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5-6

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は10月10日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします

 息子たちが部屋を出ていくのを見届けて、私は当主執務室に一人になった。


「ふうぅー……」


 背もたれに深く体を預け、大きく息を吐いた。


 ……それにしても、あの二人、ホントに仲悪いな。


 次期当主はジャスティンに決まっている。そして、第二騎士団の団長にはデレク、と思っているんだけど……。大丈夫かね?第二騎士団は当主の護衛も任務なんだが……。いやいや、兄弟だし。なんとかなるだろ。……多分。


 それにしても、ジャスティンもなぁ……。なんで、アイツはあんなにも派閥に凝り固まっているんだろう?困ったもんだよ。若いんだから、もうちょっと柔軟な姿勢を……、いや、そういえば私も学園生の頃はあんなもんだったような気もしてきた。若いからこそ、逆に、代々の習わしを守り抜くというか……。いや、違うな。敵と味方に分かれるのが好きというか……。うん、まぁ、そういうところがあるわな。


 ただ、大人になって現実の政治を齧り、さらには貴族家の当主にでもなってみるとわかる。王国はこのままじゃマズいんじゃないか……、ってね。


 昔の王国は国内では激しい派閥争いをしていても、外敵たる北の帝国相手には一致団結して戦うという意思統一がされていたようだ。帝国に負けたら、自分たちの家の存続にかかわるし。なにより、それこそが王国貴族の王家あるいは王国への忠誠の問題だった。


 ところが、長年にわたって続く帝国との戦争状態に慣れてしまったのだろうか。いつの間にか、何の根拠もなく、このままの状態がずっと続く、つまりは、帝国には勝てないまでも負けない、と思うバカが出始めた。それゆえか、今や、それなりの数の王国貴族たちが王家や王国の利益ではなく自分の利益を守るために動くようになってきてしまっている。特に王党派は酷い。王党派内にいるからこそ、それがよくわかる。


 北の帝国との戦争の最前線の主力を担っているのは大公家だ。そもそも帝国の侵略を見据えて初代建国女王が自分の最も信頼する弟を帝国との国境に置いたという歴史的な経緯がある。大公家は代々強かった。それに付き従う大公派――もともと、王国北部の大公家の周りに領地を貰っていた貴族家は全て現大公派になっているといっていい――も強かった。しかし、あまりにも長い間にわたり戦い続けて、大公家はもとより大公派も疲れているのは事実だ。なんせ戦争は金も人もバカ食いする。


 にもかかわらず、最近では、王党派の貴族たちの中に物資を含めた援助を惜しみ、なんやかんや理由をつけて拠出しない連中がいる。一例を挙げれば、王国軍だ。王国軍は近衛騎士団とは違い、王家ではなく王国直属の組織で、対帝国の後詰の軍という位置づけだった。我がジュライフィールド家では、私の妻が所属しているし、家臣たちの中にも所属している者がおり、戦場に何度も出征している。また、物的援助も怠っていない。だが、王国軍へ人的・物的支援を全くしていない王党派貴族共がなんと多いことか。目に余るわ。しかも、そういう手合いは裏では「大公派を弱らせ、王家の威光を再び」なぞと妄言をほざいてやがる。


 バカなのか?大公派が抜かれたらどうするつもりなのか?大公派の背に守られているのは王党派なのに。しかも、ただでさえ、帝国の方が王国より国力が上だ。味方が弱くなれば、さらにその差が広がる。戦うなら、味方が強いうちに一緒にやるべきだ。当たり前のことなのに……。さらには、このままでは王国はそのうち内部分裂の可能性も普通に有り得る。なぜなら、秘かに危機感を抱いている者たちもいるのだ。帝国に負けたらどうしようとね。実際、帝国から大公派、王党派問わず調略の手がいくつも伸びてきており、それに応じかけた奴らもいる。まあ、今のところは公にせずに裏で始末をつけられているが……。


 ジュライフィールド家の力の源泉が王党派の筆頭という地位にあるのは十二分に理解している。とはいえ、このままでは王国が危うい。とにもかくにも、皆が同じ方向を向く状況にしなければならない。そのためには、できるのであれば、王国貴族を一つにまとめたい。だが、現実問題として無理だろう。しかし、せめて王国貴族の7割くらいをまとめられれば……。そうすれば、残りの3割も数の力で同じ方向を向かせることができるだろう。そして、その第一歩目は現在の派閥の垣根を壊していくことに他ならない。


 私はそういう状況認識なのに、ジャスティンの奴め。「派閥、派閥」って……。若い頃の友人は大人になってもずっと友人でいてくれることが多い。学園生でいる今がチャンスなのに……。ま、まぁ、私ももうちょっと口に出して伝えていればよかったとは思うけど……。


 その点だけは、デレクはジャスティンより上手くやっている。まぁ、少々、……いや、かなり自由過ぎるけど……。アイツはホントに何を考えているのか?なんで、ホワイトバーン家のジョナサン殿をあんなにボコボコにするかねぇ?もうちょい手加減しろよ。向こうにもメンツってもんがあるんだよ。ジョナサン殿がデレクにビビりまくっているのはもはや王党派内どころか王国貴族の皆が知っている。おかげで、恥をかかされたホワイトバーン家は明確にウチの敵になった。……まあ、いいんだけどね。もとからアソコとは上手く行っていなかったから。


 だけど、海賊派との縁は私にとっては僥倖と言うしかない。デレクをスー領のレイ・ボイル殿のところに送ったときは、正直、こんなことになるとは思っていなかった。どちらかというと、余計な問題を起こして、海賊派と揉める事態だけは勘弁してくれ、と思っていたくらいだ。それが、今やデレクは海賊派から身内扱いされている。それに、王党派武官系細剣閥との関係も良好どころかデレクがボスと言っていいくらいだ。今回の文官系の件もまたしかり。まだ海賊派や細剣閥や文官系の各家には、はっきりとは言っていないものの、遠回しに王国の現状への認識を伝えてみたところ、悪くない反応だった。派閥再編のいい足場にしなければならん。


 もっとも、王国貴族を一つの方向に向かせられることに成功したとして、どうするか?やることは多々あるだろう。だが、やはり、最も重要な問題は帝国との戦争になる。戦い続けるのか?それとも、和平か?あるいは、何か第三の道があるのか?難しい問題だ。安易に帝国と和平を結ぶのは危険だ。今は、我が国を含む三ヶ国対帝国の一ヶ国で戦っているから五分なだけだ。そして、教国は聖戦から降りられない以上、我らが和平を結ぶと、帝国は全兵力を集中して教国と戦い、勝つだろう。そうなると、王国と共和国の同盟だけでは分が悪くなる。


 ただ、帝国も戦争に疲れている。皇家内にも和平派がいるとの情報がウチの陰の騎士団や他家や王国軍からも上がってきている。さて、これをどう使えばいいのか?


 それに、教国の動向も気になる。奴らは何を企んでいるのか?王国で何をしてやがったのか?


 ……わからんことだらけだ。だが、まずは王国内をまとめるのが先だ。

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