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いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は7月18日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。


 倒れた山賊の代表みたいな奴のところに、別の山賊が駆け寄ってきた。ソイツも細剣を手にしていた。


 その山賊はうつぶせに倒れていた山賊を抱き起し、「マルケス殿……」と呟くようにではあるが、そこそこ大きめの声で言って、しばし絶句していた。


 マルケス「殿」って……。もう神殿騎士で確定だろ、コイツら。


 中の人をやっているときに、神殿騎士の話は聞いたことがあるし、会ったこともあるし、数度だが戦っているところを見たこともあった。ただし、実は妖剣野郎が神殿騎士と戦ったことはなかったりする。さっきも言ったとおり、神殿騎士どもは帝国との聖戦にかかりっきりだったからな。戦いぶりを見たのも戦場を遠くから盗み見たくらいだし。もっとも、レニン流南派とは何度も戦ったことがある。ちなみに、北派と南派の違いはあの北派の独特の構えとあとは北派は剣技でキレイに勝とうとするが南派は勝ちゃぁいいみたいなところがあって足癖の悪いのが多かった印象がある。まあ、でも、基本的には同じような感じの闘い方だと思う。で、聞いた話だと、神殿騎士はもともとは各地にカーチャ教の教えを説きに行く神官の護衛がその始まりだったはずだ。それがカーチャ教が大きくなるにつれ神殿騎士と呼ばれるようになったとか。それで、魔獣を狩るより暴漢から神官を守るのがメインの仕事だったから、伝統的に細剣遣いが多いってのは聞いたことがある。その流れで、北派を創ったとかね。……うん、今はどうでもいいか。


 山賊は死んだ山賊を抱きかかえながら、ブツブツとなんか唱え始めた。おそらく祈りの文句だろう。しばらくしてから、オレを見た。山賊は、一瞬、ん?って感じで訝し気に目を細めた。しかし、オレの左手の高位魔剣に目を遣ると、なんか勝手に納得したように一つ頷いた。ソイツは死んだ山賊を丁寧に地面に横たえて、立ち上がった。なんかヤル気っぽい。


 そのとき、オレの右側から足音がした。素早く目を遣ると、マリアだった。


「デレク様、アレは私が……」


 マリアがそう言って、一歩、オレの前に出た。否やはない。オレは別に戦闘狂じゃないからな。それに、マリアは強いし。海賊派のサロンとかでちょくちょく手合わせをしているから、よく知っている。相手も手にしているのは中位魔剣だ。もっとも、高位魔剣を持っていないからといって剣士として弱いとは限らない。だが、見た感じ、さっきの奴よりは弱そうだし、問題ないだろう。「ああ、よろしく」と返しておいた。


 ここで、オレはようやく周囲の様子を確認することができた。オレたちVS山賊の闘いはもうほぼ勝負がついていた。山賊どものほとんどが地に伏しており、立っている山賊はあと3人だけだった。その3人もエリックとリナとサラがそれぞれ相手をしている最中だ。パッと見の感想だが、問題はなさそうだった。……いや、サラは最後に勝ち急いでやらかす可能性はあるが。ちなみに、サラの相手も北派だった。


 マリアたちに目を戻すと、山賊は腕と細剣を一直線にしてまっすぐ前に伸ばすレニン流北派の構えを取っていた。まあ、やっぱりね、って感じだ。対するマリアは双剣術だ。左足が前に出た左半身の構えで、左手の短剣は晴眼にとり、右手の短剣は脇構えのように体の後方に流している。


 山賊がマリアの周りをゆっくりとしたステップで円を描くように回り始めた。セオリー通りならさっきオレが倒した奴と同様に左半身の構えのマリアの背を取る動きをするはずなんだが、コイツは逆方向にステップを踏んでいる。上から見ると、順時計回りの動きだ。さて……、何があるのか。


