第15話 僕らはまた巡り合う ※軽度の嘔吐表現あり
宴も酣になった頃。人々は部屋へ戻ったり、片付けを始めたりと、ぽつぽつ動き始めた。
「まだまだ……行けるっす……」
「ほら……飲め飲め……」
「酒バカども。いい加減にしときな」
机に突っ伏しながら酒を口に含むノエルとアレグを、ミレーユが叱り飛ばす。レオはそんな彼らを横目に、そっと宴を抜け出した。
……その手に、なみなみ注がれたジョッキを持ちながら。
「〜〜♪」
レオは一人、港の桟橋に腰を下ろした。桟橋の縁で足をぶらぶらさせながらジョッキを傾ける。
頬は真っ赤だ。歌いながら体が左右へゆらゆら揺れている。
「レオ」
とたとたと足音が響く。ネレイアだ。レオはそちらに視線を向けた。
「何してるの?」
「飲んでる」
「……隣、いい?」
ネレイアの言葉に小さく頷いて、レオはまた歌を再開する。二人が歌い始めたのは、あの愛の歌だった。
「〜〜♪」
ネレイアは歌声を重ねる。レオは彼女へちらりと視線を向け、こくりと頷いた。
ソプラノとテノール、二つの声が響く。ソプラノがメロディを歌ったかと思えば、突然テノールが主役になる。
「〜〜♪」
——波が二人を分かつとも、僕らはまた巡り合う。
テノールが旋律を受け渡す。少し遅れて、ソプラノがその旋律をやさしく追いかける。
「〜〜♪」
——何度流れが変わろうと、私はあなたに手を伸ばす。
声は重なり、合わさって、一つの音楽になっていた。
「ふふっ」
レオは笑い声をこぼす。一曲歌った後、その頭はぐらりと傾いた。そのままネレイアの膝へ倒れ込む。
「……レオ?」
「ふふっ……すぅ……」
笑い声は寝息へと変わる。ネレイアは目を丸くしたあと、困ったように笑う。
「ここで寝ちゃったら、冷えちゃうよ」
夜風が海から吹き抜ける。ネレイアはくすくす笑いながら、その髪にそっと指を通した。
◇
「……頭、痛え……」
「気持ち悪い……っす……」
翌日。海賊船の船室にて、アレグとノエルは二日酔いに苦しんでいた。
「……おえぇぇぇぇ」
ガルドや漁師の手によって船室に帰ったレオも、桶を抱えて蹲っている。
「ったく。本当にどうしようもない酒バカどもめ」
ミレーユは腰に手を当てて叱りつけた。
「……姐さん、声……しんどいっす……」
「自業自得だよ! 学習しな! レオもレオだよ! 姫さんにも迷惑かけて!」
「……あとで……謝っとく……。おええ……」
ミレーユは肩をすくめる。
「たく。なんでうちの男どもはこうなんだか。ぴんぴんしてるの、ガルドくらいだよ」
その時、船室の扉が開く。入ってきたのは両手にコップを持ったガルドだった。
「水だ」
「神っす……」
「飲み過ぎるな」
「……気をつける……おえっ」
「……だな」
「……反省……したっす……」
「何回目の反省だい? 懲りない奴らだねぇ」
口だけの反省を繰り返す三人に、ミレーユは呆れていた。そのまま船室を出ていこうとする。
「……どこ……行くんだよ……」
「大公さんのところさ。バカどものせいで、今日は出航できないからね」
「……悪い」
「そうかい」
ミレーユは頭を抱え、ため息をつく。
「本当に反省しておくれよ」
彼女は笑って、そのまま船室を出て行った。
読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。




