第11話 決戦の前に
ガルドは額の汗をぬぐう。船大工たちは「どうだ?」と声をかけた。
「……直った」
誰も、何も言わない。一拍置いて歓声が上がった。
アレグはレオを見る。
「さてと。こっからがお前の仕事だ。航海士、頼んだぜ?」
「出航する日を決めるんだね。ちょっと待ってて」
海中から見たクラーケンの縄張りを聞き取りながら、海図へ赤い印を書き足していく。
「……島がこうあるから……海流は、こうかな」
「ああ。間違いないぞ」
かつて漁師だった避難民が、海図をのぞき込んで頷く。人魚も海賊も、海図の周りへ自然と集まってくる。
「……だったら、このルートかな」
レオはペンを滑らせる。それを見てガルドは頷いた。
「分かった」
レオは海図から顔を上げて空を見上げた。
「……明日は、波が強い。明後日は雨。……出るなら、三日後だね」
「なら、作戦を立てよう」
エドガーが静かに頷く。海図を囲む全員を見渡した。
「私たちの国だ。アレグ海賊団だけに任せてはいけない」
「頼りにしてるぜ? 大公さんよぉ」
「こちらこそ、だ」
アレグは豪快に、エドガーは静かに笑う。
「……なあ、船の扱いに慣れてるやつ、いねえか? がっつり戦うなら、5人で回すのはちときつい」
「自分、漁師です! 体力もあります!」
「本官は元海軍であります」
何人かの男たちが手を挙げる。漁師や軍人、体力のある若者に、経験豊富な壮年の男たち。
「……必要なら、私も出よう」
「大公さん、経験は?」
「航海術はセイルヴィア王族の教養だ。私も、何度も海に出た」
「よし、採用だ! ……十人か、ちょうどいいな」
アレグはにやりと笑う。人魚の戦士が手を挙げた。
「なら、私たちが囮になろう!」
「いけんのか?」
「ティアマールの戦士の勇敢さ、とくとご覧に入れよう!」
「……だったら!」
ネレイアが声を張り上げる。
「私が勇気の歌を歌うよ! 聞くと、力が湧いてくるんだ!」
「じゃあ、出航前に頼む」
「分かった! レオも歌う?」
「……えっと、どの歌?」
「これ!」
ネレイアはワンフレーズだけ歌う。レオは一拍置いて、小さく笑った。
「それか。分かった」
「ネレイア、船にくっついて、魔物よけの歌を歌ったら?」
シレネはそう言って笑う。
「お姉ちゃんは?」
「島は私が守るわ。私だって女王だもの」
「分かった。頑張るね!」
ネレイアはぐっとガッツポーズをする。エドガーはこくりと頷いた。
「決まったな。船に乗る者は海賊の指示に従え。ティアマールの戦士たちは触手の足止めを頼む。残る者は島を守れ」
「異論あるやついねえか? いねえな? じゃあ、しっかり英気養っとけ」
海風に乗って、アレグの声が響いた。
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