 マリアは相手を正面に置くようにスムーズに体の向きを調整していた。少しづつ両者の間合いが詰まっていく。山賊がマリアの周りを二周ほど回ったところで、細剣で短剣よりリーチの長い山賊の一挙手一剣足の間合いに入ったように見えた。だが、まだ山賊は仕掛けない。そこから山賊がさらに四歩ほどステップを踏んだときだった。山賊が急に逆方向にステップを切った。その動きにマリアが完全に逆を突かれ、背を取られた。山賊が踏み込んでいく。細剣がマリアのうなじに伸びていった。


 ちょ……っ。


 オレは、思わず、一歩足を前に踏み出した。そのとき、マリアの頭がフッと消えた。おっ、と思ったら、前屈をするように上体を折り曲げている。そして、同時に右脚が跳ね上がった。後ろ回し蹴りだ。山賊の細剣を持つ右手の小手にマリアの右ふくらはぎが当たる。その瞬間、さらにマリアは膝をグイっと曲げて、巻き下ろすようにして、山賊の右手をふくらはぎと裏腿で挟んだ。そして、そのまま山賊の右腕を下方に引っ張っていく。


 山賊は腕を抜こうとするそぶりを見せた。だが、細剣の柄を握る手が引っ掛かったようで腕は抜けなかった。当たり前だ。山賊が前につんのめるような形に態勢を崩した。蹴り足が地に着くと同時に、間髪入れずマリアの右の短剣が山賊に襲い掛かった。頭が下がっている山賊の右の首筋をザックリと斬り下げる。


 山賊は剣を持っていない左手で切り裂かれた右の首筋を抑え、上体を前に傾けたままヨロヨロと後退した。左の首筋なら即死に近いが、右なら少し長く苦しむことになる。そのことを山賊もわかっていたのだろうか。山賊は顔を上げると、口からゴボゴボと血を吐きながら、無造作と言っていいほどに正面から真っ直ぐにマリアとの距離を詰め、突きを放った。力のない突きだった。マリアは難無くそれを躱し、止めの一撃を山賊の左目に突き入れた。


 ふー……っ。


 一瞬、焦った。心臓に悪いわ。でも、多分、マリアは嵌めたな。山賊の逆を突くステップに反応できたけど、わざと反応しなかったんだと思う。あとで聞いてみよう。


 オレは、「お見事」とマリアに声をかけ、また周りを確認する。ちょうどサラが山賊の頭部に突きを決めたところだった。もう立っている山賊はいない。どうやら終わったようだ。


 さてと……。


 となるとだ。忘れないうちに、倒した山賊の高位魔剣を回収しとかなきゃな。オレはオレが倒した方の山賊の死体のところに行った。改めて、間近でじっくり高位魔剣を見てみた。


 めっちゃいい剣だ。


 コレは高く売れる……。ニヤつきがとまらないっす。でも、これ、触って大丈夫なんだっけ?確か……、主のいない高位魔剣は持ち歩くだけなら拒絶はされないんだったよな?恐る恐る、チョンっと剣身をつついてみた。問題なし。


 フム、とりあえず鞘には入れとかないとな。


 オレは高位魔剣を山賊の死体の手からもぎ取り、これまた死体の腰から抜いた鞘に仕舞う。念のため、鍔の部分にしか触れなかった。それでも、ちょっとドキドキしたけど、何も起きなかった。良かった。手が凍るとか火傷するとかシャレにならんからな。


 つーか、この剣の拒絶って、何系なんだろう?


 なんか青く光っていたし、冷凍系?色が関係するかどうか、知らんけど……。なんかうまいこと言って、あとでエリックで試してみなきゃな。そんなことを考えているオレのところにフランクが来た。


「なんとかなったな」


 オレがニヤつきを抑えつつそう言うと、「まだだ。早く行こう」とフランクが言ってきた。えらく険しい顔をしていた。まだ敵地だったわ。ゴメン、浮かれてた。オレはそう心の中で謝った。


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