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欠片たち   作者: siki


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34 思うこと 願うこと⑤

「……うーん、別にね、積極的に、誰かに入ってもらいたいなぁとか、そういうつもりじゃなかったけど……本日の入居者様も、ゼロでした」


 アパートを、はじめは少し離れた場所から、誰か来たかな?と様子を伺ってみたりしてたけど、その行動は意味がないとすぐ分かった。

 だから、がちゃっと迷わずドアを開けて確認するようになった。


 ワンルームの部屋は、本日も無人です。


「ちょーっと人恋しくなったとか、ちょーっと引きこもりも過ぎると、退屈というか」


 衣食住、娯楽に困っていない。一人で過ごしても、退屈させないアイテムはたくさんある。

 コンビニあるし、レンタルショップつきの本屋も、温泉もあるよ。


 そうそう、コンビニは定期的に商品が入れ替わってることを発見した。賞味期限間近になったら、見切り品とかでひとまとめにされて、プライスダウンのシールとか貼られてるのよ。

 本屋さんも、なんと、新刊も入荷してるんだよね。

 召喚される前、宣伝ポスターで発売日の書かれていた本が、普通に並んでた。ディスプレイも定期的にかわってる。

 書店員のおすすめなんて、POP広告がついてたりする。


 元の世界と連動してる? 謎。


 小さな頃読んだ絵本の、小人さんが働いてるんじゃないかと疑ってしまう。

 一晩、見張ってみようか?とか、本気で考えちゃうよね。

 

 どちらにしろ、私の魔法って、本当にどうなってるんだろう。謎すぎ。

 一人でチートしてるなぁと思う。

 でも、助かってる。これがなかったら、私、どうなってたかなぁと思うと、ゾッとする。

 一人で追放されて、一人で森の中彷徨って、サバイバル術なんて知らない都会生まれ都会育ちの私は、多分きっと、自力でご飯手にいれられなくて、……飢え死にしちゃってたかも。


 だから、心から自分のチートに感謝。チート万歳。

 おにぎり美味しいし、お惣菜も豊富だし、栄養バランスも取れていると思う。

 淹れたてのコーヒーは、目覚めの必需品です。


 衣食住は満たされてる。

 娯楽もある。

 こちらの世界の図書館で、本を読んで、自主学習もしている。

 だけど、1日1回は、自動販売機そばに作ったアパートを見に来てしまう。


 私、一人で平気な方だと思っていたけど、それでも、完全な一人は慣れてないのかもしれない。

 一人で行動することは、特に何も、思うことはなかった。

 まわりには私は一人でいるのが平気な人だと思われていたと思う。

 そういうわけじゃないんだけど、物心ついた頃から、自分のことは、できる限り自分でするのが当たり前で、誰かにしてもらうってことがほぼなくて、自分だけでどんどんすることが当たり前になっていて……集団行動とかみんなで何かをするというのが、正直苦手だった。

 だけど、別に、孤独を好んでるわけではないと、思いたい。

 毎日、学校ではクラスメイトと会話していたし、家でも、家政婦さんと話もしていた。ご近所さんに、挨拶もしてたよ。

 それに、腐れ縁のあいつとは、家が同じ町内なだけあって、毎日、どこかしらで遭遇して話はしていたよ。

 そういえば、はじめてかも。こんなにも長い間、話していないのは。今、どうしてるかな?


 私が、異世界召喚されたのって、されそうになったあいつを突き飛ばしてあげたのに、私の腕を引っ張って、変な光の中に引き入れたせいだったよね。

 うむ、恩を仇で返された気がする。

 ま、いまさらだけど。思い返しても、どうにもならないし、あいつがこんな変な世界に引き込まれなくてよかったなぁと思うよ。

 でも、私より人付き合いが上手で、たくさん友達もいたあいつなら、追放なんてされなくて、追い出されることなく、集団でもうまくやってただろうな。……。


「うー。考えると、落ち込む。傷はまだ癒えてないかな? 落ち込んだときは、アイス、ちょっとお高めカップで、自分をなぐさめちゃうことにしよう」


 首をフルフルと振って、時々、思い出す、出てけコールを頭から締め出す。


 人恋しいけど、あの人達はやっぱりやだなぁ。

 少しずつでも、行動範囲を広げて、他に、追放仲間の異世界人がいないか、探しに行くべきかな。

 行った先から転移魔法で戻れば、探し回って戻れなくて野宿なんて心配はないし。


 でも、この森の中を歩くの?

 ふわふわと上空に浮いてたら、森の中に人影があったとしても、みつけられないよね。

 でも、私、何度も言うけど、都会っ子。

 舗装された遊歩道しか歩いたことない。

 虫も苦手。


「あれ?」


 そういえば、虫も、獣もいないな、ここ。

 私がイヤだからって、自分の領域と決めた場所に、無意識で、入ってこれないようにしてたりして……まさかね。

 ありえるかも。

 だとしたら、チートが過ぎるかもしれない。

 でも、虫とか、特に足の多いのとかものすごーくだめなので、ぜんぜん、チートが過ぎていい。

 もしかして……ここには、私に出てけコールをしてくれた彼らは入ってこれないかもしれない。

 多分きっと、私、嫌だと思ってる。私の場所に来ないでと思ってる。

 私、いい子じゃない。追い出されたのに、自分は受け入れるなんて、やっぱり無理。

 私の領域以外で、暮らしてくださいと思う。

 彼らにも、何かしらのスキルはあるでしょう。それがどんなものなのか、チートレベルなのかは知らないけれど。


 でも、せっかく作ったアパート。

 あれから、収納にお布団とかもいれたし、アメニティも用意したよ。


 私に危害を加えない人、簡単に言うと、私と敵対しない人なら、このアパート近辺は受け入れオッケーかな。

 私のお家のある、おわん型結界の場所は、だめだけどね。

 あそこは、私のお城?なのです。

 これから、どうするかは、要検討で。


「ふむふむ。どこまでが私の領域になってるのかな? アパート、自販機、公衆トイレまわりに、わかりやすく、塀?でも作っちゃうのもいいかもしれない。花壇とかも作るのもいいかな」


 本屋さんに、庭づくりとかそんな関連の本あるよね、見てみよう。


「では、帰りますか」


 本日の入居者はゼロと確認した私は、ふわふわとまた宙に浮く。

 転移魔法も覚えてるから、すぐに戻れるんだけど、ふわふわ空中散歩って楽しいんだよね。

 

「うん、今日もいい天気。アイスは、クッキークリームが、やっぱり好きかな。それにしよう」


 ふわふわと浮かびながら、お家の方へ戻って行く。



 ――このときの私は、明日来たときは、入居者がいるなんて、少しも想像していなかったんだ。

 

 

 


 

 

 

 

 




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