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4-11

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新は6月20日(土曜日)21時台の予定となります。


今後ともよろしくお願いします。

 オレとマリアはリナ達と合流した。


「どうしたの?山賊の追手は?」


 フランクが小さな声の早口でオレにそう聞いてきた。


 ドえらい真剣な顔だったんで、ちょっと笑いそうになった。まあ、わからんでもないか。そりゃあ、急に殿兼遊撃を任していたはずのオレたちが来たんだから、「何が起こったのか?」と内心ドキドキもするだろう。


「いや、追手はいたけど、狩り尽くしたと思う。なんか不意打ちの形になってな。楽な仕事だったよ」


「……ふーん。何人いたの?」


「12人だ」


 オレが小声でそう応えると、エリックとサラが同時に目を剝いて、揃って不満気に何か言いかけてやめた。


 コイツら……。どうせ、「お前らだけズルいぞ」的なことを言おうとしたに違いない。流石にすんでのところで空気が読めたんだろうよ。まったく。どんだけ、殺し合いがしたいのか。野蛮な連中だ。


「不意打ちか……。そうなればいいなとは思っていたけど、ホントになるとはね」


 フランクがなんでもないような感じでそう言った。ちょっとビックリした。


「おいおい、ハナからここまで読んでたのかよ?」


「いやいや、完全に読んでいたわけじゃないよ。ただ、山賊どもも一塊では追って来ないと思ってさ。もしかしたらっていう、あくまで願望としてね」


 はー、これだから頭の良い奴を連れて来といて正解だよな。なるほどね。自分たちを囮役にしてたってわけか。エリックとかサラとはひと味もふた味も違うわ。


「で、これからどうすんだよ?」


 エリックが聞いてきた。


「うーん……、どうしようかな。歩いた距離に時間と……星の位置からして、多分、今はコロー山の南側にいると思うんだけど……」


 フランクがそう言いつつ、星を見た。それにつられて、オレも空を見上げる。山林の隙間から、ほんのりとだが空が白みがかってきているのがわかった。月がだいぶ傾いている。


 そろそろ夜明けか……。朝の4時?5時?多分、そんくらいだろう。とはいえ、山林の真っただ中だ。今はまだかなりの暗闇だ。まあ、微妙な時間だな。これから本格的に明るくなれば、山賊どもが諦める可能性は十分にある。他の旅人やなにより巡回中の騎士団に気付かれるリスクが高まるからな。だけど、視界が良くなれば逆に逃げているオレたちを見つけやすくもなる。山賊どもにとっては好機ともいえる。地の利は間違いなくアッチにあるしね。まぁ、さすがに昼くらいになれば大丈夫だと思うが……。それまでどうするか?一所にジッと身を潜めて隠れるか?……いや、それは危険か。隠れやすそうな地形の場所は山賊どもも知り尽くしているはずだ。それなら、移動し続ける方がいいか?移動するにしても、どの方向に行くのか?フランクを見ると、顎に手を当てて考え中だ。


 それにしても、それなりに長い距離を移動したように感じていたが、まだ、コロー山か。まぁ、真っ暗な山中だし、追手もいたし、こんなもんなのかな。


 ところで、王都から北に行く主要な街道はいくつかあるが、その一つがオレたちが来た道で、王都からゼワリン領を縦断してさらに北につながるものだ。ゼワリン領は盆地になっていて、かなり高い山々に囲まれている。にもかかわらずと言っていいのか、交通の要衝だったりする。というのも、周りにある領には河川やら魔宮やらがあるため、結局、ゼワリン領を突っ切るのが最も安全で距離も短くなるためだ。で、オレたちが接敵したのは盆地を囲む山々のうち最も南側にあるヤマー山――コロー山の東隣にある――の北側だった。


「南に……関所の方に戻るかい?さすがに関所から見えるようなところに山賊はいないと思うけど。それとも、西に周ってボーメン領に出るかだね」


 フランクがオレたちを見回した。関所はヤマー山の南側にあった。ちなみに、ボーメン領はコロー山の西側を降りて行った先にある領地だ。


 ふむ、東や北に行くのは危険か……。確かに、襲われたのがここから東隣のヤマー山の北側だったから、山賊どもの目につく可能性は高いわな。となると……、西か南か。で、南の関所ねぇ。そういや、そんなもんが山越えの前にあったな。うーん、でも、あんな関所で山賊がビビるかね、とオレは思った。


