47 思うこと 願うこと⑧
「うん、いや、やっぱりね。……できてると思ってた家具屋さん。しかも、郊外型の大型店舗。……ここの、オリジナルのぬいぐるみ、かわいいんだよね」
ひとつ、ううん、エリスちゃんのも買って帰ろう。
空き区画はすべて埋まり、ない。
そりゃ、大型店舗ばかりじゃ、土地足りなくなるよね。
森を切り開いて、開拓する?
開拓するって、次はどんな店舗よぶつもり? 元の世界の、たくさんの店舗が集合したモールでも作る気なのかな、我ながら。
コンビニ、コインランドリー、ブックストア、ドラッグストア、温泉。
……スーパーがないなと、気がつく。空き区画ないから、さすがに、今すぐは現れない。でも、自炊するならいるなぁ。
お肉、自前調達むりだし。狩り? その後の解体……できる気がしない。
私は都会生まれ、都会育ち。お肉、お魚は食品トレイ入りが基本です。
アウトドアは、すべて道具が用意されて、ルーを使ったカレーを小学校のときの林間学校で作った記憶しかない。
やっぱり、スーパーいるよね、必須。
空き区画ないから、開拓するしかない。
区画はきっちり埋まってる。
ん? 喫茶店の横にあまり広さのない土地があったんだけど、ん、あれ?
横になにかある。
小さい土地に、四角いプレハブの建物。
みおぼえがある。
建屋にこだわりがないのか、人気店なのに、開店当初から変わらず、プレハブのまま。なかは、カウンターのみ。
オープンすると、大きな木の板が、開店中って描かれて、たてかけられてるんだよね。
いつも、開店前から並んでる人が何人もいて……。
もちろん、今はいないけど……開店中の文字が黒字で達筆な字で、かかれてるのがわかる。
「ええ、なんで、あの、超人気ラーメン屋さんが、ここに支店?だしてるの」
思わず、声を出してしまった。
いつも行列ができてるから、小さな時から気になっていて、でも、連れて行ってくれる大人なんていなくて、高校生になってから初めて一人で行ったんだよね。
ラーメン屋に、ボッチラーメンしにいく女子高生って……と、腐れ縁のあいつには、憐れまれ、ばかにされたけど……。
美味しいは正義だった。
初めて食べたラーメンは本当に美味しかった。
自家製チャーシュー最高。自家製麺はまるで飲み物のように、スルスルッと食べれちゃう。スープは、いろんな食材の旨味が調和よくあわさって、飲み干ししないのがありえない美味しさ。
家政婦さんがお休みの土日にたまに行ってたんだよね。
運が悪いと、スープがなくなって閉店ってことがあったなと思い出す。
ここなら、それもない? むこうと連動してたら、あったりして。……あるかも、要確認だね。
それにしてもなんで、ラーメン屋さん?
そういえば、食事、コンビニばかりじゃなと思った時、まず初めにファミレス、それから、ラーメン屋さんを思い浮かべた気がする。
空き区画の関係で、ラーメン屋さんになったのかな。
食欲をそそる、だしの効いたスープの香りがただよってくる。
さっき、エリスちゃんと、サンドイッチとおにぎり食べてなかったら、おなかがなってたかも。
「あとで、エリスちゃんと来たいな。でも、男の子のそばをはなれるの、いやがるよね。テイクアウトできたかなぁ」
もう、次の食事は、何としてもラーメン。それ以外は認めない。
テイクアウトか、ラーメンどんぶり持って、転移魔法使えば、エリスちゃんもできたて食べれるね。
いい考えだ。
目覚めない男の子のそばをはなれないエリスちゃん。
心配なんだよね。たくさん怪我をしてたし。
癒しの魔法使えてよかったと、心の底から思ったよ。
早く目が覚めて、安心させてあげてほしいな。
ワンルームの部屋は家具はないので、さすがに不便だ。
ごはん食べるのにテーブルもいるし、布団も男の子の寝てる分しかないから、エリスちゃんの分はない。
用意しなくちゃと思って、簡単な食事――サンドイッチとおにぎりですませて、おわん型結界の拠点に戻ってきたんだよね。
予想に違わず、家具屋さんが出現していたのには、驚かなかった。やっぱりと思った。ラーメン屋さんには驚かされたけどね。
苦笑してしまう。
さて、なにがいるかなぁ。
ふーむ。
腕を組んで、あごに手を当てる。
クリーンの魔法が使えるとはいえ、エリスちゃんも着の身着のままだし。
それにあの狭いワンルームじゃ、ドレスじゃ動きづらいよね。
服飾関係のお店って、何がいいんだろう? 子供用だよね。うーん。
もっとも、今は空き区画がないから、土地を広げることが先かもしれない。
「とりあえず、土地を広げて、その後、買い物かな? 日が暮れる前に全部やらなきゃね。暗いとこ苦手だから、街灯もいるかなぁ。あ……」
ポンポンポポンと、電柱くらい高さのある街灯が現れたのにも驚く。うまい具合に間隔をあけて、建っていく。
「……」
うーん、発動条件、ちゃんと考えねば。
思うこと、願うことが私の魔法なんだろうけど、ちょっとやりすぎ。
久々に、人に会えて、大盤振る舞い状態の、心境なのかな、私。
身体には何の変化もないけど、これってどこかに影響でてないのかな? ちょっと気になる。
でも、今、考えても正解はわからない。問題は先送りでいいか。
「とりあえず……」
私は、浮遊魔法でふわりと浮き上がった。
おわん型結界をすり抜けて、上空に浮かぶ。
下を眺めつつ、どこを広げるか、考えよう。
「……眺めがいいなぁ。高所恐怖症じゃなくてよかった。……それにしても、この森、樹海?大森林?ってどこまで広がってるのかなぁ」
果てしなく広がる森を眺めつつ、思う。
「どこかに、私みたいな、追放された人もいるのかなぁ。いるだろうけど」
目をこらしてみても、どこまでも広がっている木々ばかりで、建物は視認出来る範囲にはなかった。
「……今、するべきことをやりますか」
私は、土地を開拓することにした。
今度は、広めで。
あまりに広い森なので、遠慮するのはやめにした。
衣食住の充実した快適な暮らしをめざします。




