↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欠片たち   作者: siki


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/73

50 白い霧の中の、食事事情


 他に人はやっぱりいなくて、赤ちゃんは一人暮らしだと、わかった。


 ……一人暮らしの、赤ちゃん? え、異世界ならあり得るの? 


 かきおきの手紙によると、赤ちゃんはハルという名前で、アキという姉がいたらしい。社会勉強の旅に出た? どういうこと?


 ……うーん、くわしい事情が知りたい。

 

「きみは、ハルちゃん?」


 問いかけてみると、赤ちゃんはふわふわ浮きながら、にこってわらった。かわいい。ほっぺがぷにぷにだ。さわりたい。


「う」

「ハルちゃんなんだね。私は、咲良、さくらっていうんだよ。同じ、春だね」

「あう」


 はるちゃんが嬉しそうに手をふりふりすると、テーブルの上に転がっていた哺乳瓶が、彼女の手のなかに現れた。

 小さな手を両方そえて、抱えている。

 飲むのかな? 飲みかけは衛生上、よくないよと止めようと思ったら、哺乳瓶がピカっとひかった。

 光はすぐに消えたけど、その後が驚きだ。

 飲みかけだった哺乳瓶は適量のミルクで満たされている。瓶は、なにか真新しくなっている気がする。


 哺乳瓶……ピカっと光って、消毒して、適量のミルクが新しく満たされた?

 魔道具? それとも、赤ちゃんの魔法?


 どちらにしても、すごい。

 ごはんの心配はいらないね。


 そういえば……考えてみると、最後にご飯食べたのはいつだった? 

 間違いだったと言われて、驚く間もなく腕を掴まれて連れて行かれて、部屋の中の転移魔法陣に乗せられて、着いた先は目の前に白い霧があって、背中を押されて、白い霧の方に突き飛ばされたんだよね。


 ……ものすごくスピーディーな、ポイ捨てだよね。


 そりゃ……魔法の覚えも悪く、特別に与えられたスキルも発現しない。

 運動神経には自信があるけど、そんなの城の兵士や騎士たちとくらべると、特筆すべきものでもない。

 なにか、特別な技術や知識があるかといえば、ない。ただの、女子高生だよ。現在進行形で学んでた人間が、教えられることなんてないよ。

 

 ……間違いだとマガイモノと、いわれても仕方ないかもしれない。


 だけど、よんだのは、あの人達。

 私がきたくてきたわけじゃない。


 違ったら、速やかにポイ捨てって、ひどすぎない?


「う?」


 心配そうな赤ちゃん、ハルちゃんの声にうつむいていた顔をあげた。


 目の前に浮いているのは、お皿。

 たまごボーロが乗っていた菓子皿? ボーロも新しくなったのか、個数が増えてる。


「うう?」

 

 どうぞっていうように、ハルちゃんが皿に視線を流す。


「ありがとう」


 手を伸ばして、ひとつつまんで、口にいれる。

 サクッとしていて、口の中でさらりととけた。

 美味しい。

 いつぶりだろう? 記憶にないけど、たまごボーロは小さな子のおやつだと思ってるから、幼児ぶり?なのかもしれない。


 しかし、食べ物を口にしたら、胃が食べていなかったことを思い出したかのように、くううっとおなかをならした。


 う、恥ずかしい。でも、おなかは正直だ。

 顔が熱いよ。真っ赤だろう。


「うう?」

 

 お皿がぐいっと顔の近くに寄せられた。

 おなかがすいてるなら、もっと食べてということなのかもしれない。


「ありがとう。いただくね」

「あう」

「おいしいよ」


 たまごボーロはおいしい。

 でも、お菓子でおなかはふくらまない。

 さすがに、ハルちゃんのミルクを飲ませてもらうわけには……。


「ご飯どうしよう」


 思わず、出てしまった言葉に、ハルちゃんが反応する。

 両手で抱えていた哺乳瓶が、テーブルの上に直立して置かれる。たまごボーロのお皿もその横に。


 小さな手のひらをおいでおいでするように上下に動かして、ふわふわと、部屋の外へでていく。

 私も慌てて、あとをついていく。

 階段をおりて、ホールに戻って、それから奥へと続く廊下を、ふわふわと進んでいく。

 最初は、廊下に絵が飾られていたり、花瓶があったりしたんだけど、装飾の多い廊下を横にそれて細い通路を進んでいくと、両開きの扉があった。

 装飾のない大きな扉がハルちゃんが小さな手をふると、音もなく、開いていった。


「わぁ」

 

