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欠片たち   作者: siki


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54 思うこと 願うこと⑨

「うん、やっぱり、この世界って、あぶないよね。防犯対策しっかりしないといけないと、思う」


 腕を組んで、考える。


 ――まずは、私の、領域を広げる。


 森を開拓して、さらに増えちゃうかもな店舗のための、空き区間をふやす。

 

 広げた土地も含めて、しっかりと守るように、おわん型結界をさらに大きくする。


 今はエリスちゃんと、男の子がいる、ここもしっかりと結界をはらないといけない。


 アパートの掲示板に貼り出していた、紙ははがした。


 ご自由にお住みください。家賃はいりません――と、書いた紙だ。


 しばらくは、ご自由にどうぞはやめておこうと思う。

 アパートには、怪我が治ったけど深い眠りに落ちている男の子と、魔族であるエリスちゃんがいる。

 二人が落ち着くまでは、新たな人を受け入れるのはやめる。


 この世界のことは、まだ、何もわからない。

 

 白い霧のこと。国はいくつあるのか、大陸は? 宗教は? 人と魔族の違い。種族はいくつある? 獣と魔物の違い。大森林のこと。そもそも、この世界は地球のように丸いのか? 違うのか? 世界の果てはあるのか?――疑問、知らないことをあげていくと、キリがない。


 少しずつ、いろんなことを知っていきたい。無知なままじゃ、だめだと思う。


 魔族――私には、赤い目をした、かわいい女の子にしかみえないけど、魔族だということで、無条件にエリスちゃんに敵意をむけてくる人もいるかもしれない。


 現に、召喚した国では、魔族は敵だ、悪だと私たちに教え込もうとしていた。

 それを、単純に信じてしまった召喚者が、ここに来たら、イヤだ。

 それから、やっぱり、共に集団召喚されたのに、出ていけコールやってくれた人達を受け入れるのも無理。

 好き好んで、苦手な人と接触したいと思うような、被虐趣味はないよ、私。


 元の世界に戻れないなら、この世界では、私は私の思うように、生きたいと思う。

 

 好きなものは好きで、嫌なものは嫌で、いいかなと思う。

 

 それにしても……男の子がどうしてあんな怪我をしていたのかもわからない。

 あれは事故で怪我したとかじゃない。誰かに暴力を加えられている。引っかかれた爪のあとや、殴られたのか口の端も切れていた。


 あんな、小学生くらいにしかみえない子供に暴力をふるう世界は、私にはとても恐ろしく思えた。

 小さな子供に、暴力なんて、許せない。


 私の領域では、絶対許さない。ダメ、暴力だよ。


 暴力的な人物、思考が偏ってる人物、とにかく、危ない人は立ち入り禁止だよ、うん。



 ――思うこと、願うことが、私の魔法。



 透明な、結界に手を触れて、願う。

 私自身にずっとかけ続けている結界に、触れる。


「私の結界たちに、お願い。攻撃されたら、反撃。警告しても、ダメで、あまりにもしつこかったら、追い払ってほしい」 


 私の領域、おわん型結界は、大きくなあれ。これから、土地を広げるから、その分も含めて。


 アパートと公衆トイレ、自動販売機の周りも、こちらもおわん型結界で囲う。

 少し広めに。花壇とか作りたいなと思っているから、余裕を持って。

 

 私の、本拠地の、大型おわん型結界と繋げてひとつにしてもいいけど、間に、森があるからね。そこも結界内に含むのはちょっとね。森を住処にしてる生き物もいるかもしれないし。動物は飼ったことないから、接し方わからない。野生の獣なら、さらに、どうしていいかわからない。


 ふわふわと浮遊魔法、急ぎだと転移魔法で移動しているけど、もう少し、行き来の方法を考えたほうがいいかな。


 魔道具考えてみる?

