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欠片たち   作者: siki


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22 思うこと 願うこと③


「うん、わかってた。私に、拠点づくり、とかそんなのむいてないってこと」


 思うこと、願うこと、それが私の魔法。

 

 ふわふわと漂いながら、たどり着いたひらけた場所で、邪魔になりそうな大岩、茂った草、倒木を、魔法で、焼却したり、砕いたりして、拠点を作るための場所を、開拓した。


 腕組みしつつ、うーんと悩みつつ……、ほしいもの、これがあったらいいなと思い浮かべたり、あれがあったら便利だし、とか、とりとめなく、考えてたら――気がつくと、私を中心にして、いろいろな物、建物が、無秩序に乱立していた。


 オリジナリティは、ゼロ。


 コンビニ、温泉。コインランドリー。レンタル店付きブックストアは文房具も取り扱ってる。週一は通っているカフェというより、喫茶店という呼び方をすべき店は、試しにドアベル付きの扉を開けると、ほのかに珈琲の香りがした。


 私が、日常的に通っていた店舗ばかり。

 店員さんはいなかったけど、品揃えは豊富で、支払いはセルフレジなので、不便はない、のか?

 喫茶店は、マスターがいないから、私が、珈琲いれるの? 


「それにしても、どうなってるの、ほんとに」

 

 我ながら、わけがわからない。

 これだけの魔法?を使っても、私の身体に変化はない。

 疲れとか、不調とかは、まったくない。


 でも、わかったことがある。

 私にはゼロからデザインしたり、考えていくセンスはないみたい。

 それとも、行ったことのあるものしか、作れないのかもしれない。


 だとしたら、次に、思い浮かべ、あったらいいなと願うものは、あれしかない。

 物心ついた時から住んでいた、本邸から離れた場所に建つ、小さな洋館。離れと呼ばれる,我が家。


 目を閉じて、思い、願う。

 私の家。姿をあらわして、って。

  

 前触れなく、目の前にあらわれた、洋館。

 それは寸分違わず、我が家で。

 物心ついてから、ずっと一人で暮らしていた、大切な私の家だ。

 洋館の周りの、庭木もそのままで、今までのことは夢で、召喚なんてされてなくて、ずっと家にいたんだと思いたくなる。

 が、そんなわけないと、視覚から否定するのは、周りに乱立する建物で…。

 洋館の後ろには、温泉マークの描かれた看板が、見えてたりして……。


「現実逃避するには、無秩序すぎて、無理」

 

 とりあえず、コンビニでデザート買って食べるかな。


 愛情はゼロでも、お金で毎月義務は果たしているといわんばかりに大金がふりこまれていた。財布の中、デビットカードにひもづく口座には、十分に生きていくための金額ははいっているはずだ。さすがに金額確認のため、ATMをってことはしないけど。


 それよりも、唯一、異世界で気に入った場所――許可がでてから、ずっと入りびたっていた図書館も、ほしいなと願い、思い、願ってみた。


 やはり、図書館は音もたてずに、出現した。


「ほんと、どうなってるの?」


 もはや、このセリフは口癖のようになりつつあるかもしれない。 


「よし、本も選ぼう。読みたいの、あったんだよね」


 文字をおぼえることを優先して、辞書や参考書的なものばかり読んでいたけど、本当は読みたい本いっぱいあったんだよね。

 小説も面白そうだったし、一枚一枚丁寧に描かれた絵付きだったんだよ。

 

 ほんと、楽しいかも。

 いくらでも、こもれるよ。掃除や食事の時間だとかいって、私の時間を中断させる家政婦さんもいないから。

 

 でも…、くるりと周囲を見渡す。

 

 この世界に来て、いっぱいいわれたことがある。


 この世界には魔物、魔族がいること。他にも、野生動物もいるし、治安の悪い場所では人が争い、盗賊もいる。冒険者という職業もあるといっていた。

 戦うすべを持たない者にはとても危険がたくさんある世界だと思った。

 今のところ、白い霧をこえて、この大森林の中にはいってから、第一村人……じゃなくて、生き物、私と同じように追放された異世界人にも遭遇していない。


「まだ、会いたくないかも」

 

 正直に言ってみると、今回も、他人に好かれなかった。


 毎回毎回、集団から弾かれる。

 一緒に召喚された異世界人という集団から、でてけっていわれたし、何でもないことのように受け止めたけど、ショックを受けてないわけじゃない。


 結界をはってたとはいえ、攻撃魔法も何度もなげつけられたし、弓も射られたね。

 やられたことは、ばっちりおぼえてる。


 ……特に、出てけコールなんてされたりしたことを思い出すと、ズキンとした。


 ひどいよね、そこまでされること、私、したかな?


「……傷心につき、しばらく、ひきこもってもいいよね。さすがにずっとっていう、つもりはないけど……」


 思うこと、願うことが、私の魔法。


 なので、私が開拓した土地ごとくるりと結界をはってみた。

 おわんをひっくり返したみたいな、透明なドーム型にしてみたよ。空からの襲撃も受け付けません。

 

「うん、結界系は、やっぱり得意だね」


 でも、完全引きこもりのつもりじゃないから、外側に、探せばわかるように、インターフォンもどきをつけてみたりした。

 今の気分じゃ、じっくり読書のため、気がつかないかもだけど。


 それと、人に見られる前に、このゴチャとしたコンビニとか、温泉とかの配置を、整えたい気がする。


 でも、とりあえず、それは後回しで。


 むこうにいたときは、周りの目がたくさんあって、何を報告されるかわからなかったから、洋館の寝室以外では気が抜けなかった。

 今は完全に一人。


 コンビニで、デザート買って、図書館で読みたい本借りて、怠惰に、過ごそう。


 うん、そうしよう。


 たまには、自分にとっても、優しくしてあげるのはいいと思う。





 

 

 

 


 


 


 




 


 

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