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4-13

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は7月4日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。

 ビガが自分で己の左の首筋に短剣を押し当てながら、「もう何度も言っているが、とにかく、私たち二人の命の保証が欲しい。それさえしてくれるのであれば、首飾りをどこに隠したか教える」と落ち着いた声で言った。それに対して、山賊が、「だからこちらも何度も言っている通り、隠した場所を教えてくれれば、このまま貴方達には何もせずに引き揚げると約束しよう」と返した。


 いやいや、何の保証にもなっていないんだが……。


 しかも、「何もせずに引き揚げる」って噓くせぇにも程があるし、とオレは思いつつ、サラと共に背の高い草の中にしゃがんで身を隠している。もうだいぶ空は明るくなっているから、ビガたちがはっきり見えていた。


 山賊どもの包囲網の左翼に対する奇襲はまたしても成功したと言っていい。多分だけど、山賊どもはちょっと油断していたと思われる。まあ、自分たちが追跡していた相手はたった二人だったし、逆撃を喰らうとは思ってないわな。オレたち4人は合計で6人ほど狩って、南への道を切り開く事に成功した。ところがどっこいだ。フランクが「南はダメだ、西に行く」とか急に言い出して、何が何やらさっぱりわからん。「説明は後でするから、とにかく早く」とせかされてここまで来た。


 今いるここはコロー山の西側の中腹あたりだと思う。山頂の方から細い川がチョロチョロと流れてきていて、河原みたいになっていた。平らで少し開けたスペースだ。地面には石がそこかしこに転がっている。その河原にビガがいた。傍らには専属護衛の一人がいる。他の専属護衛たちはどうなったのか……、まぁ、言わずもがななんだろう。で、周りをグルっと山賊どもに囲まれていた。


 それにしても、ビガは流石としかいいようがない。こんな状況でとんでもない落ち着きだ。肚が座っている。なんで山賊どもはサッサとビガをとっ捕まえて、拷問にでもかけないのか?と思わないでもないが、ビガの気迫がそれを許さないんだろう。ここから見ていても、マジで自分の首を切り裂きそうな気迫が感じ取れる。ホント、交渉事は気合も大事だねぇ。つーか、あのジジィ、「首飾りが一番大事」とかって言ってなかったけか……?


 正直なところ、オレはこの状況を見て、「チャンスだ。スルーしてとっとと逃げよう」とフランクに言ったんだが、「後であの人数に追われるより、ここで不意を突いて後顧の憂いを断った方がいい」と言われた。そんなもんかね?まぁ、中の人をやっているときにはこんなシチュエーションになったことが無かったから、正解がオレにはサッパリわからん。


 数的には大分不利だ。ここから見えているだけで、山賊は23人いた。他にも隠れている奴がいないとは言い切れないし。しかも、乱戦になってしまうと、何が起こるかわからない。複数の敵と戦う場合は、常に敵を己の視界の中に置いておくのが鉄則となるが、これだけの人数との乱戦ではそんなことは不可能といっていい。中の人をやっているときにも何度か乱戦はあったが、あの妖剣野郎でさえ目まぐるしく現れる新手に周りを見る余裕なんてなさそうだった。オレがあっさり背中を刺されて不覚を取る可能性も十分にある。


 山賊どもの不意を突いた状態での初撃で、なんとか二人は殺りたい。オレだけじゃなくエリックたちも同じだ。もちろん二人目には気付かれるだろうが、ソイツの心身の準備が整わないうちに殺りたい。そしたら、相手は10人ちょっとになる。乱戦でこんがらがる事態は避けられる。あとは、あの専属護衛の生き残りも一人か二人くらいは引き付けてくれるだろうから、残りはオレたち一人につき二人殺れば、お釣りが出る計算だ。とはいえ、山賊どもの中には結構遣う奴らもいるんだよなぁ……。クソっ、大丈夫かな。「とにかく初撃が大事」と皆にはキッチリ言い聞かせて置いたが……。まあ、でも、ここまで来たらもうやるしかない。はぁ、初撃で何人殺れるか……。


 ところで、ビガたちは囲まれていると言ったが、別に山賊どもも隙間なく円陣を組んでいるわけじゃない。いくつかのグループに分かれて包囲をしている形だ。オレとサラはその中で一番人数の多い7人グループを担当することになった。5人が並んで立っていて、その前――ビガたちがいる方――で2人が地べたに胡坐をかいている。オレは立っている奴らのオレたちから見て右にいる3人とその前で座っている奴らの右の方を殺る。最初に片付けるのは立っている右から3人目だ。残りはサラで、左から2人目の奴を最初に狙う。そういう段取りだった。


 他は、マリアとリナが5人グループを、エリックとフランクが4人グループだ。他の山賊は1人とか2人でいるので後回し。腕前的には、オレとマリアとエリックにリナは大丈夫だと思う。だが、サラはちょっと不安かな。せっかちな性格が出て、勝負をヘンに急がなければいいが……。そんでもって、フランクは大分不安だ。なんか青い顔してたんだけど……。だからこそ、この組み分けにしている。サラとフランクの面倒をオレとエリックがみるってことだ。そして、「ヤバそうな奴がいたら、無理せず、オレを呼べ」と皆には言ってある。ちなみに、ビシャはちょっと離れた所に隠れている。


 まだかよ?


 ビガたちを囲んでいる山賊をさらに囲むようにして後方から襲撃をかけるために他の連中が移動中でオレたちは待機なんだけど、長過ぎない?何してんだよ?ちょっとオレが焦れてきたとき、ビガと交渉している山賊の代表みたいな奴に向かって石が投じられた。合図だ。山なりに投げたんだろう、上から降って来たみたいに見えた。ナイスアイデアだ。石は当たらなかったけど、山賊どもがそろって空を見上げた。


 オレとサラは草の中から猛然と走り出る。足音なんてどうでもいい。早さ勝負だ。オレは背を向けて偉そうに腕組みをしていた山賊の後頭部に細剣を突き入れる。ソイツはちょっとだけオレに反応したように見えたが、問題なく後頭部にヒット。横目にサラがオレが殺った山賊の左隣の奴に細剣を突き入れるのが見えた。


 もう一人くらいは楽をさせてくれ……。


 オレは動きを止めることなく、右隣の山賊に突きを繰り出す。慌てて振り向いた山賊のビックリした顔のちょうど人中にヒットした。だが、右側から右肩の辺りを短剣で斬り掛かられる。右端にいた奴だ。オレは剣を手元に戻す動作の軌道を少し変えて、ナックルガードでそれを受けると同時に左の前蹴りをソイツの下腹部にブチ込んだ。そして、くの字に体を曲げているその顔面に素早く突きを放つ。右頬の辺りに命中。手応えもあり。サッとバックステップして、晴眼に構え直す。胡坐かいて座っていた奴がいない。逃げたか。サラの方を見ると、二人は倒したようで、今、三人目とやり合っている。うん、まあ、とりあえずは大丈夫そうだな、と思ったとき、「デレク‼」と呼ぶ声が聞こえた。フランクだ。声の方を見ると、エリックが地面を転がって、ギリギリで山賊の突きを躱したところだった。


 クソっ、少し距離がある。


 オレは慌てて落ちている小石を拾って投げつけた。うまい具合に下に向けて突きを放とうとした山賊の顔の前を小石が通過してくれた。相手が大きくバックステップしてからオレを見た。その隙にエリックたちの方に駆け寄っていく。


 まったく、ヒヤヒヤさせんじゃねーよ……。


 相手はビガと交渉していた奴だった。右手には細剣。しかも、それはうっすらと青く光っていた。

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