↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欠片たち   作者: siki


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/72

2 欲しいもの


 欲しいものがあった。

 そのために力が必要だった。



 眩い光の中、現れたきみは、私にそれを与えてくれるものだと思っていた。



『私、そんな特別な人、じゃないよ』



 きみはそういったけれど、あのときの私にはそうは思えなかった。



『大丈夫。私がいます。乙女よ。私があなたにこの世界のことを教えましょう』

『……お、乙女って。意味わかるけど、恥ずかしい呼び方やめてほしい』

『では、なんとお呼びすれば』

『…私は──』



 教えずともこの国の言葉を話し、私や師たちの教えることを容易く理解し行使できるきみは、素晴らしいと思っていた。


 あの時までは……。



『どうして? 私、できないよ。この子たち、何もしてないじゃない。私、嫌だ』



 真っ白な手を、血に染めるのは嫌だという。

 私たちとは違う生き物、厭うべき魔物だというのに、嫌だという。



『私、何かを壊すための魔法なんて使わない』



 はっきりと意志を宿した瞳が真っ直ぐに私を射抜いた。


 説得や懐柔など無理だと、わかった。



 なら、するべきことはひとつしかない。



『そう……なら、あなたはいらないな』

『え?』

『必要ない』 



 私が欲しいものは、大地に恵みを与える水や温かく包み込み癒す風、冷え切った心を温める火などではない。



『聖女なら、いらない』



 私が欲しいものは貫く水、切り裂く風、すべてを燃やし尽くす業火の焔だ。



『まって、ねぇ、急にどうして』



 伸ばされた手をつかんで引き寄せる。

 息がかかるほど近い距離で、目を合わせた。

 好ましいと思っていた、まっすぐな意思を宿した、瞳。


『残念ながら、間違いだったようだ。私の求めていたものではない。すまないが』

『急になに、いってるの?』

『還すことも、ましてや、存在を消すこともできないんだ。だから、きみを――』

『え?』




 真っ白な霧、先の見えない白い場所へ、きみを──




 捨てるんだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。