41 思うこと 願うこと⑦
「たしかに、うん、たしかに……願っちゃうかな?とか思いました。それは、認めます」
空き区画だった場所に、どーんとドラックストアが出現していた。
やっぱりあったと思ったのも、正直に認めます。
医薬品と生活雑貨、食品までそろってる大型の店舗だ。
便利なんだよね。ここで一通りそろっちゃうんだよ。
それにしても――
「……私は無意識に、元の世界の街並みを再現しようとしてるのかな? うん、そんなつもりはないんだけどなぁ」
考えても、よくわからないし、ちゃんと商品代金は払ってるよ。
どの店も、セルフレジがあるから、それで。
そうだ。私の行きつけの喫茶店は、なぜかタブレット注文になってた。本来のお店は、つかいこまれたメニューから選んで、マスターに注文する形だったけどね。
タブレットで注文すると、しばらくすると目の前に現れるんだよね。ほんと、どうなってるんだろ。ちなみに、レジはセルフレジだよ。
うーん、どの店も支店名とか書いてないけど、異世界支店とかになってたりして。まさかね。
自動ドアを通り抜けて、レジカゴを手に取る。
必要そうなもの、ちゃちゃっと買って、アパートに戻らないと。
あれから――癒しの魔法で男の子を治して、眠っている彼をフローリングの上に寝かせたままでは駄目だということで――魔族の女の子エリスちゃんがクリーンの魔法を男の子にかけた。
度重なる魔法は身体に負担がかかると本で読んで知っていたので、慎重に数回にわけておこなってもらった。
身体も服もきれいになった男の子は、痩せているけど、将来有望そうな整った顔立ちをしていた。
目を覚まさないけど、寝息は安定していて、苦しそうではないので、大丈夫だろう。
収納からひっぱりだしたお布団をしいて、私が抱き上げて、布団に寝かせた。体重はびっくりするほど軽かった。
ベッドがあればいいんだけどないし、ロフトで寝かせるのは高さがあるから危ないと思ったんだ。
ただ、服もきれいになったとはいえ、破れたところとか、もともとの傷みはもとには戻らない。
なので、服を調達する必要あり。その他、飲み物、食べ物とか、必要そうなものをそろえなくちゃいけないと思ったんだ。
なので、私のおわん型拠点(もっといいネーミング考えねば) に戻って、用意してくることにしたんだ。
エリスちゃんに一緒に来るかと聞いたんだけど、首を横にふられた。
私の腕に触れて、
『心配だから、そばにいる』
と答えたエリスちゃんは、ちょこんと布団のそばに座って、男の子の顔をみつめていた。
あんなにひどい怪我してたんだから、治したといっても、目を覚ますまでは、やっぱり心配だよね。
「わかった。ちょっとまってて」
私は急いで、外に出て、自販機のところにいって、ペットボトル飲料を買った。
かわいいキャラクターイラストが描かれてる子供向けのリンゴジュースだ。
「これ飲んで待っててね」
キョトンとした顔で、ペットボトルを受け取ったエリスちゃんに、
「すぐ戻るからね」
と、告げて、今回は急ぎなので、浮遊魔法ではなく、転移魔法でとんだ。
できると思ったら、やっぱりできた。
いちおう、図書館の魔導書で読んで、詠唱もおぼえたけど、やっぱり――思うこと、願うことが、私の魔法、なんだよね。
便利だな、チートってやつなんだろうなぁと思う。
でも、めっちゃ受け入れてる。チート万歳。
だって、この世界で生きていかなきゃいけない。望まず、ここに連れてこられたんだから、私だけの特別な魔法くらい、あっていいと思う。
転移魔法の行き先はコンビニを考えてた。
コンビニは、シャツとか靴下とかお店オリジナルのもの扱うようになってたよね?Tシャツなら多少大きくても、男の子にパジャマがわりに着せるのはいいかなと思ったんだ。
コンビニに着いたら、自然と目に入ったのは、冒頭の、ドラックストアだった。
……うん、行き先変更だよね。
ドラックストアで買い揃えよう。
コンビニは……、エリスちゃん、おなかすいてないかな? なにかサンドイッチとかデザート買ってくかなぁ。
レジカゴに思いついたものを入れていく。
体温計、ゼリー飲料、解熱鎮痛薬(子供用)、アルコールティッシュ、熱冷ましシート、レトルトのおかゆ、スポーツ飲料。あとなにかな? 服?下着は子供用はなんとかあったけど、服はない。やはり、コンビニのTシャツだね。
電子マネーで支払って、買い物袋を抱えたまま、コンビニへ。
サンドイッチ、おにぎり、飲み物、シュークリームと、アイスも買っちゃおう。
「ただいま。……?」
思いのほか、大量になった荷物を抱えて戻ると、部屋の中は静かだった。
エリスちゃんも男の子の横で、こてんと寝落ちしていた。
つかれたんだよね。いっぱい泣いてたし。安心したんだね。
私は、エリスちゃんを起こさないように、そっと身体の上に毛布をかけた。
二人ともすやすやと寝ている。
キッチン備え付けの、少し小さめの冷蔵庫に、買ってきた食品を入れておく。
……電気どうなってるのかな?とかは、考えないことにしたよ、うん。
目が覚めて、私がいなかったら、エリスちゃんが不安になるかもしれない。
まだ、幼児といえるほど小さいし。
私は壁に背中を預けて、座る。
ソファーほしいかも。クッションでも可。
うっ、いけない。
ここで考えたら、まだ、空いてる空き区画に、また、店舗ができちゃうかも。
ぷるぷると頭をふって、考えないようにする。
それにしても、このエリスちゃんと男の子、友達っていってたよね。どういう出会いだったんだろう? 男の子は人間だよね?
それに、ものすごい怪我してたし。
誰にやられたんだろう。小さい子供に暴力なんて、ありえない。
エリスちゃんが助け出したのかな?
いろいろ聞きたいことあるけど、二人のかわいい寝顔眺めてたら、私も、本格的に眠くなってきた。
「ふあぁ」
あくびがでてしまう。
とりあえず、私も、少し休憩しよう。
おやすみ。……。
すっかり忘れていたんだけど――エリスちゃんも幼児で、当然、保護者さんがいるわけで、エリスちゃんの気配をたどり、それが消失した白い霧の前で、再度娘を見失ったことで絶望してるなんて、……ぜんぜん、知らなかったんだ。




