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3-9

 さて、ここで派閥の話をしておかないといけないだろう。


 かつて王国の貴族は譜代と外様に分けられていた。これを分ける基準は王家に臣従したのがパルネーの戦い――大陸南部の覇権を賭け二大勢力がぶつかった戦のこと――以前か以後かだ。勢力としては譜代7外様3だった。


 そして、大陸統一なんていう傍迷惑な目標を掲げるクソ帝国とぶつかりながらも我が王国はなんだかんだやって来たわけだ。だが、4代国王のときに王国崩壊の最大の危機であり、今も続く王党派と大公派の確執の契機となる出来事があった。まぁ、よくあることだが、跡目の話だ。


 この4代国王は武も政も平凡だった。しかし、人柄はよく、人の話をちゃんと聞く人で、大過なくやっていた。ところが、一つだけ問題があった。子がいないことだ。そこで、国王は大公家の次子を養子にとった。このことは、王国中が納得するものだった。なぜなら、王位を継承できる血を持つ者の中でその子が最も優秀だと言われていたからだ。


 初代大公は建国女王の弟であり、建国の最大の功労者とも言われた人だ。大公家と王家はその後の婚姻関係もあって、かなり近しい関係だった。建国以来、両家は仲が良く、国王にとって王太子となった子は何度も会ったことのある親戚の子だ。


 国王はもとより王妃と王太子も何の問題もなくやっていた。しかし、王太子が16歳になり、そろそろ王位継承かと言われていたころ、王の側室が子を産んだ。国王は58歳だった。当然、この子には疑惑の目が注がれた。とはいえ、親子関係を証明する術は当時も今もない。ありとあらゆる調査が、各方面からなされたが、側室が国王以外と接触した形跡はない。国王は狂気乱舞したと伝えられている。ただし、国王はその子を溺愛したものの、王太子との関係は変わりなくうまくやっていた。


 ところが、子が生まれ2年程経った頃、王城の私室で王太子が就寝中に暗殺されるというあってはならない大事件が起こる。朝、部屋の外から何度声をかけても起きてこないので、近衛が施錠されていたドアを破壊して中に突入し、王太子の死亡が確認された。死因は紐状のもので首を絞められたことによる窒息死だった。その後の調査で本棚が動かされた形跡があり、調べると、隠し通路がでてきた。これを使って、部屋に侵入したと思われるが、問題はなぜ暗殺者がそれを知っていたのか?だ。それは間違いなく秘中の秘であり、王と王太子とあとはせいぜい王妃が知っているかどうかというレベルのものだった。暗殺者の行方はもとより通路の存在を知っていた者すら見つけられないなか、実子の存在もあり、国王に疑いの目が注がれ始める。そして、当然のごとく、大公家への同情や王への批判、あるいは証拠もなく王を疑うことへの疑問など様々な声が噴出し、国内は荒れ始めた。


 それから半年後のことだ。突如、王が「大公に謀反の疑いあり。ただ長年の忠義を鑑み、申し開きがあるなら聞こう。直ちに王城に出頭せよ」と勅令を出した。周囲への相談はなく王の独断だった。これに対し、大公は「謀反の疑いがあるなら、どうぞ我が城まで来て調べるがよろしかろう」とこれを無視、そして、「北の帝国に不穏な動きあり」として、兵を集め始めた。これを聞いた王は激怒し、「逆賊を討つ」とこちらも兵を招集し始める。


 ところで、まさにこの時期のことだが、実は王国の歴史書には詳しい記述はない。国内各地で小競り合いが起き、王城で刃傷沙汰がいくつかあったことと幾人もの心ある貴族たちが走り回りこの危機を回避したことだけが実にあっさりと書かれているだけだ。でも、逆にその簡潔な記述と今も続く確執から、かなり激しい政争、いや、それどころか実際には戦すらも起こったかもと思わせられる。ともあれ、結果、4代国王は退位させられ蟄居、5代国王には臣籍に下っていた王妹を就かせるという離れ業が行われた。


 そして、このときから、国内のパワーバランスが変わった。勢力としては王党派3大公派4中立派3だ。ざっくり言うと、王党派は「王家を支えていこう」という立場、大公派は「もう王家は信用ならん、大公こそ王にふさわしい」っていう立場、中立派は「とりあえず王国さえあれば、誰が王でもいいよ」という立場だ。で、王党派と大公派の争いは結構激しい。なんせ、大公派は「あんな王家なんか要る?」って公言しているレベルだ。王国が辛うじて現状を維持し何とかやっていけているのは、皮肉にも帝国の存在があるからだった。なんせ、王家もそうだが大公家も不俱戴天の仇認定を帝国からされているから、両家とも国を割るのはちょっと……てなもんだ。


 オレは自室のベッドに寝転がりながら、さっきの父上の態度を考えていた。どう考えても、派閥にこだわってないみたいな感じだった。オレが次子だからか?いや、そんな風ではなかったと思う。王党派に何か不満があるのか?それはわからんとしか言えない。


 前の人生ではどうだったんだろう?……正直、わからない。ウチはゴリゴリの王党派だと頭から信じ込んでいた。うーん。まぁ、海賊派は中立派であって大公派ではないからかもしれない。


 ……まっ、いいか。


 結果良ければすべてよしだ。これで堂々と王女に断りを入れられることになったわけだ。明日、挨拶に行くのが少しだけ気楽になった。


 それに、そんなことよりも、今は剣気だ。さっきのでちょっとわかった気がするんだ。その後、剣気をいじくりまわしていたら、オレは寝落ちした。


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