第13話 おかえり
クラーケンを倒した翌日。セイルヴィアの生き残りたちは、アレグ海賊団の船でセイルヴィアへと向かった。
「……降りるぞ」
エドガーが桟橋に足をかける。そしてそのまま、降り立った。
「……帰って……来た……」
その言葉を皮切りに、生き残りたちは次々と故郷へと降り立って行った。
「……帰ってきた……」
「やっと……やっと……」
嗚咽をこらえきれず、その場に膝をつく者がいた。桟橋へ額をつける老人も、静かに涙を拭う母親もいる。
誰もが同じ景色を見ていた。青い海。潮の香り。そして、自分たちの故郷。
エドガーは振り返る。
「おかえり」
その一言に、堰を切ったように泣き声が広がった。
しばらくすると、ティアマールに戻っていたシレネが海から「ねえ」と顔を出す。
「どうだった?」
「こっちも大丈夫よ」
エドガーの言葉に、シレネは笑う。
「建物も無事だったわ」
「狩場、使えるぞ!」
「……そうか」
エドガーはそっと目元を腕で覆う。
「あらあら。エドガー様ったら、泣き虫なんだから」
シレネの笑い声は、潮風に溶けていった。
◇
避難民たちが落ち着いた頃、アレグは声を張り上げる。
「じゃあ、宴しよう……んぎゃ!」
「酒が足りないだろ。この考えなし!」
「……魚はどうにかなるが……」
「海獣の肉なら用意できるぞ」
「でも、酒が足りないだろ? 多少積み込んでいるとはいえ、うちだって大酒飲みが多いんだ」
「そうだな。買いに行かなければ」
エドガーの言葉にアレグが手を挙げる。
「なら、おれたちが買ってくる……ぶっ!」
「安請け合いするんじゃないよ!」
アレグ夫妻の夫婦漫才に、皆が笑い声を上げる。
「……その、お願いしてもいいだろうか。運送料はきちんと払う」
「近くの港なら、三日はかかるよ」
「肉や魚を準備するのに、ちょうどいいな」
エドガーの言葉に、アレグは大声で笑う。
「金の話は後だ後だ。まずは祝うぞ! 運送料は酒でいい!」
「なら、いい酒を買ってきてくれ。予算はこちらが持つ」
「おうよ!」
「……まあ、そんぐらいなら」
ミレーユは苦々しい顔をする。
「ねえねえ、お姉ちゃん」
「なあに?」
「その間に、工芸品の準備しよう?」
「工芸品……ああ、海賊さんに渡すものね」
「うん」
「よし、夜なべして作ろう!」
港には十数年ぶりに、人々の笑い声が戻っていた。
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