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3-11

 お茶を飲みながら、軽い自己紹介から始まり、時候の話やらオレにとっては40年近く前のことで懐かしいを通り越して覚えていない思い出話なんかをされた。オレは「これから、よろしく」とちょっと挨拶に来ただけだ。だから、適当に相槌を打つだけで、話題を振ることはしない。はぁ、早く終わんねぇかな。


 もっとも、相変わらずなかなかの破壊力だな、とは思っていた。王女の表情や仕草にだ。第三王女エリザベス・セプトリンドバーグは少し垂れ目の丸顔で、小柄だが出るべきところは物凄く出ている。そして、少し上目遣いでじっと目を見詰めてきて、笑顔を絶やさない。今は机を挟んでいるから、そうでもないが、距離感も近い人だった。ぶっちゃけ、えげつないほど男受けがいい。オレもリナがいなかったら、うっかりもう一度騙されたかもしれんというレベルだ。


 オレがそんなことを考えていると、なんとなくそろそろ解散かな、という空気が出てきた。よっしゃ、と思ったら、王女が言った。


「あら、大事な話を忘れていましたわ。デレクさん、私の班に入って頂けませんか?」


 忘れとけよ……。まぁ、この話題は出なければいいな、と思ってはいたが、覚悟はしていたことだ。オレはさも意外なことを聞いた風を装いつつ、さらに困ったなぁというテイストをつけ、答えた。


「それは……、大変申し訳ありません。……実は、もう既に他の班のメンバーになっておりまして」


 「えっ?」って王女が目を見開いて驚いている。ざまぁ。まあ、断られるとは思わないわな。気持ちいい。


 すると、後ろに控えている小太りのスードが急に大声を出した。


「無礼な。王女殿下のお誘いであるぞ」


 「だから何だよ」と心の中で応え、オレは何も言わずに王女を見ていた。王女はあまりに予想外だったのか、真顔で何か思案している。スードからの視線を感じるが、それは無視した。オレは学習する男だ。昨日の今日で、これ以上、余計な恨みを買うつもりはない。


 もっとも、前の人生でスードはオレやジョナサンら武官系の学生をやたら敵視というか小馬鹿にしていた。というか、そもそも魔術師は剣士をなぜか軽視しているところがある。今となっては、剣士はソロで大型魔獣を討伐できる一方で、魔術師はオレたち剣士の援護がないと何もできないくせに、アホなのかと思う。どうも魔術師どもは魔剣革命以前の自分たちが大型魔獣討伐で勝敗を決する大きなダメージを与える役割を担ってきたという過去の栄光にいまだに縋り付いているらしい。時代遅れのマヌケどもだ。そして、スードはその典型例の一人だった。


 「今から断って来い」とか兄上みたいなことを小太りがまだ喚いているが、オレはガン無視だ。我慢、我慢。味方にはならなくとも、完全に敵にまわす必要はない。


「そ、そうですか……。それでその……、どなたの班なんですの?」


 ようやく再起動した王女がそう聞いてきた。オレが「リナ・ロウたちです」と素直に答えると、小太りが「はあ?あの薄汚い海賊どもとだと」と叫んだ。


 ……このブタ、殺していいよな?


 だが、王女がいる手前、今ここで挽肉にするわけにもいかない。オレは優しく言い聞かせてやった。


「おいおい、さっきからうるさいぞ、子ブタのスード君。オレは今、王女殿下と大事な話をしてるんだ。あまりブーブー喚かないでくれるかな。とゆうか、ブタは豚小屋にでも帰っていなさい」


 オレがシッシッと手を振ると、スードの顔が真っ赤になった。


「ほぉー、ずいぶん強気じゃないか、デレク。子供の頃、パーティーでジョナサンにピーピー泣かされていた奴とは思えないな」


 そして、スードはニヤニヤしながらジョナサンを見た。ジョナサンは相変わらず床を見つめている。それを見てスードはちょっと戸惑ったようだが、続けて言った。


「おお、そういえば、不浄の剣の腕がいいとかいう噂を聞いたことがあるな。なるほど、なるほど。それで調子に乗っているんだな」


 ……んっ?


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