第2章:聖域のざわめき
主人公、ハルの登場です。
都市郊外に広がる、緑豊かな500坪の敷地。
その中央に佇む可愛らしい一軒家の縁側で、ハルは手入れしていたじょうろをそっと下ろした。
穏やかな風が吹き抜け、庭いっぱいに植えられた季節の花々や木々の葉を心地よく揺らす……はずだった。
しかし、ふとハルの動きがピタリと止まる。
ハル:「……あれ?」
見た目に特段変わった様子はない。青々とした芝生はいつも通り陽の光を浴び、トマトの苗やハーブの葉も瑞々しい香りを漂わせている。
だが、ハルにしか聞き取れない「声」が、庭のあちこちから一斉に聞こえてきた。
それはいつもの、おしゃべり好きの植物たちが奏でる穏やかなざわめきではない。
尖った、怯えた、そしてどこか怒りに満ちたざわめきだった。庭の木々がざわめき立ち、ハルの足元を這うツタが、まるで彼女を庇うようにキュッと引き締まる。
『……来る……』
『……許さない……』
『……ハル、隠れて……!』
頭の中に直接流れ込んでくる無数の声に、ハルは思わずこめかみを押さえた。
ハル:「みんな……どうしたの? そんなに怯えて……」
胸の奥が締め付けられるような、言い知れぬ不安と悪寒。
普段なら植物たちの声は心地よいBGMのようだったのに、今はまるで世界全体の悲鳴が遠くから押し寄せてくるかのような重苦しさがあった。
空を見上げる。どこまでも青いはずの空の向こうで、遠くの都市を囲む森林が、黒々とした不気味なざわめきを立てて揺らいでいるように見えた。
ハル:「……気のせい、だよね。ただの風のせいで、私がちょっと敏感になってるだけ……」
そう自分に言い聞かせ、ハルは胸の奥のざわめきを無理やり押し殺すように深呼吸をした。
だが、その予感は間違いなく現実のものとして、この世界のすべてを飲み込もうと動き出していた。
時間ある時に、ぺぺっと複数、貼り付けます。




