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いつもお読みいただきありがとうございます。


第3章はここまでとなります。


第4章からは諸般の事情(主にストック的な問題と怠惰な心)により、週1回土曜日21時台の更新となります。


次回更新は4月11日(土曜日)21時台の予定です。


今後も読みに来てくださると嬉しいです。何卒よろしくお願いします。


 御不浄決闘から3日経った。


 今日はスー家王都屋敷でオレのちょっとした祝勝会がある。スー家とロウ家がスポンサーだ。両家はわざわざ御祝儀まで送ってきてくれた。義理堅いことだ。


 で、祝勝会のメンツはオレと一緒に学園に入学する子供たちだけだ。ストロウライトとは同じ王党派で、今後のことを考えると、あんまり派手にやるのはっていう父上の意向が働いたからだ。いや、もうストロウライトとは関係修復はできないと思うけど、王党派の他家の印象があるので、一応ね。


 そういうわけで、出席者はリナやエリックをはじめとした海賊派の見知った連中とマリアと他のジュライフィールドの家中の子だけのはずだったが、なぜかサラもいた。


 いや、「なぜか」というのは語弊がある。誘ったのはオレだ。サラには今回ホントに世話になった。マクガバン先生を紹介して貰えてなかったらと思うと、ゾッとする。他流派への挨拶から決闘会場の手筈まで先生に全部丸投げしたからね。父上も「御不浄決闘の細かなところまでは私もわからなかったので助かった」と言っていた。なので、「一応礼儀としてお誘いはしとけ」とのことだったから、誘ったら来た。まさか来るとは思わなかった。パーカー家も王党派なのに、余計な波風立てないほうが……。


 そんなサラはもう既に海賊派の連中と馴染んでいた。さっきから絶好調だ。今も、「あのペーター・アビニョン殿は実に見事な剣士でした。特にあの最期の潔さは感服した」とかフランク相手に熱弁している。


 ちなみにいうと、決闘は無観客で行われた。これはマクガバン先生がまだ若くしかも決闘が初めてのオレに配慮してくれたからだ。普通、決闘は一大イベントとして平民も見に来るような見世物になる。屋台や賭け屋まで出ることもあるくらいだ。で、リナ達は決闘を見れなかった。サラは世話役の一人として見ていたから、得意気に決闘の様子を語り散らかしているというわけだ。


 さて、今日までの3日の間にいろいろとあった。


 まず、各方面への挨拶や祝儀への返礼にはうんざりした。オレはニ度と決闘はしないと心に誓った。


 次に、何といっても大きな出来事は、ペーター・アビニョンの妻子だ。父上がストロウライトと話をつけてくれたのだが、結果、妻子をジュライフィールドで引き取ることになった。オレも対面することになったが、困った。どんな顔をしろというのか。決闘の場でもどうしても二人を見る気になれず見なかったくらいなのに……。地獄だったわ。


 ちなみに、そこで判明したことだが、ペーターとストロウライトの間の報酬の契約は勝敗に関係なくストロウライト領の二つの村の全ての権限を100年間貸与するというものだった。いや、デカいよ。期間限定とはいえ、王家から正騎士爵の爵位と領地を賜るのと同じことだ。しかも、毎年の上納金ナシでね。


 とはいえ、ペーターもなかなかの選択をしたとは思う。どうやら、あれ程の腕前だったが、帝国からの流れ者ということで仕官がうまく行かなかったそうだ。それに、自分の剣に自信もあったに違いないし、あの最期を見ると思い切りの良い性格だったんだろう。奥さんは反対したらしいけど……。


 もちろん、ペーターとストロウライト間の契約書もあった。ジュライフィールドが領地をきっちり管理して、利益を妻子に渡すことになった。今後、妻子はウチの領内で暮らすことになる。


 ただ、妻子に関しては一つ重大な問題が発生した。高位魔剣のことだ。御不浄決闘の後、オレの許にペーターの高位魔剣が来た。誰はばかることのない当然の権利だ。決闘や戦場での一騎打ちで勝った剣士は相手の剣を奪う事が出来るというのが古来からの慣習だからだ。


