第2話 脱出は思い切って強引に
壁を破壊して外へ出てみると、魔物の魔力の気配がより濃く感じ、同時で不可解でならない。
「こんなに強い気配、変身した時まではミリもしなかったのに」
私が変身をし、壁を破壊して外に出ようとした瞬間、魔物の気配があちこちから漂い始め、その突然の到来はまるで何かを待っていたかのようで、不自然だった。
「じゃあ⋯これが彼の施した対策のひとつ、なのかな」
周囲を見渡してみると真っ直ぐに続く道が2つ。
1つはいつも私が連れていかれてたのは左方向、もうひとつは全く知らない行ったことのない右方向。
左方向を見つめるだけで、過去の記憶が溢れ出し、緊張からか思わず私の拳に力が入る。
「っ⋯⋯」
この先にあるのは私が全てを失った場所であり、私が記憶を取り戻した場所。
「あんまり行きたくないけど⋯こっちの方が魔物が少ないし⋯⋯」
どうしても気が向かない。
「彼のことだから、魔物を間違った道に多く配置しててもおかしくない⋯うん、おかしくない⋯」
彼が私の能力を理解した上でこの配置にしたことを祈り、私は魔物の多い方へと逃げるように足を運んだ。
少し歩くと、すぐ魔物と対峙した。
狼のような外見をしているこの魔物は、鋭い牙や爪に黒い炎を纏って攻撃をしかけてくる。
その切れ味は本物で、普通の人間がこの爪や牙に直撃しようものなら一瞬で真っ二つに切られてしまうし、逃げようとてこの魔物の動きは俊敏。
それだけならまだいいのだが、さらに厄介なのは、この狼の魔物達は群れで動くため、危険性の高い魔物だ。
「まぁ、問題ないけど─── 魂を食らう大鎌」
私がそう呟くと魔力がこもった闇が私の真上に現れ、闇の中から大鎌が姿を表す。
これが、私の武器。
私がそれをキャッチし構えをとると、律儀に待っていた魔物達が私に襲いかかってくる。
「ふん⋯っ!」
私は地を蹴り上げ魔物達の方へと正面衝突する。
たしかにこの魔物達は強いし、群れで動くからそれなりに面倒ではあるけどこの程度の魔物なんて私には恐るるに足らず。
何度も、何度も何度もこいつらと戦わされた私には、この程度は朝飯前で。
1匹、また1匹とその命を刈り取る。
「これで、おわりっ⋯!」
壁を蹴り上げ上空へ浮き魔物の視界外へ行くと、私の小さな体を活かして一気にまとめて魔物達を刈り伏せた。
「よし⋯動ける」
準備体操を終え、顔にこびりついた返り血を拭きながら大鎌を引きずり私はそのまま先へ進んだ。
「日本語じゃない⋯」
適当な部屋に入りそこにあった本の中身を見てみるが、どれを見ても英語でしか書いておらず、I amで英語の知識が止まっている私にはまるで何一つ理解できなかった。
「この本もはずれ、か」
ここを脱出する手段を探しながら私は今、彼が残しているかもしれない私自身の情報を探している。
私に何をして、彼が一体何をしようとしていたのかを理解するために。
と言っても、適当に部屋に入っては漁って本を見つけては開き、何かないかと探しているだけではあるけど。
この部屋もハズレかと思い、私が部屋から出ようとすると──突然不思議な魔力を感じ、振り返り魔力の源を探すと、先程まで私が漁っていた本棚の後ろからだった。
「⋯見つけた」
本棚を切ると、隠された本を見つけ、私はその中身を読む。
「埃っぽい⋯」
20??年9月?日
%はつい%手に入れた。今%から%%つには
%が長年%目標%?%た??%%##/───
「読めない」
字が汚れによって読めなくなっており、ある程度ここに保管されていたのがわかる。
数ページ、数十ページとめくっても似たような状況が続き、読む価値をあんまり感じれなくなって来た時、1番後ろのページたどり着いた。
「読めるとこあるじゃん」
【N1:状態に変化なし。
あれは運がいい。
あれほど体内に入れられておいてあの程度で済んでいる。
本来ならばもう既に死んでいてもおかしくないのだが、さすが私が見つけた実験体だ。
力の上昇も続いている、そろそろ次の段階に取り組んでもいいだろう。】
【記憶消去の、段階に。】
「⋯⋯」
やはり、記憶も力も全ては彼が意図的にしたことらしい。
思っていたより驚きは少ない。
それが何となく察せられるところがあったからなのか、それとも違う理由からか⋯答えはなんでもいいが、この本は⋯⋯。
「数年は取り出されてないみたい」
私の実験記録は複数ある、ということだろうか、私はまだまだここで探すべきものがあるらしい。
『グルゥゥ、オォォォォ──ッ!!』
「っ⋯!」
真後ろから魔物の叫び声が鳴り、私は急いで大鎌をとりだし戦闘態勢を整える。
「魔物が多いのも、めんどくさい⋯」
この部屋は狭く、大鎌を振るうのは少し大変、となればもう破壊する勢いで。
「闇を纏う斬撃」
魔力を使い、私は大鎌を魔物達に向けて振るうと、大鎌から飛ぶ斬撃を飛び出て、壁を破壊しながら魔物達の体を真っ二つにした。
これが私のスキルのひとつ、闇を纏う斬撃。
名前は適当に閃いたから今つけた。
魔法少女達は、自身の魔力を使いこうしたスキルを発動でき、魔力の使用量が多ければ多いほどそのスキルは強く、強固なものになる。
こんな雑魚に魔力をそこまで吸われる必要はないから、私が持つスキルの中で最も魔力消費が少ないものを使った。
「スキルも問題なく発動できる、と」
さて、この部屋にもう用はないし、そろそろ地上を目指そう。
ここがどこかはわからないが、地上で今もなお暴れている魔物の魔力を感じ取れば、どれぐらいの深さにいるか程度はわかる。
私は歩き続けて階段を見つけては登り、邪魔な魔物を刈り、何故か1周して迷子になりかけることもあったが、着々と上へ上がってこれた。
上にいる魔物の気配もより強く感じ取れるようになり、そろそろ地上が近いと思った矢先、私はあるものを見つけ、知ることになる。
「これは⋯⋯」
彼の目的、それに私の身体になにをしたのか、それらが全て記された記録へと──。