 部屋の中には、オーブン、シンク、調理台がある。きれいに磨かれた鍋やフライパン、調理器具がきちんと整理されて収納されている棚。

 大きな食器棚もある。

 

「すごい。キッチンというより、厨房だね、ここ」

「あう」


 ハルちゃんが水の満たされた洗い場を通り過ぎ、その奥の、扉を指さす。今度はハルちゃんが、魔法で開けないんだね? なんで?


「う」 

「ん? 開けてみろってこと?」

「あう」


 そうというように大きくうなずいたハルちゃんにうながされて、ノブをもって、ぐいっと外側に開く。

 ちょっとドアは重い。

 開けたら、ひんやりとした空気が中から流れ出てくる。


「わぁ、パントリー? 食品庫? どちらにしろ、すごい」


 棚にはズラッと食品が並んでいる。

 野菜は、葉物、根菜、見たことのないものもある。

 肉類は、塊のまま、たくさん。

 スパイス瓶かな? ずらりと並んでいる。どんな味付けでもできそう。

 床に並んでる樽類は、漬物とか、保存食がはいってるのかな? 味噌とかもあるかも。

 粉類は大きな麻の袋に入れられて、それもきちんと並んでる。

 ここまでくると、ちゃんと米もあるだろうなと思う。

 カラフルに並べられている瓶は、ジャムかな?

 フルーツの瓶詰めも並んでる。


 部屋の中、かなり大きめの冷蔵庫くらいの収納があったから開けてみたら、……冷蔵庫だった。

 うん、何言ってるのか、私もよくわからない。


 上段は、瓶に入れられた飲み物、白いから牛乳? コルク栓がされてるものは、お酒? カットされたチーズはお酒のつまみ? 

 あとは同じくカットされたフルーツとかもはいってた。

 あ、卵もある。サイズは大小様々だ。

 まだ、色々入っているけど、とりあえず、閉じて、今度は下段へ。

 さらにひんやりとした冷気が……って、これは冷凍庫だ。

 中には、うん、これ、絶対、アイスだ。

 味はバニラかな? 黒いつぶつぶは香辛料のバニラだよね。色鮮やかなものは、フルーツを使ったジェラートかもしれない。


「……すごい。異世界なのに、立派に、冷蔵庫だ。業務用サイズだけど」


 魔道具? それに、この部屋の大量の食料品。何一つ痛んでいる様子がないから、時間停止の魔法でもかかってるのかな?


 この家の持ち主、すごい。魔法の使い手。スキルや、チートの持ち主?

 ハルちゃんの、ご両親なのかな? いないけど。留守?


「あうあう」


 ハルちゃんが手をパタパタさせて、食材を指し、そして、厨房を指す。


 その意思を読み取ると……


「この食材を使って、ご飯作ったらいいよってこと?」

「あう!」


 正解というように、ハルちゃんが大きくうなずいた。

 元気がよくて、可愛くて大変よろしい。


「……」


 トースターで食パンをやくとか、炊飯器でご飯を炊く、くらいはできるよ。

 え? あのキロ単位の、塊肉をどうしろと?

 あのコンロってどうやって使うの? 火加減は? 

 フライパンってこげつかない? テフロン加工は?


「………あ、えっと、まずは生野菜のサラダから、で」

「う?」


 首をかしげるはるちゃんの前を通り過ぎ、レタスらしきものを両手に抱える。


 腹ペコなんとかって、絵本、好きだったなぁ……。


 とりとめのないことを考えつつ、流しに向かう。

 レタスは洗ってちぎって、水気をきればいいのかな?

 ドレッシングないよね? マヨネーズって、調理実習でどうやって作ったかな?


 ……素材のままの味も、美味しいと思う。


 この屋敷の中、図書室とかないかな?


 初心者向けの料理の本、見たいかもしれない。


 料理は、初心者以下。

 これから、がんばる。

 


 

 


 

 







 


 


 

 


 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。