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4-12

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は6月27日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。


 僕はマリアが見ていた方を見た。どこ?って感じでまったくわからない。キョロキョロしていると、デレクが「フランク、ソッチじゃねぇよ」とあらためて指し示してくれた。南の方だ。はじめはまったく見えなかったけど、必死に目をこらすと、何かの影がこっちの方に向かって動いてきているのが本当にかすかにだが見えた。


 ……ホントにマリアとデレクの夜目はとんでもないわ。


 驚きとか感心を通り越して呆れすら感じるが、今、大事なことはソレじゃない。問題はアレが山賊どもなのか?他の護衛たちなのか?あるいは、可能性はほとんどないけど無関係な迷子なのか?だ。


「誰か、わかるかい?」


 僕がデレクにそう聞くと、「いや、距離がありすぎて、流石に顔までははっきりわからん。恰好はハンターっぽいような気もするが……」と返ってきた。


 うーん……、山賊の恰好なんてハンターと一緒だよね、と思っていると、「ただ、二人組のうちの一人が後ろを気にしているそぶりを見せているような気がせんでもない」とデレクが付け加えた。


 なるほど……、他の護衛かもしれないな。もっとも、確証はないし、たとえ確証があったとしてもやることは変わらない。僕たちの仕事はビシャと首飾りを守ることだ。とりあえず、ボクたちは木の後ろなどに身を隠して、二人組をやり過ごした。二人組は西の方角に逃げて行ったようだ。


 「どうだった?」もう一度、デレクに聞くと、「あの雰囲気からして、多分、護衛の連中だろう」とのことだった。マリアの方を見ると、マリアも頷いている。


 さて、どうするか……?まぁ、とりあえず、二人組とは違う方向に逃げるべきだし、もともと南に行くつもりだったから、ちょうど良かったかな。僕がそう思ったとき、「おい、フランク。マズいことになりそうだぞ」とデレクが切迫した口調で言った。


「えっ?何?」


「まだ、遠いが、微かに人の動きが見える。それも複数だ。今の二人組の追手どもだろう」


「……」


「ヤベェな。半包囲……いや、空いてんのが西だけの四分の三包囲くらいの形で囲まれつつある」


 嘘でしょ。それじゃあ、このまま南に逃げるのは無理じゃないか。誰の護衛だったのか知らないけど、余計なことを……。いや、そんなことを言ってる場合じゃない。考えろ。考えるんだ。


 囲まれてしまう前に逃げるべきだけど……、この包囲網、わざと穴を開けていて、誘導している可能性もある。どうする?


「山賊どもは僕たちに気付いているかな?」


「……あの感じからすると、まだオレたちに気付いていないように思えるが……、わからん」


 デレクがそう言いつつ、周囲を見まわす。そして、すぐに付け加えた。


「ただ、どんどん人数が増えつつあるぞ。ザッと見た感じでも、結構いる。クソっ、30人ってとこか」


 ええぇ……。どれだけ大きな山賊団なんだよ。勘弁してよ、もう。でも、早急になんとかしないと詰む。デレクをはじめエリックたちもかなり遣うとはいえ、殺し合いで数の差は絶対的な効果を持っている。しかも、護衛対象を守りながらだ。おまけに、木が生繁っている山での戦い。おいそれと斬撃は使えない。長剣は少し不利だ。とはいえ、僕たちシンシャ流は無手でも闘えるけど……。


「フランク、どうすんだ?」


 デレクがさっきよりもさらに切迫した様子で聞いてきた。正直なところ、僕はもういっぱいいっぱいで、頭の中が白みがかってきている。さっきデレクには、さもあらかじめ考えていた策に嵌めたみたいな言い回しをしてしまったけど、実際のところは、そういうのもゼロではない、ゼロではないんだが、本当にちょっとだけそうなればいいなとしか思っていなかった。そうだ、話を盛っちゃったんだ。僕の戦術なんてしょせん机上のお勉強でしかないのに……。デレクのほうがよっぽど落ち着いているから、デレクが指示した方がいいんじゃ……。でも、なんでか知らないけど、昔からデレクは僕のことを信頼してくれている。はぁ、今はその信頼が重過ぎる。いや、弱音を吐いている場合じゃない。落ち着くんだ。僕は深呼吸をした。逃げれないとなると……、もう奇襲するしかない。


