2 欲しいもの
欲しいものがあった。
そのために力が必要だった。
眩い光の中、現れたきみは、私にそれを与えてくれるものだと思っていた。
『私、そんな特別な人、じゃないよ』
きみはそういったけれど、あのときの私にはそうは思えなかった。
『大丈夫。私がいます。乙女よ。私があなたにこの世界のことを教えましょう』
『……お、乙女って。意味わかるけど、恥ずかしい呼び方やめてほしい』
『では、なんとお呼びすれば』
『…私は──』
教えずともこの国の言葉を話し、私や師たちの教えることを容易く理解し行使できるきみは、素晴らしいと思っていた。
あの時までは……。
『どうして? 私、できないよ。この子たち、何もしてないじゃない。私、嫌だ』
真っ白な手を、血に染めるのは嫌だという。
私たちとは違う生き物、厭うべき魔物だというのに、嫌だという。
『私、何かを壊すための魔法なんて使わない』
はっきりと意志を宿した瞳が真っ直ぐに私を射抜いた。
説得や懐柔など無理だと、わかった。
なら、するべきことはひとつしかない。
『そう……なら、あなたはいらないな』
『え?』
『必要ない』
私が欲しいものは、大地に恵みを与える水や温かく包み込み癒す風、冷え切った心を温める火などではない。
『聖女なら、いらない』
私が欲しいものは貫く水、切り裂く風、すべてを燃やし尽くす業火の焔だ。
『まって、ねぇ、急にどうして』
伸ばされた手をつかんで引き寄せる。
息がかかるほど近い距離で、目を合わせた。
好ましいと思っていた、まっすぐな意思を宿した、瞳。
『残念ながら、間違いだったようだ。私の求めていたものではない。すまないが』
『急になに、いってるの?』
『還すことも、ましてや、存在を消すこともできないんだ。だから、きみを――』
『え?』
真っ白な霧、先の見えない白い場所へ、きみを──
捨てるんだ。




