28 思うこと 願うこと④
「――これでいいかなぁ?」
腕を組んで、ふむふむと、首を傾げながら、ながめる。
コンビニ、温泉、本屋、喫茶店など、元の世界由来のものは同じ区画にまとめた。
土の地面じゃ、風がふいたら、砂ぼこり、落ち葉が舞い上がって、掃除が大変そうな気がしたので、コンクリート、アスファルトでそれぞれ覆ったり、繋げてみたりした。
たぶん、私のみてきた風景のまんまとか、断片だね。
それぞれをつなげてる道なんて、車道だよ。歩道付き。意味ないよね、車ないし、免許もないのに。
たくさん魔法を覚えたり、私のスキル?みたいな、――思うこと、願うこと――が上手にできるようになったら、知ってる景色とかじゃなくて、自由に創造できるようになるのかな?
それから、召喚された国の図書館は、いうなれば西洋風の建物なので、はなれた場所に動かしてみた。
私の家も、洋館なので、その近くに配置してみる。
木蓮や、桜、金木犀、牡丹、ミモザなど、その他、名前の知らない庭木、小さい頃、庭師のおじさんが作ってくれた私専用の小さな花壇もくっついてきているので、とりあえず、殺風景ではないかな?
ちなみに、建物は、おおよその配置を考えたあと、目を閉じて、思い浮かべ、願ってみたら、なんとか、現在の配置におさまったんだ。
ここにたどり着いたときに、広く整地しすぎたせいで、空き区画? 空き地?はあるけど、今のところは、そのまんまでいいかな。
おわんをひっくり返したイメージの結界はもちろん、かわらず、あるよ。
追放されたり、攻撃された心の傷は癒えてないのです、まだ、たぶん。
会いたくないし、来られても、ここで共同生活とかなったら、やだなぁってのが、本音。
じーっくりさがさなきゃ、わからない位置に、インターフォンつけてみたけど、ならなくてもいいよ、っていうのも本音。
異世界召喚という、ありえないことされた、被害者一同として、協力し、助けあっていこう――どころか、召喚国に追従しなかった私は、集団からはじかれ、おいだされた。
あの時、誰一人として反対したり、助けようとしてくれなかった。なんなら、攻撃されたし。
もともと、集団が苦手な私が、みんなの中に入っていかなかったっていうのも、……味方ゼロの、一因だってわかってはいる。
だけど、魔族の子を逃がすまでは、問題行動なんて、起こしてない。誰にも迷惑かけてない。
出てけコールまでされて、攻撃されるなんて、ありえないと私は思うけど、ほかの召喚された子たちは違う考えなのかなぁ。
とにかく、会いたくない――それならどうしよう。
「あ! そう、だ。いいかも」
ぽんっと手をたたいた。
準備をし、私は、ふわりと浮き上がった。
私が作ったおわん型結界なので解除することなくすり抜けて、空へ。
ふわふわっと浮かびながら、そびえ立つ木々の間をすり抜けていく。今日も空は青い。
「あった、消えてない」
薄暗い森の中、目印のように、ひかって、その存在を主張している自動販売機。そばには、ごみ箱付き。公衆トイレも、もちろんある。
ゆっくりと位置を調整し、木々と、その伸ばした枝をすり抜けながら、目の前に降り立つ。
「飲み物の種類に、かわりなし。……やっぱり、電源、どうなってるんだろ。飲み物も在庫なくなったら、どうなるのかなぁ。あれ、空き缶消えてる。どこいったの? ええっ」
……疑問はつきない。
しかし、解明するすべはないので、頭を切り替える。
「さて、さっそく実行してみましょう」
あの国にいた時よりも、よく口に出して、喋ってる。ひとりごと、ふえてて、ヤバい人、私?と、自虐めいた考えは、とりあえず、どっかに置いておいて……。
思うこと、願うことが、私の魔法。
まず、そう思うことにしている。
なにか、リミッター(制限)をつけておかないと、際限なく、いろいろ現れちゃったら、困るかなと思ったから。
私の魔法って、要解明だよね。
それはともかく。
「おおっ」
思わず、拍手。
目の前に現れたのは、通学路の途中に新築されていたワンルームのアパート。
いつだったか、内覧会なのか、玄関ドアが開け放たれていて、中が見えたんだよね。駐車場を優先したのか、生け垣とかないし、目隠しもほとんどなかったから。
フローリングで、小さなキッチンがみえた。
ほかは、トイレ、お風呂とかはドアは閉じてたけど、当然、あった。
とりあえず、近づいていって、1階のドアを開けてみる。
新築の、生活感のない、新しい部屋のニオイがする。
間取りは、ワンルームで、キッチン、風呂、トイレ付き。ん? ロフトもある。
……でも、当然、家具、生活用品はない。
うーん。
さすがに、雨風がしのげる家屋を用意したんだから、それ以上は、自力でどうぞ、でいいよね?
うーん、あっちの温泉施設に行けば、予備のお布団もありそうだし、コンビニにもいろいろあるけど……。
うーん。そこまで、用意する? ……今のところは、要検討で。
「とりあえずは……」
1階の階段のところにある掲示板に、用意してきた紙を画鋲ではりつける。
ご自由にお住みください。家賃はいりません。
A4の紙に、黒いマジックで手書きしただけのもの。
「ふふ」
笑みがこぼれた。
こんなふうにしたって、誰もこないかもだけど、ね。
「さて、戻ろうかな。そのまえに」
ここに来た時にお世話になった自動販売機。
コンビニで用は足りるようになったけど、なんとなくね。
「今日は、シンプルにミネラルウォーターかな」
ぴっと、電子マネーで買って、冷たいそれを持って、自分のテリトリーに戻るために、ふわりと浮かび上がった。
「戻ったら、何しようかな。また、図書館かなぁ。魔法書、面白いし」
ふわふわと、のんびり、平和に、帰路についていく。