 ゼワリン領には今時には珍しく関所が置いてあった。小っさい領なのにご苦労なことだ。領主が余程に見栄っ張りなんだろうか。不思議だ。いや、本当に珍しいんだ。オレは中の人としてそれなりに旅をしたけど、王国内で関所なんか見た記憶がなかったくらいだ。


 古より、他国との国境はもとより、一つの同じ国の中でも他領との領境には必ず関所が置かれるのが常だった。設置目的は通行料の徴取と不審人物のチェックだった。とはいえ、不審人物のチェックっていうのは名目上のモノだったそうだ。そりゃそうだろう、そもそも不審人物はわざわざ関所を通らない。それに、国境や領境をマルッと壁で囲んでるわけじゃないから、ちょっと街道を外れれば、どっからでも国内や領内に入れる。というわけで、実際のところ、設置目的は通行料オンリーってことだった。ただ、ウチの王国では法律により領境で通行料を徴取するのは禁じられている。確か、主に商人の往来をしやすくすることで、経済を振興させるとかって話を前の人生で習った記憶があるようなないような。詳しくは知らん。もっとも、一昔前までは伝統というか見栄というか、そういうものがあって、領境に関所を置いている王国貴族はそれなりにいたそうだ。アレだ、領主屋敷の無駄に大きくて立派な正門みたいなもんだろう。そして、関所には騎士団の小隊の一つくらいは配備していた。豪華だけど実戦ではクソの役にも立たない鎧を着て無駄に長い槍を持ってる門番ってわけだ。けど、ぶっちゃけ、経費が嵩むだけでムダでしかない。なぜなら、今の王国の関所は「どっから来たのか?」とか「目的は?」とかを軽く口頭で聞くだけのお仕事だからだ。それゆえ、だんだんと、関所を置いていても、そこにいる騎士は5人とか3人とかになっていって、結局は廃止するって流れになったはずだ。現にここの関所もしょぼくれた爺さんとひょろい兄ちゃんの二人しかいなかった。アレらが山賊との戦闘のタシになるとは思えないし、そもそも、山賊どもがあの関所を怖れているとも思えない。


オレが自分の考えを言おうとすると、リナが先に口を開いた。リナもオレと同意見のようだった。


「あそこの関所のやる気のない感じは山賊も知っているはずよ。関所があるからって安全とは言えないわ」


「でも、関所には緊急連絡用の狼煙くらいはあるはずだよ。仮に関所の近くで襲われたとしても、すぐに救援が来る。そして、それは山賊もわかっていると思うから、深追いはしてこないんじゃないかな」


おお、さすがフランク。狼煙のことは言われて初めて気がついたわ。


なおも、フランクが続ける。


「それにボーメン領に入ったとしてもすぐに川があったはずだ。万が一にも山賊につけられていたら苦しいことになる」


確かに、川と山賊の挟み撃ちは嫌過ぎるな。てゆうか、川なんてあんのか。知らんかった。


チラッと他の連中に目をやると、マリアは周囲を警戒している。まぁ、マリアは相変わらずオレたちに遠慮して自分の意見を言わないからしょうがないか。だが、エリックとサラが我関せず、完全に他人事みたいなのは、なぜだ?エリックは耳クソほじって、その指をしげしげと見つめているし。サラは無手で突きの素振りをしているんだが。コイツらだけはホントに……。ここまでくると、いっそ清々しい感じさえする。


すると、商家の手代みたいな格好しているビシャがおずおずと言った。


「あの、おじい様を探すのは……?」


「無理だな」


オレとフランクが同時に応えた。


ビシャもわかってはいたんだろう、それ以上言い募るようなことはしなかった。ただし、唇をギュッと噛み締めていたが……。


そのとき、マリアが緊迫した声で囁いた。


「二人組が接近中です」


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