↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/18

第2話 人魚姫の婚約者

 嵐をなんとかやり過ごしたが、船は満身創痍だった。レオは濡れた甲板を踏みしめながら、かろうじて残っている手すりにもたれかかった。


「レオ、ここがどこか分かるか」

「ちょっと難しいかも。……でも潮が変わってる。近くに陸地があるよ」

「見てくるっす!」


 ノエルはそう言って見張り台に駆け上がった。双眼鏡を覗く。


「あ、島があるっす!」

「どっち?」

「三時の方向!」

「……ほんとだ。流れも穏やかだから、船を着けられると思う」

「無人島みたいっすから、ありがたく使わせてもらいましょう!」

「だな」


 アレグは「ガルド! 聞いてたか?」と声を張り上げた。


「……向かってる」

「流石だな」


 笑い声が響く。船はゆっくりと小さな島の入江へと向かっていった。



「ガルド、船の具合はどうだ?」

「……致命的ではない。だが航海は無理だ」


 船が入江に着くと、ガルドは船体を一通り見回し、首を横に振った。


「そうか。寝泊まりくらいはできそうか?」

「ああ」


 こくりと頷いたガルドを見て、一同は島を見回した。


「……幸い、森がある島だ。船は直せそうだな」

「だね」

「マストだけちょっとギリ、かもね。食料は……まあ、レオがいるから大丈夫だろうね」

「期待されても困るんだけど……」


 ミレーユの言葉に、レオはぼりぼりと頭をかく。その時だった。


「……船長」


 ノエルがアレグの袖を少し引っ張る。


「どうした?」

「……見られてるっす」


 彼が指差す方向を見れば、一人の少女がこちらをのぞいていた。


「人魚だね」


 レオはそう言って目を細めた。一同は一斉に彼を見る。


「足、あるっすけど」

「人魚は陸上に上がれるんだ」

「……詳しいな」

「確かに。なんでだろ」


 レオは小首を傾げる。その時、人魚と目が合った。人魚はパッと笑顔を咲かせた。次の瞬間だった。


「レオ!」


 人魚は一気に駆け出し、レオに抱きついた。彼は慌てて両手を上げる。


「レオ! レオナール! 良かった、生きてた!」

「……えっと、どちら様?」


 少女はきょとんとした表情を浮かべる。レオは少女から視線を外し、アレグたちへ振り向いた。アレグは苦笑しつつ口を開く。


「お嬢ちゃん、こいつの知り合いか?」

「うん! 婚約者だよ。小さい頃、結婚の約束をしてたの」

「……お前、何も覚えてないか?」

「……うん」

「だよな。……お嬢ちゃん、こいつ、子供ん時の記憶、忘れてるんだわ」


 風が、ひゅうと吹いた。


「……忘れた?」

「……奴隷だと、よくあるんだ」

「……ドレイ、ってなに?」

「……人として扱われなくなった、人のこと」


 レオは静かに答える。少女はじっと黙ったまま、「……レオナールは、ドレイなの?」と聞く。


「ううん。もう、違うよ。……アレグ船長が、助けてくれたから」


 レオは静かに笑う。


「……というか。僕、レオナールなんだ」

「うん。レオナール・アドリアン・セイルヴィアだよ」


 人魚の言葉に、アレグが「……待て」と呟いた。


「……セイルヴィアって……セイルヴィア海洋王国の?」

「セイルヴィア海洋王国って、なんすか?」

「南西の群島にあった、海運王国だ。……十数年前、魔の海域に飲まれて消えちまうまで、海の覇者なんて言われてた」

「……魔の海域」


 人魚はこくりと頷いた。


「この島は大丈夫。魔物はこないよ」

「……この島だけ?」

「……外に出たら、魔物がいっぱいいる」


 少女は少しだけレオを見つめてから、「……あの」と呟いた。


「……今、なんて名乗ってるの?」

「ただ単に、レオ、って」

「じゃあ、レオって呼ぶね。レオは、どうやって来たの?」

「……船で」

「……船なの?」


 人魚の声は震えていた。


「そうだけど」

「レオ、お願い。私たちを助けて」

読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。