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欠片たち   作者: siki


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65 思うこと 願うこと⑪

「うん? あれ、チャージ機だよね? なにか違う……気がする?」


 大型スーパーの、1階入り口に、設置されている、電子マネーのチャージ機。

 横を通り過ぎようとして、ふと何か、違和感を感じて立ち止まった。

 あごに手を当てて、じいっと観察する。


「……あれ?」


 ディスプレイがあって、お札投入口がある、シンプルな形が定番。

 だけど、目の前にあるそれには、ATMにあるコイン投入口もある。

 指を伸ばして、待機モードになっている画面に触れる。

 明るくなって、見慣れているようで、少し違うような画面が表示された。


「ふむ。選択肢は3つ。電子マネーにチャージする、ポイントを確認、明細・履歴確認。……なぜかある、コイン投入口に関係ありそうなのは、これかな?」


 ぴっと、電子マネーにチャージするの方に、ふれた。

 画面がかわる。


「ふむむ。紙幣でチャージする。真ん中は、ポイントでチャージする。その次は、硬貨でチャージする? ん? こういうチャージ機って、小銭いれられたかな? 駅のなら、できた気もするけど。……もしかして、だけど……」


 スマートフォンと、電子マネーのプラスチックカードをいれているポーチを取り出す。

 その中に、1枚だけ、銅色の硬貨をいれている。

 この銅貨は、こちらの世界で初めてポーションを売ったときに受け取ったもの。

 こっそり希望者に売り始めた時、相場がわからず、最初は、かなり安く売ってしまっていた。

 それでも、はじめて自分の力で得た金銭だから、なんとなくその一枚だけは持ち歩いていたんだ。

 

「ためしてみる価値はあり、だよね」


 硬貨でチャージするに、ふれる。

 閉じていた硬貨投入口が開き、画面には注意事項が表示された。


「一度に100枚まで投入できます。……なお、硬貨の含有金属が基準に満たないものは受付できません、か。なるほど。こっちって、金貨、銀貨、銅貨だったよね。確かに、金貨とか粗悪なものも、あるかもしれないよね。厚み薄くしちゃったり、なんなら削っちゃってるものもあるかも……。こっちのお金をチャージできるのか……試す?」


 硬貨をつまんで、いれようか少し迷う。

 でも、やめておくかな。この硬貨はお守りとまではいかないにしても、初めての労働の対価だから、とっておきたいかも。


「今度、部屋においてるの、持ってきて試すかな? でも、現地通貨って持っておいたほうがいい気もするし。電子マネーが使えるのは、私の拠点だけだし。……要確認だけど、また、今度かなぁ。

 プラスチックカードの方は残高もあるし、スマホの方は銀行口座でオートチャージだし。……お金だけは与えてくれたことは、母親に感謝かな?」


 まったくの、無関心、無接触の母親は、家政婦さんに育児を丸投げで、月に一度、銀行口座に金銭を振り込むことで義務は果たしていると言わんばかりだったよ。

 私がいなくなったことはどうなっているんだろう? 失踪者、家出人? それとも存在自体が消えてる? ……確認のしようのないことを考えても仕方ないけど……、母親を恋しいとか思わない時点で、私も、家族の情を持たない母と同じなんだろうな。


「……」


 沈みそうになった気持ちを振り払うように、何度か首を振った。


「……ほかも、確認してみますか。ポイントを確認っと」


 カードを置いてくださいと出たので、プラスチックカードを置く。


「え? なんで、こんなにポイントあるの?」


 画面に表示されているポイント数は、100万を超えていた。

 こまめにポイントチャージはしていなかったけど、有効期限切れまでにはしていたし、このプラスチックカードって、入金限度額五万円だったよね? なのに、なんで、こんなにポイントあるの?


「……ん? ポイント数の下に、またもや、注意事項がある。このポイントは当世界共通のものです。保有ポイントは、ポイントチャージ、ATМでの現金交換ができます。今後、ポイントによる商品交換も検討しています。……えっ……と?」


 頭の中に、でっかいはてなマークが思い浮かんだ。


「これってどういうこと?」


 今回は、思ってもないし、願ってもないよ? 


「え、えっと……とりあえず、明細・履歴確認?」


 最初の画面に戻って、また、指先で触れる。

 画面に、日付が出て、その横に、項目と獲得ポイントがずらりと並ぶ。


「初回ポイント……10000? 薬作成段階? 魔法習得度、救出、土地開拓……看護……拠点開発。なんか、いろいろある……。段階? 字、細かい。プリントアウトは……できないね。

 ……お買い物ポイント……これは、ちゃんと電子マネーで支払って買ってるから、ポイントつくよね。ん? 火曜日と金曜は、お買い物ポイント2倍って…。どういうこと?」


 疑問はつきない。

 だけど、現実ではありえないと思っていた、異世界召喚されて、魔法に触れて、色々あって……なんていうか、こういうのもありなのかもしれないと思ってしまった。

 びっくりすることに対する耐性みたいなものができちゃったのかも。

 こういうことのできる神様?みたいな存在はいるのかもしれないと、思ってしまった。

 それに、これってぜんぜん、悪いことじゃないよね? いいことだと思う。

 