 3組に分かれることにした。ボクとリナはビシャの守り。あとの4人はデレクとエリック、マリアとサラの組み合わせの二人一組で山賊どもの左翼、方角的には南にいる連中を狩ってもらって、そこから南に抜けることにする。


 僕がそう指示をすると、デレクたちはすぐに行った。残った僕たち三人は背の高い草木の中に身を隠す。


 それにしても……、南からか、と思った。あの二人組、そして、その追手もだ。……なんだろう?何かが引っ掛かる。南……、関所……。……まさか。


 ずっと喉ならぬ頭に小骨が刺さったかのような違和感があった。そもそも、なんで山賊ども……しかも、例の噂の山賊どもと思われる連中が襲ってきたのか?だ。どうやって、ボクたちのことがわかったんだ?急に決まった商談だ。それに、道中でも宿屋をはじめリアフタ商会の名は出さなかったし、旅の目的だって親戚のお見舞いと言ってきた。


 今の今まで、護衛の数がさすがに多かったんだろう、となんとなくただ漠然とそう思っていた。27人もの護衛を連れていれば、それなりのお金持ちだとはバレバレのはずだ。まぁ、それはビガも織り込み済みだった。金持ちだとバレるリスクと身の安全のバランスだ。ともあれ、金目のモノを持っている、と思われても仕方のないところはあった。でも、そうじゃなかったとしたら?これだけの人数をかけた、しかも、何時間にもわたる執拗な襲撃をしてきているんだ。山賊どもには僕たちがかなりのお宝を持っているとの確信があったとしたら?


 ……あの関所。あそこでは正直にリアフタ商会の名を出した、というか、出さざるを得ない。今時の関所なんて、ただの領主の見栄だのなんだのと言われているが、れっきとした公的な機関であるのは間違いない。虚偽の申告をして、後々それがバレれば、どんなペナルティーを喰らうかわからない。あまり無茶はできないとはいえ、領主には領地における自治権があるからね。


 そして、リアフタ商会の名は王国中に通っている。加えて、おざなりとはいえ所持品検査もされた。あの二つの首飾りも見られた。「一応、何かのときのために、いつも持ち歩いている見本程度の品だと言っておいた」とビガは言っていたが……、おそらく見る人が見ればわかるはずだ。


 それに、この襲撃のやり方。あまりにも組織的で規律が高い、いや、高すぎるとさえいえる。それなりの頻度で訓練をしていないとできない動きだ。……そう、騎士団のように。騎士団の一部だけなのか?領ぐるみなのか?さすがに考えすぎか?……いや、考えるのがボクの仕事だ。それも、最悪の状況を想定するべきだ。とすると……。


 マズい。あの関所のある南には行けない。それに、騎士団が関わっているとすると、ゼワリン領の中心に近付くことになる東と北も無理か。西に行くしかない。あ、いや、ここに隠れ……、ダメだ。二人組を追って西に行った連中が帰ってきたら危険になる。


……となると、追って行った連中が二人組に夢中になっているその背後を不意打ちするのがベストだ。誘導の可能性はあるし、単純に我彼の人数差からいって、分の悪い賭けかもしれないけど……、そのままボーメン領に抜けるしかない。ただ、そのためには、デレクたちができるだけ早く敵左翼を殲滅して、戻って来てくれないといけない。あまり遅いと、二人組を仕留め終わった山賊と真正面からヤリ合う羽目になる。……そもそも、デレクたちが必ず無事に戻ってくる保証すらないけど。


あまりの焦燥感で、頭が焼けているのかと思うほど熱くなってきた。


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