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3-12

 んんん?……いやいや、空耳……だよな?うん、そうだ。ハハハ、まさか……ねぇ?えっ?


 オレがちょっとしたパニックに陥っていると、横から物凄く強い視線を感じた。できればソッチを見たくなかったけど、見なければいけないような気がして、一応見てみた。


 サラが瞳孔フルオープンのガンギマリの目でオレを見ていた。中の人をやっているときに、ヤク中がこんな目で誰もいない空間に向かって、「来いよ、殺ってやんよ」とか叫んでいるのを見たことがある。……空耳ではなかったようだ。


 オレがスードに目をやると、スードはまだニヤニヤしていた。


 ……コイツ、マジか?


 わかってねぇのか?生き死にの話だぞ。えっ?御不浄決闘を知らない貴族なんていんのかよ?いや、落ち着け、オレ。今はそんなことはどうでもいい。何とか丸く収めるんだ。さすがにこんなしょうもないことでガチの殺し合いなんかしたくない。まだイケる。オレならできる。大丈夫だ。考えろ。オレはそう自分に言い聞かせた。


 このブタは間違いなくオレが気に喰わないんだろう。そして、この年頃のガキって変にプライドが高い。しかも、大貴族のボンボンだ。ヘタな言い方をすると、逆ギレされる。とはいえだ、オレも切紙持ちという立場上あまり譲歩はできない。おまけにサラもいるし。何とかマイルドに道理を説くんだ。クソっ、切紙なんか貰うんじゃなかった。


 オレはできるだけ落ち着いた眼でスードを見た。


「双子派スーザン流の剣士として、聞き捨てにできない言葉が聞こえた。だが、君はまだ成人前の子供だ。過ちを犯すこともあるだろう。それに、ここは私的な場といってよく、気が大きくなったとも考えられる。先程の言葉を取り消して謝罪すれば、聞かなかったことにしよう。如何かな?」


「ハッ、何が如何かな?だ。取り消すわけねーだろ」


 スードが二ヤつきながら即答しやがった。


 ……終わった。


 ここまで言われて見逃したら、オレが婆さんに殺される。マジか?コイツ。えっ?オレが悪いの?つーか、このブタ、なんでこんなに緊張感がないんだ?ホントに御不浄決闘を知らねぇのか?はあ?そんなことあんのか?なんでこんなことに……。オレは内心で愚痴りつつも、こういう時の手順を思い出しながら立ち上がった。


「そうか、残念だ。スード・ストロウライト、貴様に決闘を申し込む。これは御不浄決闘だ。逃げること能わぬと知れ」


 なんでか知らんが、スードはまだニヤニヤしている。信じられん。オレはサラに目をやり、言った。


「サラ殿、例の言葉と決闘申込みの証人になって頂きたいのだが?」


「もちろんです。喜んで」


 「ちょっとお待ちになって」とそこで王女が慌てた様子で入ってきた。


「皆さん子供の頃からのお友達ではないですか。ちょっとした言葉の綾で決闘など。ほら、スードさんも謝りなさい」


コイツもわかってねぇな。魔術師ってこんなのばっかなのか?


「ほう、ちょっとした言葉の綾ねぇ。それが王家の御考えですか?」


 オレがそう聞くのに、「ええ、そうで」とまで王女が言ったところで、「殿下、それ以上は」とエドが止めに入った。必死の形相だ。王女は「えっ?えっ?」と混乱している。


 他の連中の様子もチラッと確認すると、ジョナサンは床を見つめたままで、スードはようやくニヤニヤを引っ込め困惑した顔になっていた。


「後刻、正式に使者を差し向ける」


 オレはスードにそう言い置いて、部屋を出た。


 マリアは当然だけど、サラもついて来た。なんでだよ?


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