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4-17

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は8月1日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。

 オレたちはゼワリン男爵領の領主館に到着した。


 ゼワリン領は一応、交通の要衝ってことだったし、今時、関所なんていう見栄の塊を置いているくらいだから、さぞかし無駄にデカくてド派手な領主館なんだろうな、と想像していた。ところが、意外や意外、小ぢんまりした領主館だったので、ちょっと驚いた。


 というか、ここに来るまでが長かったわ。


 ゼワリン騎士団に遭遇してから、まずオレたちの「帯剣の是非」について領主殿にお伺いを立てたところ、「帯剣については何ら問題ない」との返答を得た。スー家やジュライフィールド家の名前を出した以上、当然だろう。


 やれやれ、これでゆっくり一休みできる。


 オレがそう思っていたら、次は事情聴取について、フランクが噛み付いた。ゼワリン騎士団は「これまでの事情をお伺いしたい」とわりかし丁寧に言ってきた。これに応じるのは当然のことだとオレは思った。が、しかし、フランクは「先を急ぐゆえ、今はお断りする。後ほど、事情については書面なりでお知らせしよう」と宣った。かなり上からの物言いだ。しかも、「我がスー家の約を疑うのか?」とかまで言い出す始末だった。


 いやいや、それは流石に無理筋というものでは?


 オレは結構びっくりしたんだが、フランクはなぜか頑として譲らない。これについても、騎士団がゼワリン男爵に何回もお伺いの使者を出して、「あーだこーだ」と遣り取りをして、最終的にはフランクが折れた。まあ、そりゃそうだろう。領主は自領の警察権だの司法権だのを持っている。そして、貴族は基本的に対等の関係だ。こんだけ多数の死人が出てるのに、たとえ貴族とはいえ、明らかな当事者を何もしないで解き放つ訳がない。そもそも論でいえば、山賊に襲われたってオレたちが言っても、本当かどうかはわからんからね。他所の貴族に自領で領民を大量にブチ殺された可能性は捨てきれない。


 なんだかなぁ……。


 オレが少々呆れていると、その次は事情聴取をする場所で揉めた。騎士団は「領主館へお越しいただきたい」と言ってきた。オレにしてみりゃ、だろうね、って感じだ。だが、フランクは「今すぐ、ここでしてくれ」とか言い出す。いやいや、なんでだよ?こんな河原で事情聴取なんかするわけねーだろ。そんなの絶対、通らないって。またもや、ゼワリン男爵にお伺いの使者を何回も出して、しまいには「我が領で危難に遭われたお詫びもしたい」とかってかなり下から言われて、結局はまたフランクが折れた。


 何のマウントが取りたいんだ?フランクよ。


 結果はハナからわかってたじゃねーか。他家の者が自領で山賊に襲われたっていうのに、そのままスルーする貴族なんていない。あとでどんな難癖をつけられるか、わかったもんじゃねーし。それ以前にメンツってものがある。今回の場合でいえば、オレたち他家の者がゼワリン領で襲われたことで、いったんゼワリン男爵のメンツは丸潰れした。だけど、男爵がオレたちに詫びを入れ、おもてなしをし、さらに厳正な捜査と処罰をして、それらをスー家をはじめとしたオレたちの実家に受け入れてもらうことで、はじめてゼワリン家の潰れたメンツがなんとか復活するって寸法だ。


 いや、マジで、これ何の時間なの?


 とはいえ、ここまでくると、流石にオレでもわかってきたけどね。これ、フランクは疑ってんだな、ゼワリン男爵の関与を。どこでそんな疑いを抱くことになったのかは、サッパリわかんねーけど。怪しいとこなんてあったけ?まぁ、オレは頭脳労働には全く適性がないから、お任せするしかねぇんだが。


 てゆーか、オレには言えよ、フランク。エリックのバカに言うと、「殺し合いは先手必勝」とか言って、ゼワリン騎士団に突っ込んで行く可能性が大だけど、理性的なオレはそんなことはしない。まったく、フランクも水臭い。……エリックと同類と思われてないよね、オレ?


 そういう訳で、領主館までの移動の時間も含めて、騎士団と邂逅してから余裕で4、5時間は経過してんじゃねーかと思う。時間をちゃんと確かめてなかったから、知らんけど。


 まあ、お陰様で、フランク以外の者は睡眠とったり、飯食ったりして、ちょっと体力や気力が回復したけどね。……多分だけど、このための時間稼ぎでもあったのかもしれんね。はぁ、つーか、まだもうひと殺し合いしなきゃいけない可能性があんのかよ。だから、この依頼は嫌だったんだ、クソっ。


 領主館の正面玄関の前に、ゼワリン男爵らしき人が立っていた。当主自らわざわざ出迎えに来たようだ。他家の当主以外の者に対する最上級の礼だ。


 ……どうなんだろうね?


 海賊派やらジュライフィールド家やらのビッグネームの貴族家の子供が揃っているからなのか?はたまた、オレたちを油断させるポーズなのか?


 ゼワリン男爵は腰に細剣を佩いていた。腰の据わり具合からして、オレが殺った神殿騎士くさい奴ほどではないが、そこそこ遣う感じだ。オレの頭の中にレニン流北派の剣がチラついた。いや、別に、細剣遣いなんて山ほどいるんだけどね。ひょっとしたら双子派スーザン流の同門かもしれないし。……でも、なんか嫌な予感がビンビンしてくるんだけど。


 ゼワリン男爵は自己紹介してから、オレたち一人一人――ビガたちは除く――に声を掛けてきた。


「このたびは、我が領の不始末でご迷惑をおかけしたようで、申し訳ない」


「いやいや、あの程度の者ども、何ほどでもありません。お気になさらないで下さい」


 オレはそう返しておいた。最初に男爵と話したフランクの返しを少しアレンジしただけだ。他の皆も同じようなもんだった。


「お疲れでしょう。軽食の準備をしております。さあ、中へどうぞ」


 ゼワリン男爵がそう言うと、執事っぽい奴らがオレたちを館の中に案内し始める。オレはゼワリン男爵を見るとはなしに見ていた。すると、男爵はフランクとずっとやり取りしていた騎士団の指揮官みたいな奴を傍に呼んだ。


 ゼワリン男爵が指揮官に何か言うと、指揮官は驚いた顔をして何か言い返した。それに対し、男爵がさらに何か言った。かなり厳しい顔つきをしていた。すると、指揮官はめちゃくちゃ不服そうな顔をしていたが、どうやら「わかりました」と応えたようだった。


 ……なんだ?


 オレが館の中に入りながらそう思っていると、男爵は指揮官を下がらせ、騎士団の中から一人の団員を呼んだ。そして、ソイツに何か耳打ちした。ソイツは一つ小さく頷いたあと、オレたちの方を見た。目が合う。そこからしばらく見つめ合うハメになった。やがて、ソイツはオレから目を逸らし、どこかに行った。なんかじっくりと値踏みされたんだけど。しかも、ソイツも細剣遣いだった。さらには、そこそこ遣いそうだったし。はぁ、マジで嫌な感じだわ。

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