 あとで、この世界の図書館で、さがしてみるかな? 魔道具の本も、あると思う。


 私の領域に出現したこちらの図書館の本は読み進めている。

 知らないことを知ることは楽しい。

 字が読めるようになってよかった。

 まだ字を書くことは、つたないけど、普通以上に書けるようになったら、魔法陣の勉強もしてみたいな。


 アパートの、壁に背中を預けて、これからどうするか計画を頭の中で考えていたら、不意に手をひっぱられて、びくっとした。

 エリスちゃんだ。私の手に触れたまま、下から私を見上げている。

 喋れないという彼女は、人に触れることで、思いを伝える。


「どうした、エリスちゃん? 男の子に、何かあった? 熱、あがった?」

『違うの。あのね、さっき、レイが、起きてたの』

「レイ? 男の子の名前?」

『そう。さっき、初めて知ったの。今まで、レイは魔力、封じられてたから、私と会話はできなかったの。でも、リンが、あれ、はずしてくれたから、できるようになったんだと思う』


 痩せた足首にはめられていた魔封じの輪。癒しの魔法を使ったときに、はずしたんだった。

 

『レイの名前、知りたかったから、嬉しい。私の名前も、教えたんだよ。これで、ちゃんと友達かな?』

「そうだよ、よかったね」


 エリスちゃんの頭をなでた。

 髪質はふわふわしていて、柔らかい。

 ほどいたままで、リボンとかつけてないから、いろいろしてあげたい。リボンはもちろんだけど、カチューシャとかシュシュとか、かわいい飾りのついた髪ゴムとかで、むすんであげたいかも。 


「それで、レイくんはどうしたの? 私とも、話せる?」

 

 今後のため、事情を聞いておきたい。

 どうしてケガをしたのか、加害者はレイくんをまた狙ってくることがあるのか?その場合は、外には安全確保できるまで戻せない。

 でも、外にはどうやってでる?

 これは一番、わかってそうなのは、エリスちゃんかな?

 ふーむ。体調に気配りしつつ、三人で、今後について、話し合いかな?


『ううん。また、寝ちゃった。呼びかけても、返事ないの』

 

 少し残念そうに、エリスちゃんがいった。

 たくさん話したいことがあったのに、男の子――レイくんがまた、寝ちゃったんだね。


「身体の中が疲れてるんだよ。起きたら、たくさん話せばいいよ」

『うん、そうする』


 今まで話せなかった分、たくさんたくさん、お互いのこと、話したらいいと思うよ。


 朝、アパートでケガをしているレイくんと、エリスちゃんをみつけて、怪我を癒して、拠点をいったり来たりして、気がつくと、日が沈もうとしている。

 巨木に囲まれた森の中だから暗くなるのも早い。

 街灯と、アパートの照明が点灯した。明暗センサーついてるんだね。


「夕方だね。夜になるね。おなか、すいてない?」

『まだ、そんなにすいてないかも。でも、プリンは、また食べたい』

「プリンは食後だよ。おなかをすかせるために、ご飯の前に、エリスちゃんのお部屋、用意しようか?」

『? レイのとこでいいよ』

「あそこは、お布団ふたつ敷くと狭いから、隣の部屋を、エリスちゃんの部屋にしよう、ね?」

『いいの?』

「もちろん」


 さっき、ぬいぐるみだけは、隣室に先においたけど、エリスちゃんの反応が楽しみだ。

 触り心地のいい、クマと、ウサギのぬいぐるみだよ。

 そういえば、動物の種類って同じ? 図鑑あるかな? 種類が違ったら、謎の生物のぬいぐるみになっちゃう。要確認だ。


 晩ごはんはなににするかな?


 ラーメンと、食後のデザートのプリンってあうのかな? 栄養考えると、夜にラーメンはなし? あ、でも、あのラーメン屋さん、超人気店だから、これくらいの時間帯にはだいたい、スープなくなったとかで閉店してたような……。

 ここでも、ありえるよね。その場合、晩ごはんは、なににしようか。今日はまたコンビニかな。


 はやいとこ、土地開拓して、スーパー呼び出して、自炊するのもありかな。


 カレーも食べたいし。カレーはお店もいいけど、手作りの、おうちカレーのほうが好きかも。


 そんなことを考えながら、短い距離を手をつないで、エリスちゃんと歩く。


 一人だったときより、することや考えることがたくさんだけど、充実してきたかもしれない。

 

 安心安全な、異世界生活のために、全力でがんばるよ、私。


 

 


 



 

  

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