襲撃
「ダメだ。どこもかしこも瓦礫の山だ」
それなりに広い村だけど、全て破壊の限りを尽くされていた。
「あのぉ。すいません。助けてもらってもいいですか?」
「わぁ!?」
瓦礫の山の中から声がした。
「人いたんだ。ちょっと待ってて。闇の力!漆黒力!」
海は自分の力を底上げする、いわゆるバフを自分にかけた。
常人じゃ退かすことのできないような瓦礫の山を、すいすいどかしていくと、中には僕らより2つほど歳が上な青年がいた。
「ああ、もうダメかと思いました。本当にありがとうございます!」
「いやいや。当然のことをしたまでですよ」
「私はウィンディと言います。この村を愛してやまない17歳です」
「僕はレンと言います。一応勇者です」
「私はウミです。一応厨二病です」
「えぇ!?勇者パーティーだったんですか!?」
「一応...」
「へぇ...。初めて会った...」
ウィンディは僕らを輝かしい目で見つめてくる。
やめておくれ。そんな目で見ないでおくれ。一応なんだ。一応。
「ウィンディさんは何をしてる人ですか?」
「この村で両親の料理店をお手伝いしています」
「じゃあずっとここにいるってことですか?」
「はい。一度も村を出たことはありません」
「何があったか教えてくれますか?」
助けてもらった時の安心した顔から、一気に暗い顔に変わってしまった。
「小一時間前のことです。突然頭が痛くなるような感覚に陥りました。突然のことで何が起こったか、わからなかったのですが、窓の外を見た瞬間わかりました。騎士秩序の四天王、メアが凄まじいスピードで飛んでいたように見えました。いや、走っていたのかもしれません。メアの姿を確認した瞬間、僕の家は崩れ落ちました。メアは飛びながら、あるいは走りながら、ワシガ村の建物を破壊していたのです。そして、村長のいる大きな建物に、人を捕らえて、監禁しました。僕は瓦礫の中に埋もれていたので奇跡的に見つからずに済んだみたいです」
「でもなんで四天王がこの村を襲ったんだろう?」
「理由は簡単ですよ。この村では黄金の果実と呼ばれるワシガという果物の名産地なんです。ワシガはこの村の辺りでしか栽培できず、とても価値の高い果物なんです。一番価値が高かった時は500gで8万シェルールまで上ったんです」
1シェルールいくらか知らないから、いまいち価値がわからない。
「1シェルールって何円か知ってる?」
「ヘイ!神様〜。1シェルールっていくら?」
「おい。海。流石にその呼び方は神様を冒涜してんじゃないのか?絶対現れないぞ」
「どうせくるから」
「ワシを某電子機器みたいに呼ぶでないぞ。一応神なんじゃぞ?」
「ほら来た。で?いくら?」
おいマジかよ。本当に来てくれんのかよ。
出てくるんじゃないよ。神様よ。もっと遠い存在でいてくれよ。プライドはないのか。プライドは。身近にいられたら困るよ。
「1シェルール100円くらいじゃな。ドルの為替相場とほぼ変わらんぞ」
「ドルは150円くらいだよ。100円だなんて。円高じゃないんだからさ」
「おぉ。ジェネギャ、ジェネギャ。こいつ物心ついた時から円安だったから100円を円高だと思っておる」
ジェネギャ?よくわかんないや。
「あの〜誰と話してるんですか?」
「ああ、ごめん。2人で共有してるイマジナリーフレンドと話してた」
「?」
「ごめん気にしないで。さっきの話の続きをお願いしていい?」
「ああ、はい。わかりました。それd...」
「えぇ!?800万円!?」
「いや、時差やめて。海のせいでまたウィンディの話を遮っちゃったでしょ」
「あの〜」
「ごめんね。ウィンディ。気分悪いよね。口挟まないから続けてください」
「わかりました。ここで採れる果実ワシガはとても高値で売れるので、盗賊に盗まれたり、自分の敷地以外からワシガを盗む者が出てきたりしました。今までたくさんの被害を受けてきましたが、騎士秩序による襲撃は400年ぶりくらいらしいです。目的はワシガ。あの果物を盗んで大量に売り飛ばすつもりなんだとか...」
「資金調達のためだけにここまでする必要あるか?」
「この村の村長は厨二病なんです。それを恐れているんだと思います」
村長が厨二病。
フリージアが同じことを言っていた。
「村人を人質にとって脅すことで力を使えなくさせているんです」
「なるほど...。メアもよく考えたもんだ」
感心しとる場合かと僕は心の中でツッコんだ。
「どうしてもこの街を救いたいんです。助けてくれませんか?勇者の皆さん」




