関係を紡ぐコーヒー牛乳
「ねぇ。ねぇ。海。好きなタイプ教えてよ」
「ちょっとだけ黙って」
哀しい。喜怒哀楽の哀。
「コーヒー牛乳買ってきたよ...って。なんかこの辺息苦しいな」
「全部、蓮のせいです」
ヒュッ(死)
「蓮くんが息絶えちゃった。なに?拗ねてるの?」
「フリージアさんには関係ありません」
「そんなこと言わないでよ。はい。コーヒー牛乳」
「ありがとうございます」
「それはすんなり受け取るんだ」
と、フリージアは言いかけたが、すんでのところで止まった。言ったら今日が命日になっていたかもしれない。
「おーい。生き返れ大島」
ハッ!?
「おお、生き返った」
「なんかほっぺが痛いです」
「気にしないで。はい。コーヒー牛乳」
「ありがとうございます」
コーヒー牛乳を飲むときはワイワイしていたい。というこだわりがフリージアにはあった。
しかし、この空気。フリージアはいたたまれない気持ちになった。
「こそこそ(おい。蓮くん。この空気なんとかして)」
フリージアが僕に耳打ちしてきた。
「こそこそ(わかりました。なんとかします)」
僕は耳打ちで返した。
「ねえ。海」
「なに」
相変わらず、むすっとしている。
「コーヒー牛乳は日本で生まれた飲み物なんだよ」
「知ってる」
すかさずフリージアが耳打ちをするため飛んできた。
「何してるんだ」
「雑学でなんとかならないかなって」
「もっとニッチでタメになること言えよ!」
「がんばります」
雑学...ざつがく...ザツガク...zatsugaku…。
「うーん。あっ。もう一回行くよ。コーヒー牛乳って日本発祥の飲み物で、とある神奈川県の乳製品メーカーがまだ日本で普及していなかった牛乳とコーヒーを広めるべく、そのメーカーの創業者が試行錯誤の末に開発したものなんだ。上等駅弁が35銭の時代、コーヒー牛乳は20銭と高価な商品であったが、評判を呼んで各地の駅に並べられるようになったんだって」
「kwsk」
よし!食いついた!
「乳製品メーカーの創業者は、ある商会の社長からコーヒーを有名にしてほしいとハワイのコーヒー豆を託された。そのときに商会の社長から、ハワイではコーヒーにクリームを入れて飲むことがあるという情報を得て、コーヒーにクリームの代わりにミルクを混ぜると言う着想からコーヒーと牛乳のベストな割合を探り、さらに妻からの助言で加えたことにより、今のコーヒー牛乳ができたと言われているよ。当時、駅弁店で売られていて、瓶には注意書きとして『空瓶を車外に投げ捨てることは危険ですから腰掛けの下にお置きくださるか又はお持ち帰りください』書かれていたそうだよ」
さあどうだ!俺の謎雑学!
「へぇ〜!」
きた!つよめのへぇ〜。
これは海が興味深い話を聞いた後にする反応だ。
ありがとう。元の世界でたまたま見たウィ◯ぺディア。
「その乳製品メーカーの人に感謝しなきゃね」
そう言って海は威勢よく飲み干した。
僕はフリージアの方を見た。
フリージアは満面の笑みでサムズアップしていた。
「さっきは拗ねちゃってごめんね」
「ううん。謝らなくていいよ。こっちも悪かったし。ごめんね」
「フリージアさんもごめんなさい」
「いいよ。いいよ」
この場は先ほどの冷たい空気から一変して暖かくなった。




