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次回更新は7月25日(土曜日)21時台の予定となります。
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オレたちは山賊と戦った河原みたいなところで休息をとっていた。
フランクはやたら険しい顔をしたままで、「早く行こう」と急かしてきたんだけど、皆の体力がもう限界だった。リナとサラは座り込んでしまったし、エリックとマリアもだいぶ疲れていた。そして、正直、オレもヘロヘロだった。まあ、ここまで半日近くもガチンコの命のやり取りをしてきている。そりゃキツイわ。こんなの流石に皆が初めての経験だし。心身ともに疲れ果てて、当たり前だろう。そういう訳で、やむを得ずいったん休息を取ろうってことになった。……戦利品もちゃんと確保しなきゃいけないしね。マリアが倒した奴の中位魔剣も結構いい剣だった。
ビガとビシャも涙の再会を果たしていた。もっとも、泣いていたのはビシャだけだったけど……。実は、ビガは例の首飾りを懐に入れて持っていやがった。あの交渉は思い切りハッタリをかましていたそうだ。ケロッとした顔で、「運命を切り開くコツは、ただただ最後まで諦めないことですな」って嘯いていた。いやいや、元気なジジイだわ。
あと、一応、山賊どもの死体の数を数えてみたが、17体しかなかった。確か、23人はいたはずだから、6人は逃げたようだ。
もっとも、いくら疲れているといっても、いつまでもここでグズグズしているわけにもいかない。まだ敵地だ。しかも、逃げた山賊どもが援軍を連れてきやがる可能性もある。
オレはそろそろ頃合いだと思い、フランクを見た。フランクが頷いて、「さぁ、行こうか」と言ったときだった。それに被せるように、マリアが警告を発した。
「何者かが接近中です。集団です」
オレたちはマリアの目線の先を一斉に見た。……ああ、確かになんかゴソゴソ動いている。結構いるぞ。2,30人はいるんじゃね。最悪だ。だから、この依頼を受けるのは反対だったんだよ。クソったれめ。
「……申し訳ありません。気付くのが遅れました」
マリアがそう謝ってきた。責任感強過ぎだろ。
「気にすんな。みんな油断してたんだ」
オレはマリアにそう返しつつ、剣を抜く。はぁ、しんどい。他の連中も臨戦態勢に入った。どう考えても、状況はよろしくない。今からじゃ、逃げんのは無理だ。斬ってくださいとばかりに背を見せるハメになるだけだ。そして、皆の疲れも取れているわけがない。そのうえに、あの人数と真正面から遣り合わなくちゃいけない。はぁ、全部、エリックのクソバカのせいだ。クソが。あとで必ずボコボコにしてやる。
そんなこんな思っているうちに、山賊の集団と思われる連中が木々の中から姿を現した。軽装備とはいえなかなか立派な胸当てに籠手に……、ん?あれっ?全員同じ装備のような気が……。しかも、動きもやたら統制が取れた……って、旗指物なんか持ってる奴がいるんですけど。家紋は山紋かな?山っぽいのが四つ書かれている。うむ、知らん。……まあ、ここはゼワリン領だから、ゼワリン家なんだろうけど。で、これ多分、騎士団だよな?
騎士団と思われる連中はオレたちを半包囲の形に取り囲んだ。集団の真ん中あたりにいたちょっと偉そうな奴が前に出て来た。
「ゼワリン騎士団だ。武器を捨て、両手を頭の上に上げろ。従わなければ、問答無用で斬り捨てる」
おお……。
オレはホッとして、少し体の力が抜けた。どうやらこれは助かったようだ。ふーっ。さて、武器を置くにしても、とりあえず鞘に納剣してから……と思ったとき、フランクが叫んだ。
「断る」
……へっ?ちょ、ちょ、ちょっと、フランク?何言ってんの?
「私はフランク・スーだ。スー男爵家の長子である。騎士に剣を捨てろとはいかなる存念か?」
いやに居丈高にフランクがそう言い放った。なんで、そんなに喧嘩腰なのよ?
思わず、隣にいたリナを見た。リナもオレを見た。目を丸くしている。
……いやいや、フランクさんよ。
喧嘩腰もさることながら、今はいいじゃないか、そんなことは。なぜ、事を荒立てようとするんだよ。あとで事情を話しゃあ、いいことじゃねぇかよ。斬り掛かられたら、どうすんだよ?面倒くさいことになるだろうが。
オレがそんなことを思っている間も、フランクは「こちらはジュライフィールド伯爵家のデレク殿で、あちらは……」とかってオレたちの紹介をやっていた。
ウチの王国ではいくつかの例外はあるけれど、騎士つまり貴族はいかなる場所でも帯剣が認められている。これには一応理由らしきものはある。ウチは建国以前からも以後も戦争が日常になっている国だ。おまけに、そもそも我が大陸には伝統的に「剣は騎士の魂」という思想も蔓延していた。これは、よくよく考えたら、今一つ意味が分からないんだけどね。だって、貴族には魔法使いも含まれていて、魔法使いってあんまり剣は関係ないよねって感じなんだが……。まあ、でも、しょうがない、そういう風になっている。要するに、急な侵略行為とかがあったときに無手じゃ話にならんからせめて剣の一本くらいは持っとけってことだし、何といっても「魂」だし、いつも肌身離さず剣を持つ権利が貴族には有るってことになっている。
で、貴族同士は基本的には対等の立場だ。爵位は関係ない。だから、貴族が貴族の帯剣を許さないなんて考えられないことだ。たとえそれが他家の領地や屋敷内でもね。侮辱以外の何物でもない。即、戦争だ。いや、マジで。ちなみに、平民が貴族に会うときは剣は置いて行くのが礼儀とされている。別に明文の規定なんかはないけど。
ゼワリン騎士団がにわかにざわつくなか、フランクがスー家の家紋入りの短剣を見せた。家紋を騙るのは重罪だ。というか死罪だ。騙られた家紋の貴族家がそのメンツにかけて全力で確実に殺しにいく。当然だが、家紋入りの偽の短剣を見せた奴はもとよりその短剣を作った奴も同罪だ。だから、こういう短剣は貴族であるという強力な証にはなるんだが……。
そこまでして?そんなに剣に拘りあったけ?
不思議だった。でも、フランクの必死な顔を見るに、なんか意味があるような気がしないでもない。そういえば、さっき、あまりにもフランクが「早く行こう」って急かすんで、「何かあんのか?」って聞いたら、「ボクの考え過ぎかもしれないから」って濁されたな。うーん……。
オレは何も言わず、黙っていた。他の皆も同じだ。
一方のゼワリン騎士団にとってもこんなのは予想外のことだったみたいだ。指揮官みたいな奴が「えっ、いや、しかし……」とかオロオロしだしている。そりゃそうだ。ここで実力行使しようものなら、あとで海賊派およびジュライフィールド家と戦争……とはいわないまでも、確実に賠償金は持っていかれることになる。いや、誰かが斬られでもしたら戦争も普通にあり得るか。あの指揮官も上司たる領主の判断が欲しいだろう。
「ゼワリン男爵殿に聞いてみてはどうかな?」
フランクがそう言うと、「わかりました」とモゴモゴ言って、指揮官は部下を呼び寄せた。