「……いろんな行動がポイントに還元されて、現地通貨にも交換できるのだとしたら、どこでもお金に困ることないよね。

 うん、ぜんぜん受け入れられる。こういうこと考えてくれて、特大の、感謝だよね」


 うんうんと、うなずく。

 攻撃しろとかそういうことをいう召喚国なんて、ぜんぜん、受け入れられなかった。


 この世界で自分が生きるために行動することが、ポイントになるっていうなら、そのシステムは受け入れられる。帰れないなら、ここで一生懸命頑張るって思えるよ。


「……ありがとうございます」


 自然に言葉がこぼれ出た。

 ついでに、少しだけ、要望も。


「できたら、こういう場合は、……ネットがないから、スマホで確認は無理にしても……文章……、簡単でいいから、パンフレットでもあればいいなと思います」


 後日、とても簡単なパンフレットをATМコーナーにて発見することになることを私はまだ知らない。


「さてと、気を取り直して、お買い物しよう。お昼ゴハンはなににするかなぁ」


 レジカゴを手に取る。


「ほんと、異世界は不思議がいっぱいだよね。この拠点周りの木が、翌日には壁みたいになってるのは、びっくりしたよ、うん。異世界の木って成長はやいのかなぁ。拠点の周りをきれいに隠してくれて嬉しいけど」

 

 広げた結界の周りを、巨木がぐるりと壁のように覆ってそびえてたっていたのには、本当に驚いた。

 この大型スーパーの3階よりもっと高い。

 ふわふわと浮遊魔法で浮いて、アパートの方と行き来するのは、高さゆえに時間がかかるようになってしまった。

 今は、転移魔法を使って行き来している。

 2カ所の、拠点の移動手段を考えなきゃなと思う。

 間の森に、道を作る? 地下通路、トンネル? 勉強して、転移魔法陣をしく?

 

「どうするかなぁ。花壇は、エリスちゃんと作っているけど、……森から丸見えのアパート周りに、塀を作ることもしなくちゃね。もちろん結界はあるんだけど。

 エリスちゃんが、時々、警戒するかのように、周囲に視線をめぐらすのも気になるし……」


 危険なことは何もないよと、エリスちゃんは伝えてくれたけど、安全確保は大事だよね。


 エリスちゃんは、今日もレイくんのそばにいる。

 一度、おうちに帰らなくてもいいの?って聞いたら、大丈夫。私が安全なところにいるということはわかってるから、と教えてくれた。


 ……魔族の親子関係はわからない。だけど、エリスちゃん、外見は小さな女の子だから、ご両親は心配してないかな? 大丈夫かな?って思ってしまう。


 レイくんは、まだ、眠っている時間のほうが長い。でも、部屋の中なら少しずつ動けるようになった。

 でも、まだ、痩せているし、食欲もあまりない。ふらつくこともある。

 気をつけて、みていないといけない。


「お医者さんとか、いたらいいんだけど……。エリスちゃんに、魔族のお医者さんがいるなら紹介してもらう?」


 いろいろと考えること、しなくちゃいけないことがいっぱいだ。


「とりあえずは、お昼ゴハンだね。どうしよう」


 サラダ用に、トマトを手に取りながら、考える。

 

「……サラダは決まり。めん類かなぁ。パスタ、うどん、焼きそば。……ラーメンは、そういえばまだいけてないなぁ」


 あの、ラーメン人気店にはまだ行ってない。

 どうせなら、エリスちゃんとレイくんと行って、ぼっちラーメン卒業したいし。


 でも、エリスちゃんは、アパートの結界の外には行けないと教えてくれた。レイくんはどうなんだろう? 

 考え出すと、次から次へと疑問が噴き出してきて、終わりがない。


「考えすぎても、答えがでないなら、頭をきりかえて、今できることをしなくちゃ、うん」


 トマトの次は、レタスをかごへいれた。

 レタスを見て、ふと思う。……シャキシャキレタス……。

 

「今日は作るけど、次は、フードコートで、バーガー買ってきたりするのもいいかもしれない」


 ファーストフードキライな子は、ゼロとは言わないけど、いないと思う。


 ……そういえば、初ファーストフードはここで、もちろん、ボッチだったな……と、小学生の頃の自分を思い出す。

 初ポテトフライは、揚げたてで、舌をやけどしたんだよね。

 でも、美味しかった。シャキシャキとした新鮮なレタスのハンバーガーには感動した。


「ふたりも、絶対、気にいると思うんだよね。次、テイクアウトかな」


 かごに思いつく食材を入れていく。

 家政婦さんの休日に1人分しか作ったことがないから、まだ、3人分をちょうどよく作れない。

 昨夜、作ったカレーは美味しいと好評だったけど、作りすぎてまだのこっている。

 時間停止の魔法をエリスちゃんがかけてくれたものを、冷蔵庫にいれている。


「買いすぎ、作りすぎ注意だ。けど、……時間停止魔法便利だよね。エリスちゃんに今度教えてもらうかな」


 気をつけつつもやはり買いすぎた食材は、あっという間になくなることになるんだけど、それは少し後のこと。


 今の私は、めん類は、パスタに決めたけど、和風にするか洋風にするか、のんびりと考えていたんだ。

 


 


 

 

 



 


 


 


 


 

 


 




 




 

 

 


 

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