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童帝王、ハーレムを作る!~女神にモテスキルを授けられたはずが、なぜか国づくりを始めました~  作者: 塩野さち


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第5話 あの犬型の魔獣をどうにかしよう!

【ユウタ視点】


 セラ村は、少しずつ豊かになってきていた。

 俺が提案した水路のおかげで畑の隅々まで水が回るようになり、野菜が順調に育ち始めているのだ。

 中でも特に豊作だったのが、ダイコンに似た白い根菜、ラディカである。


 見た目は完全に日本のダイコンにそっくりだった。

 味もダイコンに近く、生だと少し辛みがあるが、火を通して煮込むとほんのり甘くなる。


(完全に異世界ダイコンだこれ……)


 俺は収穫されたばかりのラディカを見つめながら、ひそかにそう名付けていた。


 最近では、村の皆でラディカを荷車に積み、近くのマルクト町へ売りに行くようになっていた。

 そのおかげで、村には少しずつお金も貯まり始めている。

 俺も一度だけ町への行商について行ったことがあるのだが……その時の出来事は、少しばかり想定外だった。


 なぜか、町の女の人たちがすれ違いざまに、俺の顔をぽーっと熱っぽく見つめてくるのだ。

 それだけなら、モテスキル万歳と素直に喜べた。

 しかし、問題はそこではない。屈強な男たちまでもが、同じように頬を染めて、ぼーっと俺を見つめてくるのだ。


(うん。なんか気持ち悪い……)


 俺は、自分の持つ『万民魅了』のスキルが、村だけでなく町でも無差別に発動していることに薄々気づき始めていた。


◇◆◇


 そして今回も、俺はミリアやアカリ、村の男たちと一緒にマルクト町へと向かっていた。

 目的はもちろん、ラディカの販売である。


 市場に店を出すと、ラディカは予想以上に飛ぶように売れていった。

 水路のおかげで水分をたっぷり吸ったセラ村のラディカは、形が良くて辛みも少なく、町の料理屋からの評判がすこぶる良いらしい。


「セラ村のラディカは質がいい。次も持ってきてくれよ」


 買い付けに来た商人からそう言われ、俺は素直に嬉しくなった。

 美少女ハーレムという当初の目的からはかけ離れているが、自分たちが関わった村の産品が正当に評価されるのは、普通に気持ちのいいものだ。


 しかし、そこで俺は村が抱える重大な問題を思い出した。


 あの赤い目をした犬型の魔獣、赤目犬(レッドハウンド)のことだ。

 俺がこの世界に来た初日や、アカリが現れた日にも遭遇した恐ろしい化け物である。

 今は村人たちが柵を直し、見張り台を立ててなんとか追い払っているが、根本的な解決には至っていない。

 いつまた大群で襲ってくるかわからない恐怖が、常に村につきまとっていた。


「よし。村のお金も少し貯まったし、傭兵を雇おう」


 俺は集まった売上金が入った革袋を握りしめ、力強く宣言した。


◇◆◇


 マルクト町の傭兵ギルドは、熱気と酒の匂いが混ざり合う独特の空間だった。

 中には傷だらけの荒くれ者の男たちや、いかにも歴戦といった様子の武装した女傭兵たちがたむろしている。

 俺は少し緊張しながら受付のカウンターへ向かい、ギルドの職員に声をかけた。


「あの、赤目犬の群れを追い払う仕事を頼みたいんですけど」


 俺がそう相談を持ちかけた瞬間、周囲のテーブルに座っていた女傭兵たちが、一斉にこちらへバッと顔を向けた。


 その中でもひと際目を引く女性が、ゆっくりと立ち上がった。

 女傭兵団である銀槍団(ぎんそうだん)の隊長、レナ・ヴァイスだ。

 銀色の短い髪に、使い込まれた革鎧。背中には身の丈ほどもある長槍を背負った、凛々しく美しい女性である。

 レナは俺と目が合った瞬間、なぜか苦しげに胸を押さえた。


「……この少年の依頼、私たちが受ける」


 彼女のその一言を皮切りに、周囲の女傭兵たちも一斉にざわめき立ち、俺の周りに群がってきた。


「私も行きます!」

「報酬なんていりません!」

「むしろ村に泊めてください!」


(いや、これはこれでハーレムっぽいけど、なんか怖い!)


 俺は顔を引きつらせ、ジリジリと後ずさった。

 受付の職員も困惑して頭を抱えている。

 普通、赤目犬の退治といえば命の危険が伴う仕事であり、決して安くはない報酬が要求されるはずだ。

 それなのに、町でも腕利きで知られる銀槍団が「タダでもいい」と詰め寄っているのだから無理もない。


 さすがにタダ働きさせるのは申し訳ない。

 俺は村のお金から、きちんと報酬を支払うことに決めた。


「仕事なんだから、ちゃんとお金は払います。村を守ってもらうんですから」


 俺が真剣な顔でそう告げると、レナたち女傭兵は感極まったようにさらに熱い視線を向けてきた。


「なんという誠実さ……」

「この方は、傭兵を使い捨てにしない……!」

「隊長、私、一生ついていきたいです!」


(だから、そういうモテ方じゃないんだよ!)


 俺は心の中で、全力でツッコミを入れるしかなかった。


◇◆◇


 無事に契約は成立し、銀槍団は数日間セラ村に滞在して、赤目犬の群れを完全に追い払うことになった。


 帰りの道中、レナはさっそく冷静かつ的確な作戦を提案してきた。

 赤目犬は夜行性で、暗闇に紛れて畑や家畜を狙う習性がある。

 だからこそ、村の周囲の獣道に罠を仕掛け、見張り台と綿密に連携をとる。

 さらに、柵の強度が弱い場所を徹底的に補強し、村の自警団にも最低限の警戒訓練を施すというのだ。


「すごい……プロだ」


 その完璧な防衛計画に、俺は思わず感嘆の声を漏らした。


「ユウタ様に褒めていただけるとは……光栄です」


 レナは凛々しい顔を真っ赤に染めて、嬉しそうに微笑んだ。


 その様子を見て、ミリアはにこにこと嬉しそうにしているが、後ろに立つアカリは少しだけ複雑そうな顔をしていた。

 また俺の周りに女性が増えたことに、何か思うところがあるのかもしれない。

 けれど、レナたちが本気で村を守ろうとしてくれている真剣な姿勢を見て、アカリも結局は何も言えずに口をつぐんでいた。


◇◆◇


 銀槍団を連れてセラ村へ戻ると、村人たちは総出で大歓迎してくれた。


「おお! 若様、今度は傭兵まで連れてきたのか!」


 鍛冶屋のおっさんが、相変わらずの暑苦しい笑顔で声をかけてくる。


「これで村はさらに安全になりますぞ!」


 村長も感動の涙を流しながら、しきりに頭を下げていた。


 その瞬間、またしても目の前の空間に半透明のステータス画面が勝手に開いた。


【あなたを慕う者:六十四人】

【武装集団との協力関係を獲得しました】

【称号:小さな守護者】を獲得しました。


「俺、ハーレムを作りたかっただけなのに……なんで軍事力が増えてるんだ……?」


 俺は空を仰ぎ見ながら、力なくつぶやいた。

 すると、どこからともなく女神ティア様の声が、脳内に直接響き渡った。


『守る力を持つ集団もまた、広い意味ではハーレムです』


「だから広すぎるんだよ!」


 俺の悲痛なツッコミは、夕暮れの空に虚しく吸い込まれていった。


「とても面白い」★四つか五つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★一つか二つを押してね!

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