 ところが、ペーターの葬儀――ウチが手配して、決闘翌日に行われた――の後、ペーターの同門の友人とかいうのが諸々のお礼を言いに来た。なんか知らんけど、途中でそこにオレも呼ばれた。おまけに形見となってしまっている高位魔剣も持って来いとのことだった。とてつもなく嫌な予感がしたが、行かざるを得ない。


 嫌々行くと、ペーターの妻子もいた。すると、高位魔剣を前にして、ペーターの子供――まだ8歳の娘――がどうも剣才があるらしく、娘がペーターから一本取れるようになったら高位魔剣を譲るとペーターが言っていたとかいうエピソードを聞かされた。オレは別に「へぇ、そうなんだ。つーか、高位魔剣を抜けるかどうかわからんぞ」としか思わなかった。だが、父上が「どうだ?物凄くいい話だろ」みたいな雰囲気を醸し出してきた。「父を追い越した娘がその愛剣を受け継ぐか、うむ」とか言い出す始末だ。そして、「えっ?いやいや、父上チョロ過ぎない」と思っているオレに、「お前、分かってんな」みたいな眼を向けてきた。……オレは負けた。父上に高位魔剣を預けるハメになった。


 クソっ、200年は遊んで暮らせる金になるのに……。いつか毅然として「ノー」と言える漢になりたい。


 そして、もう一つ大きな出来事があった。……いや、あるはずだったのに、なかったというべきか。昨日、母上が戦地から帰ってきた。


 まぁ、オレは前の人生で少なくともオレが学園を退学になる頃までは母上が元気にピンピンしてるのを知っていたから、何の心配もしていなかった。だから、お出迎えのときは、とにかくただ緊張しまくっていた。個人的には35年振りくらいの母子の再会だ。


 母上はまず父上のところに歩み寄り、ガシっとハグをしたかと思うと、ブッチューと永遠にも思える時間のキスをした。……こんなんだったけ?いや、仲が良いのは覚えているけど。オレが少し動揺しつつチラッと兄上を見ると、兄上は無になっていた。


 母上は次に兄上のところに行った。「ご無事で何よりです」と言う兄上に、母上は「ただいま」と笑顔で返し、軽くハグをした。それで終わりだった。ギャップがエグい。ま、まぁ、兄上とはもう2年も一緒に暮らしてるからね。


 最後に、母上がオレのところに来た。


「ご無事の御帰還、祝着至極に存じます」


 オレが何度も練習したセリフを言うと、母上は「プッ」と吹き出し、「どうした?畏まって」と言った。そして、ハグをし、「ほれっ」とオレの頬にキスをすると、肩をポンっと叩いてから、父上と腕を組んで去って行った。


 ……え?終わり?


 いやいや、母上にしてもオレと会うのは6、7年ぶりじゃね?えっ?感動の再会は?あれっ?王国貴族の親子関係ってこんな感じだったけ?はあ?オレの緊張は?物凄くすっきりしない。だが、こうして母子の再会は終わった。オレに大量の残尿感を残したまま……。


 ちなみに、今朝も普通に「おはよう、デレク」と母上に挨拶された。お肌がやけにピカピカだった。


 オレがリナと楽しくおしゃべりしていると、サラとエリックが連れ立ってやってきた。


「おう、デレク。聞いたぞ。危なかったらしいな」


 エリックがそう言ってきた。


「ああ、相手が強くてな。ギリギリの勝負だったよ」


「おお、そりゃ、オウバル流の切紙持ちで、高位魔剣も持ってるくらいだからな。……で、お前、なんか変な技を使ったそうじゃねーか?何したんだよ?」


 エリックの横にいるサラも興味津々だ。


「……何もしてねーよ」


 言えるわけねぇだろ、バカ。


「またまたぁ。ここだけの話にしてやるから、言えよ」


 なんで上から言ってきてんだ、このバカ。つーか、空気読めよ。


「だから、何もしてねぇって言ってんだろ。普通に受けただけだって」


 オレがそう言うと、エリックがニヤリと笑った。


「ほぉー、俺は受け技だなんて一言も言ってねぇけどな」


「……」


「ほら、早く正直に言えよ」


 大乱闘が始まる5秒前だった。


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