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次回更新は10月31日(土曜日)21時台の予定となります。
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「おい、チャーリー。これ全然、美味しくないぞ。こんなの持って行かなきゃいけないのかよ?」
俺が声の方を見ると、ソイツは店内で携帯食料の袋を開けて中身を食っていた。
「ちょ、ちょ、ちょっと。お前、金は払ったのか?商品は金を払わないと開けちゃダメだぞ」
「えっ?……ああ、金ね。そうだった、そうだった。忘れてたよ。チッ」
……このガキ。舌打ちしてぇのは俺と店員の方だわ。
「つーか、店内で食うのもダメだ。外に出てから、袋を開けて、食え」
まったく、これだからお貴族様は……。
他の奴は大丈夫か、不安になってきた。店内をグルっと見回すと……、いた。オレは一瞬呆然としてしまったが、すぐに我に返って慌ててソッチに駆け寄る。
「オイ、待て、待て。商品を棚から直に自分のカバンに入れんな。レジで金を払ってからだ」
「はあ?なんでだよ?後でちゃんと金は払うんだから、同じだろうが!」
……なんで俺が逆ギレされなきゃいかんのだ?
殴りたい。しかし、オレはグッと堪えた。そして、そのバカを何とか説き伏せて、店の買い物カゴに入れ直させた。
俺は、今日、大公派の連中と大遠征のための買い出しに来ていた。まだ一軒目の携帯食料を売っている食料品店なのに、もう既に疲れた。俺、というか、大公家王都屋敷住みの子供たちは、小さい頃からわりかし気軽に子供たちだけで屋敷の外を出歩いていた。俺もほとんど毎日のように道場に出かけていたので、その行き帰りに道場に通ってる連中とツるんで買い食いしたりなんだと遊んでいたものだ。
だからだろう、大遠征の買い出しでは他の奴らの面倒を見るように方々から頼まれていたのだが……。ここまでヒドいとは思っていなかった。
ま、まあ、話には聞いていた。王都屋敷がちょっと特殊なだけで、普通は剣術や学問を学ぶとしたら、屋敷内にある道場や講堂で指南役に教えを受けることになる。つまり、貴族家の子供はあんまり屋敷の外に出ないらしいと。そして、買い物なんかも基本的には屋敷に商人を呼んで商品を持って来させて買うものらしいとも。
……それにしても、何も知らなすぎだろう。
そのとき、とある声が聞こえてきた。
「釣りは取っておくがいい」
「えっ?いや、その……、あまりに多うございます。それに、その……」
「良い、と言っておる」
……いや、ダメだろ。はぁ。ホントに人の話を聞いてないよね。学園で説明されただろうが。大遠征の趣旨には、民の暮らしに触れたり、一般的な金銭感覚を知ることも含まれるって。だから、平民の体で買い物しろって。はぁ。俺はダッシュでレジに向かった。
その後もなんやかんやあったが、なんとか携帯食料を買い終えて、俺たちは食料品店を出た。すると、店先でバッタリとサラたちと出くわした。デレクやエリックもいる。コイツらのパーティーも買い出しかな。
「よう、チャーリー」
エリックが声を掛けてきた。
「おう、エリック。お前らも大遠征の?」
「おお、そうなんだ。ダリぃな」
「それな」
俺はかなり実感を込めてそう返事をした。
サラも来て、「アンタ、なんか疲れてない?」って言われて、なんだか余計にガックリした。他の連中ともテキトーに挨拶を交わす。
サラたちは俺たちと入れ違いで店に入って行った。
クソっ。アイツらは全員、買い物なんか慣れてんだろうな。羨ましいわ。それに比べてコッチは……、などと思っていると、ギルバート様がアイツらの背をジッと見ているのに気づいた。多分、デレクを見ている。
俺は、小さい頃から、ギルバート様が王都におられるときはお側に仕えさせて頂いていた。ギルバート様は外見的には幼少の頃から今もかなり背が高い。フランク・スーくらいはあると思う。ただし、あんなにゴツクはなく、シュッとしている。内面的には、寡黙な方だった。ビックリするくらい無口だ。ガキの頃なんか、全然話をしてくれないから、俺って嫌われてんのかな?と思ったことがあるくらいだ。黙々となすべきことをなすって感じで、ジューンスペンサー家の人らしく武人然としている。個人的には、武人の中でも修道騎士っぽい、と思ってたりする。そして、クソ強かった
……やっぱり、デレクが気になるのか。
そういえば、デレクも結構、無口な奴だった。まあ、だけど、アイツは寡黙って感じじゃなくて、愛想がないだけだけどな。というか、無表情なだけで、意外にノリはいいし。それに、あんまりペラペラとは喋らないとはいえ、それなりには喋るしね。
ギルバート様が自分のことを見ている俺に気付いたのか、オレの方を向いた。そして、独り言みたいにポツリと言った。
「デレク・ジュライフィールド、……強いな」
まったくもって同感だった。海賊派のサロンでいいようにヤられている。しかも、自分がどういう風にヤられているのかすらもよくわからないレベルだ。目の前にいたはずのデレクが、いつの間にか、後ろにいて、俺の後頭部をツンツンしてくるんだ。アレを5回連続でやられたときはマジで泣きそうになった。
俺が海賊派のサロンに通い始めたことを、表立ってゴチャゴチャ言う大公派の奴はいない。それどころか、他にも海賊派のサロンに通い始めた大公派の学生もいるくらいだ。サラに勝ちたい一心で、大公派での立場まで考えていなかった俺にとってはラッキーなことだといえるだろう。
要因はいくつかあると思う。まず、そもそも、王党派とはいえ、ジュライフィールド家は評判が悪くないというのものだ。ジュライフィールド家は昔から王国軍に家人を出して、帝国との戦に何度も後詰に来てくれているからね。
そして、なんといっても一番大きな要因は、大公閣下がわざわざ皆の前で「チャーリーの強くなろうと努力する姿勢には感心する。私も騎士として見習わないといかん」とおっしゃってくれたことだ。
さらに、あの「派閥なんざくだらねぇ」っていうデレクのセリフだ。アレは俺もそうだが若い他の学園生の心にも刺さったみたいだった。あんなことを言う奴は今までいなかったし、皆も心のどこかでちょっとそう思っていたフシがある。
だからかどうか、あのセリフは学園に瞬く間に広まっていった。おかげで、デレクの野郎に「お前が広めたんだろう」とネチネチ責められている。ま、まあ、元を辿れば俺に行きつくかもしれん。でも、実際に広めたのは、大公閣下だと思う。確証はないけど……。でも、俺は閣下と父上にしか言ってないんだよ……。
「あの立ち姿よ。まるで宙に浮いているようだ。フワリといった感じで、何の力感も体の重みすらも感じぬ」
珍しく、ギルバート様がよく喋った。
「ああ、わかります。私は何回も稽古をつけてもらいましたけど、綿毛みたいなんですよね」
「フフフ、上手いこと言うな。突いても、突いても、フワリフワリと風に舞うように躱されるか」
「そうなんです。当たんないんですよ」
「……御不浄決闘を見れなかったのは痛恨の極みよ」
……へぇー、そんな風に思ってたんだ。
俺は思い切って聞いてみた。
「どうです?勝てそうですか?」
ギルバート様が少し考えてから、応えてくれた。
「いや。私の方が少し分が悪いと思う」




