですから」


 同い年なのに、どうしてか敬語を使ってしまう僕だった。


 「もしかして、枯野さんが部室に来ないかって誘ったのは…「私が枯野に頼んだ。二人をここまで

  連れてきてほしいとね」


 やっぱり…そうか。


 「でもせっかくですし、お二人に被服部の見学をしてもらいたいです!」

 「えっ?!」

 「そうだな。今日は私と枯野の二人だけだから、遠慮することはないぞ?」

 「ちょっと待って。他の部員はどうしたんですか?確か枯野さんの話だと部員は彼女含めて4人だっ

  て…」

  

 「あぁ~来たことは来たんだが…急に熱が出たようで今日は休ませた」

 

  急に熱が出るなんてことあるのか?

  いったい何があったんだよ…。


 「氷浦君、それに氷浦さん「あぁ~それ、ややこしいでしょ?桜子と一緒にいる時は下の名前で呼ん

  でください。枯野さんにもそう言ってるんで」

 「…分かった。それじゃあ私のことも千優でいいぞ、真君」

 「了解です。千優さん」

 「さん付けはなしで、千優と呼んでくれ」

 「…」


 なんかこれ、桜子と同じパターンだ…。


 「…千優…さ「千優」

 「…分かったよ、千優」

 

 桜子の時は結構長くこんなやり取りをしていたけど、一回やればもう把握できる。

 音無千優もある意味、彼女と同じタイプの人間なのかもしれない。

 

 「さて、話が逸れてしまったけど。桜子さんに真君にはまず被服部のことを知ってもらう」

 「「よろしくお願いします」」

 「枯野、早速準備を」

 「えっ!?わっ、私がやるんですか?」

 「いいから早速準備だ。部活動紹介で使ったやつを引っ張り出しても構わん」

 「あっ、はいっ!」


 枯野は部長の言葉を聞き終えるとすぐさま隣の部屋へと入ってしまう。千優に聞いてみると、あそこ

 にはこれまで部員達が作った作品が置いてあり、彼女はそれを取りに行ったのだとか。


 それから数分後、枯野が部屋から出て僕達の前に現れた。

 

 「おっ、お待たせしました…」

 「「…えっ?」」

 「おぉ~それを着るか。枯野」


 さっきまでは星羅の制服を着ていた彼女。だけど今は制服ではなく、猫の着ぐるみを着ていた。

 

 「かっ、可愛いですぅ~!!!」と桜子はあまりの可愛さゆえに猫の着ぐるみを着た枯野に抱きつく。

 「えっと…これが作品?」

 「あぁ、去年卒業した先輩が作ったものだ。なんでもその時猫にはまっていたとかなんとかで作った

  らしいが、すぐに飽きてしまって卒業する時に置いて行ったんだ」

 「ふーんー…」

  枯野さんとサイズがぴったりということは、その先輩も彼女と同じ背丈だったんだな…。

  

 

 「他にはどんなものがあるんですか?千優さん!」

 「あぁ~確かメイド服もあったぞ。あとは燕尾服えんびふくとか」

 「メイド服……真さん!「着ません」

 「えぇー、どうしてですか?」

 「どうしてもこうしても、僕は男なんだからそんなの着ません!着たきゃ桜子が着ればいいじゃん」

 「そんなっ。私は真さんのメイド服姿が見たいんです。私がメイド服を着たって可愛くないですよ。

  真さんはご自分の可愛いさを全く分かってません!」

 「はぁ?可愛さ?男にそんなものいらないでしょ?っていうか桜子、それ本気で言ってるの?」

 「本気です!」

 

 即答された。迷いもなくまっすぐな桜子の返事に、さすがの僕でも心が折れそうになるのだった。

 

 

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