↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/74

5-3

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は9月12日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。

 稽古のバイトを終え、王都中央道場から学園まで、サラやチャーリー達と他愛のないことをくっちゃべりながら歩いて来た。校門のところでチャーリーや他の何人かと別れ、オレはサラと他の王党派武官系細剣閥の連中と海賊派のサロンに向かう。


 サロンに着くと、玄関でばったりテッドと出くわした。コイツは同じ1年生でスー家の騎士爵家の息子だ。婆さんのところにオレがいたときからの顔見知りだった。


「よお、デレク。なんかお前らに客が来てるみてぇだぞ」


「客ぅ?お前ら?」


「おう。お前とサラだ。リナが探してた」


 誰だ?学園内だから多分、学生だよな?オレ、学生であんま知ってる奴いないんだが……。まさか、兄上?……いや、ないな。相変わらず口きいてないし。


 オレはサラを見た。サラも首をひねっていた。


「多分、談話室にいると思うぜ」


「わかった。行ってみるわ。ありがとよ」


 うーん、マジで、誰?と思いながら、サラと談話室に行く。部屋の中には、リナ、マリア、フランク、エリックの四人と学園の制服を着ている知らない奴らが三人いた。その三人とリナ達は机を挟んで座っている。いや、約一名、エリックだけは机から離れたところで椅子を傾け、後方の二脚だけでバランスを取る遊びに夢中だった。


 ……何やってんだ。このバカ。


 知らない連中の内訳は全員男で文官系っぽいのが一人、武官系っぽいのが二人だ。


 オレとサラが部屋に入ると、椅子に座っていた知らない奴ら三人が立ち上がった。三人ともなんだかえらくギクシャクした動作だった。なんか体に無駄な力が入っている。


 緊張してんのか?


 チラッと腰に目をやると、全員が帯剣していない。平民が貴族に会うときのマナーだ。それに三人の顔つきを見るに、まあ、ほぼ間違いなく平民だろう、と思った。


 これは今回の人生で学園に入学してから気付いたことだが、貴族のボンボンどもと比べて平民の子たちは少しばかり顔つきというか目つきが厳しいように思う。すでに成人して仕官しているような大人の貴族は違うけど、やっぱり子供の貴族はちょっと顔つきに緩いところがあるように感じる。


 オレとサラが席に着き、客にも席に着くよう促したあと、リナが紹介してくれた。文官系っぽい奴――王都で有名な大商会の一つの息子――がミカで、武官系っぽい奴の背の高い方がニックというらしい。この二人は付き添い。もう一人の武官系っぽいのがマックって名前で、オレたちに用があるみたいだった。そして、マックはなんとゼワリン男爵領の件で一緒だったリアフタ商会の専属護衛の一人だった奴の息子だそうだ。


「それで?」


 オレが誰とはなしににそう訊くと、リナが「こないだの護衛の件でお礼に来たんだって」と応えた。


「礼?なんで?」


 すると、再び立ち上がったマックが「父の仇を打って下さり、有難うございました」と言って、頭を下げてきた。ちょっと面喰らった。


「いやいや、礼には及ばん。オレたちはただ仕事をしただけだ。それに礼を言わねばならんのはこっちの方だろう。父君の献身がなければ、正直、依頼主を守り切れなかっただろう。礼を言う」


 そうオレが言うと、エリックが「うおっ、デレクがまともなこと言ってやがる」と茶々を入れてきた。


「黙れ。ヤリ逃げ野郎」


「し、してねーつってんだろうが」


「ちょっと、客人の前でやめなさい」


 リナがオレとエリックを睨んだ。


 まあ、オレもこれくらいの物言いはできる。中の人やってるときに覚えた。それに、前の人生のオレは違ったようだが、今のオレはコイツらを敵にまわす必要性を感じない。ミカの実家は大商会だ。ヘタな貴族なんて目じゃないくらい金を持っている。そして、チラっとニックを見た。うん、見覚えがある。コイツは武官系で平民のエースとか言われるくらい強かった奴だ。前の人生のオレでもコイツには正面からは喧嘩を売れなかった記憶がある。てゆうか、オレが強気に出てたのは主に文官系の平民だった。……ま、まぁ、それは置いといてだ。


 コイツは秋の武闘蔡でも1年のくせに上位8人か4人くらいまで残ったはずだ。それに、その前に、もうじき行く大遠征で大活躍……。


 あっ⁉……そうだ、忘れてた。どエラい事件が起きるんだった。完全にマルっと忘れてたわ。


 大遠征で魔獣の大群による襲撃を受けるんだった。確か……、狼系の中型種の群れだったわ。あったなぁ、そんなこと。


 ……いや、なんか他人事みたいな感じだけど、実際のところ前回のオレには他人事だったりした。というのも、オレは第三王女と同じ班で、学生の隊列の最後方にいた。で、襲われたのは隊列の前の方だ。だから、「魔獣の大群による襲撃」との急報ですぐに逃げられんだよな。ぶっちゃけ、オレは魔獣の影すら見ていない。


 それに、被害が大きかった……要するに、死人が出たのは主に平民の班だったから、前回のオレはそこまで興味がなかったしな。うん?でも、貴族の班にも少し被害が出ていた気がするから、襲撃されたのは隊列の真ん中よりちょい前あたりか?……いや、武官系の貴族が救助に行った可能性もあるな。あれっ?どこが襲われたんだっけ?マズくね?いや、大丈夫か?


 というのも、隊列の順番は派閥が大きく関係するんだけど、オレは今回は王党派じゃなく海賊派の班だ。つまり、中立派だ。で、隊列の順番は前から平民、大公派、中立派、王党派だ。となると、多分だけど、襲われたのは悪くとも平民と大公派の間あたりだろう。うん、中立派は大丈夫かな。うーん、どうだろう?念のため、中立派でも後ろの方に行くか。……いや、無理かも。派閥内で大体の順番は決まってるからな。うーん……、まあ、ウチの班はもとより海賊派は手練れが揃ってるからそこまで危険はないか。うん、イケるだろ。オレも遣えるようになってるし。まさかに、予言めいたこと言うわけにもいかんしな。うん、イケるイケる。ヤバそうなら、速攻で逃げりゃいいしな。


 ……そういや、オレって一年生の最初の頃は王女と同じ班だったけど、徐々に違う班に入れられるようになるんだよな。今、思うと、アレってオレが遣えないのがバレたんだよな。でも、当時のオレは「政治的に配慮しなくちゃいけないことがあって」とか「貴方のことは本当に頼りにしてるわ」とかテキトーに王女に言いくるめられて気付いてなかったような……。


 いやいや、今はそんなことはどうでもよろしい。大遠征……じゃなかった、客人だ。


 オレが脳内から室内に意識を戻すと、「結果的に仕事を達成したことで、後金――前金で半金、仕事完遂で後金として残り半金が貰えるのが護衛依頼の通常の契約形態だ――も貰えた」とか「それとは別に素晴らしい働きをしてくれたからと言って、かなりの額のボーナスも出してくれた」とかっていうリナたちの会話が聞こえてくる。


 ……大遠征、どうしよう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。