小噺その④ 正義の蛇
女子高生桃田リナイが、腹痛を訴え(虚偽)体育の授業を抜け出し…自分の教室で憧れの男子生徒響木タクマの机に突っ伏し、椅子に臀部をコスリつけていると
(あぁ、タクマ君…好き好き、この椅子に彼のお尻が当たって、その延長線上にある至宝の記憶も…)
ガタンッ!
彼女が次の行為に移ろうとした時、膝が机の物入れの下部に打ち付けられた。
ゴトン…
鈍い音を立てて、巾着に入った弁当箱がこぼれ落ちる。
「おっと」
地面に着く直前に受け止めるリナイ。
(これって、タクマ君のお弁当?どれどれ…)
中に入っている、プラスチック製のシンプルな弁当箱を取り出し、蓋を開ける。
(100均かな…)
パカッ
(あっ、ウインナー…)
自分の妄想の一部と、目の前の物質の照合に成功すると
「んっ…」
自己の誕生の原点となる場所に、仮のメタファーを介在させる。
(表面の油が、ヌルヌルしてて良かった。)
すんなり事を終えると、元の場所に丁寧に戻す。
「私のホワイトソース…召し上がれ。」
お昼時…
「いただきま〜す」
クラスの男子生徒2人と机をくっつけて、お弁当を広げる見た目の整った青年タクマ。
「おっ、いいな弁当かよ。」
ザコAがコンビニパン片手に羨ましがる。
「彼女の手作りか?」
ザコBの心無い一言に、遠目で視姦するリナイのこめかみ血管の、血液は膨張した。
「違うよ…ママっ、イヤ、お袋のだよ。」
「今ママって言った?」
「確かに確かに」
「い、言ってね〜し。」
(あ〜ん…カワイイ…ザコAB邪魔っ、タクマ君見えね〜じゃん)
角度的に彼等の重なりを縫って、憧れの相手を必死で目で追い
「あむっ…クチャクチャ…」
例のウインナーを口に放り込み、咀嚼するのを見逃さない。
「イキそう…」
「だからガマンすんなって、早くトイレ行ってきな。」
頂点に達しようとしているリナイを、勘違いした親友の天童ハルカが嗜める。
(ま、いっか…トイレで続きしよ。)
言われるまま席を外し、女子トイレに向かう。
ガタン…
個室に入り、スカートを下ろすと
バンッ!
外から扉を開かれた
「だ、誰?」
慌ててスカートを上げるが、完全に上げきれず、半分下着が見えている。
「全部見てたぜ…」
牛乳瓶底メガネのクラスカースト最下層のチビ男…屋敷卓郎が、立っていた。
「見たって何よ」
「…………………」
(何何何?終わった、終わった、終わった)
彼女の耳に、自らの犯した罪の一部始終が吹き込まれる…一番毛嫌いしているタイプの男から。
「分かるな?」
問いかけが暗に含む行為の全てを受け入れ、地面に這いつくばるリナイの血の指紋が、タイルの上に残される…
再び、校内の休憩時間…友人と談笑するタクマ。
「そう言えば俺、犬飼いたいんだよな。」
「飼えばいいじゃん」
「イヤイヤ、ペットショップ行ったけど、高くてさ…高校生の小遣いじゃ無理ってか。」
ツカツカツカ
「僕の飼ってる仔犬譲ろうか…」
屋敷が横から割り込み、タクマに提案する。
「えっ、いいの…マジで」
「連れて来てるから、見においで」
ふたりで廊下を渡り、普段入ってはダメそうな、裏口へ通じる鉄の扉を開く小柄な男。
ガチャンッ
「これが、僕の犬だよ…ホラ、挨拶しろっ新しいご主人様だぞ。」
「ワンッ!」
全裸に赤い首輪を付けられ、繋がれている…桃田リナイがそこに
「ハッハッハッ…」
息を切らし、ヨダレを垂らしている。
ジー…
響タクマは、居場所を確保出来なくなった自分の蛇を解放する為…金具を下げる。




