6 混乱①
どこにいった?
まるで、存在しなかったかのように、消えるなんてありえない。
誰が忘れても、オレは憶えてる。
忘れるわけない。
「え? なにいってるの? 誰それ? 冗談だとしてもまじで面白くないよ」
「そんな子知らないし、なにいってるわけ? それよりもさ」
誰に聞いても、否定の言葉しか返ってこない。
「? うちには娘なんていません。子供なんていません。おかしなこと言わないでください。」
あいつの母親だって、あいつの存在を否定する。
とんでもなくこじれた関係だったけど、最低限、母親だということは認めていたはずなのに。
どういうことだ。いったい何が起こってる?
なんで、あいつのこと、誰もが知らないと言うんだ。
それとも─
オレがおかしいのか?
額を抑え、うつむく。
ずきずきと頭まで痛くなってきた。
いないという大多数、だけど、オレはそれに迎合するつもりはない。
いないはずはない。いなかったはずはない。
確かに、あいつはいたんだ。
「……あった…」
撮られることが好きじゃない、そういってたのに、おれが不意打ちで写した画像があったはず、そう思って開いたホルダーにあったのは、──
人混みの中、驚いたようにこっちを向いて目を見開いてる、あいつが確かにいた。
幼小中の卒業アルバムにさえ、最初からいなかったかのように、消えているというのに。
「……いったい何が、何が起こってる? まさか、だけど……まさか、流行りのやつ? 異世界なんとかとか……。いや、あれは小説……」
その言葉が、ずはり確信を射抜いてるなんて、その時のオレにはわからなかった。




