3-8
オレはルンルン気分で帰宅した。いろいろあったが、結果として素晴らしい一日となった。あのあと、リナとディナーも食ってきた。超おいしかった。
さて、あとは父上に必要最小限の帰宅の挨拶を済ませ、速攻で自分の部屋に行きたい。挨拶や班のこととか諸々はまた今度だ。今日はこの浮かれた気分のままベットに入りたかった。
出迎えの使用人に父上の居場所を聞くと、食堂にいるらしい。遅い夕食だ。仕事があったのかな?とりあえず、食堂に行くと、兄上も一緒にいた。クソっ。
兄上がめっちゃ険しい顔でオレを睨んでいる。ああ、嫌な予感がするわ。何か兄上が言いかけたのを制し、父上が言った。
「随分遅かったではないか。食事は?」
「はっ、済ましてきました」
「ほう、……一人でか?」
「いえ、友人とです」
これに父上がやけに食いついてきた。
「どちらのお家の方か?」
「リナ・ロウです」
「ほほう、どこの店に行ったんだ?」
「魔獣肉のロックスです」
「……ふむ、知らんな。うまいのか?」などといったやり取りをしていると、兄上が焦れたように「父上」と言った。
すると、「うむ」と父上は少し居住いを直した。
「第三王女殿下に挨拶に伺ったのか?」
「……いえ、今日は知り合いに呼び止められたりして、時間がなくて」
ダメだ。浮かれ過ぎて、まだ言い訳を考えていない。この計画性のなさよ……。つーか、バレてんのか?マリアか?……まぁ、しょうがねーか。詰められたら、答えるしかないわな。んっ?でも、それなら、リナと飯食ったのはわかるだろうに……。
「へぇー、時間がないか。ホワイトバーン家のジョナサン殿に怪我をさせ、そのあとは女と遊びに行く時間もあったようだがな」
兄上が口出ししてきた。オレが黙って兄上の方に目をやると、父上が一瞬顔をしかめたのが目の端に映った。なんだろう?兄弟喧嘩にうんざり?兄上の言い方か?オレの態度か?まぁ、でも、バレたのは兄上経由だなと思った。多分、兄上も今日学園に行ったんだろう。
「明日にはちゃんと挨拶に行っておけ」
父上はジョナサンのことはスルーしそう言った。オレは「はい。申し訳ありません」と謝っておいた。だが、父上がブッ込んできた。
「なにやら王女殿下はお前の剣の腕に興味津々のようでな。「是非、一緒の班で」などと言っておられるそうだ」
うおーい、マジか……。最悪だ。どう考えても、これは今、此処で言っとかないとマズい感じだよな。オレは覚悟を決めた。
「……実は、班はリナ達と組むことにしまして」
「なんだと。ジュライフィールド家は王党派の武官系筆頭だぞ。そんなこと許されるか」
兄上がキレた。
あーあ、せっかくいい気分で帰って来たのに……。
「いや、もう約束してしまいましたので」とオレが言うと、「断ってこい」と怒鳴られた。さすがにイラっとしてきた。
「いやいや、一度した約定を破るなどジュライフィールド家の沽券にかかわります」
「ふざけんな」とまた怒鳴られる。にらみ合いになった。とそのとき、兄上が少しひるんだような顔を見せた。ん?何?とびっくりしたが、すぐピンときた。これが剣気か。へー、と全く関係ないことに気を取られていると、父上が静かに言った。
「二人共、やめよ」
「しかし、王党派筆頭として示しがつきません」
なおも兄上が言い募る。
「別にいいではないか。班ぐらい、好きな者と組めばよい。……それに、あまり王党派、王党派と言うな」
んんん?いいの?えっ?意外だ。……というか、父上は派閥にこだわってないのか?
オレがそう思っていると、兄上が立ち上がり、「少しは強くなったようだが、中身は変わらんか」と吐き捨てて食堂を出て行った




