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欠片たち   作者: siki


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18 思うこと 願うこと②

「……うーん、コーンスープ缶じゃ、お腹いっぱいにはならない。うん、わかってたけど」


 自動販売機とセットで設置されていたゴミ箱に、飲み終わった缶をいれる。

 

 炭酸飲んで、コーンスープ飲んで、水分で、お腹タップンタップンしてる。

 これじゃ、……生理現象が心配になる。


 たとえ、周りに人の気配がない自然の中とはいえ、外でなんて無理。

 

 思うこと、願うことが、私の魔法。


 なので……、切実に、思い願う。なんなら、手をすり合わせたりもする。

 外でトイレなんて無理、水洗じゃなきゃ話にならないし、トイレットペーパーも必須。手も洗いたいし、手を拭く使い捨ての紙も欲しいな。


 で、どーんと、目の前に現れたのは、駅とか、観光地とかにある公衆トイレ。しっかりと男女別。


「我ながら、どうなってるのかな、ホント」


 首を傾げつつ、ハンドドライヤーの中に手を入れて、ブオーっと水分を飛ばし乾かす。

 電源はどうなってるんだろう。

 人感センサーまでついてたようで、外に出て、少しすると照明が消えた。


「ほんと、どうなってるんだろう?」


 疑問ばかりが頭に浮かぶ。


 召喚された国にいたときより、ずっとずっと、私の魔法、強くなっているみたいだし。

 作り出してるのか、元の世界から物を呼び寄せているのか、原理はまったくわからない。


 あいつは、生殺与奪の権は自分たちが持っているのだから、従えといってたけど、そんな必要なかった。


 この魔法? 力?があれば、余裕で生きていける。


「さてと、これから、だよね」


 自販機と、公衆トイレに目を向ける。

 そして、そのうしろの白い霧にも。


 霧の向こうに戻れるのかな? 戻る気ないけど。


 追放をいい渡した、誘拐集団の国の現地人はここに入ってこれないと聞いている。

 だけど、私と同じように召喚された異世界人は、入ってくることができる。


 現地人といっしょになって、でていってくれといった同郷の異世界人の彼らも、ここにまた捨てられることもあるかもしれない。

 

 会いたくない。


 白い霧の先の大森林は、この世界の中央に位置し、それぞれの国から一番近い場所から、異世界人を捨てていると、乗り心地の悪い馬車のなかの私に、護送担当の兵士が馬を操りながら教えてくれた。各国で、場所も決まっているとも教えてくれた。退屈な道中、この世界のいろいろなことを話してくれた。


 彼が親切だったのは、私に癒してもらったことがあるといっていた、そのおかげかもしれない。


 道中、何度か、あなたの強い癒しの魔法は貴重です。戻りましょう。きっと、許されますと、いっていたけど、首を振った。


 なぜ、私が謝る? 許される? 許される必要なんてないし、私のほうが許さん!


 人がたちいることができる、ふつうの森を抜け、やがて、白い霧が見え、その先に果てしない大森林が広がる様子をもふくめて、見おろすことができる崖の手前で馬車は停車した。

 その崖の先端から、白い霧の方へ、不自然に下へと降りる階段があった。

 

 差し出した手を借りず、あの階段をおりればいいの?といいながら、すたすたと歩き出した。覚悟を決めたから迷いはない。さっさと行くに限る。

 怖がりも取り乱しもしない様子に、兵士が、お待ちくださいとか、もう少し考えましょうとか、怖いですよ、うわ、待って、とか、慌てて、言っていた。

 私を説得、ひきとめろとか、いわれていたのかもしれない。

 

 振り返って、ありがとうと感謝を伝えて、階段を数段おりて、白い霧に、身体が触れたと思ったら、森の中にいた。


 振り向くと霧。振り返っても階段なんて見あたらない。


 自販機とか公衆トイレとか作って?たけど、ほぼ移動はしてない。

 階段はどこに消えたかわからないけど、距離を移動していないから、ここはまだ入り口に近いだろう。たぶん?

 

「……ふむ。ここは、なしだね」


 入り口が近すぎなのは、ヤダ。

 会いたくないし、霧の向こうにいたとして、はいれなくとも、声ですら聞きたくない。


 私はくるりと踵を返した。

 が、一歩も進めず、立ち止まる。


「とおせんぼ、されてるみたい」


 どーんとそびえる大、小の木。落ち葉の山。当然、草は行く手を阻み、岩もあり、日陰のものは苔までついてる。


「うん。大自然」


 そこをかいくぐったり、岩をよじ登ったり、する気はない。

 私は都会生まれ、都会育ち。

 自然は、自然公園で、動物は動物園で、と、育った。

 田舎暮らしに憧れたこともない。

 

 なので――


 風よ……なんて、手を前に差し出して、詠唱なんて、しなくても無詠唱で。


 そういえば、一緒に召喚された一人は、詠唱どころか、大袈裟な仕草までつけて、攻撃魔法、発動してたの、いたね。

 あれで、発動できなかったら、恥ずかしいのひと言だったけど、発動できてたし、いいのかな? 数人の女の子たちに、すごいすごいと褒めちぎられてた。


 あれをみて、攻撃魔法ってあの仕草付き?と思ったのか、できなかった子も、同じように真似して、できるようになってた。


 私は、あんなポーズきめたり、なんか、装飾過多な詠唱するなら、できなくていいかなと思った。癒しの魔法だけでいいと、思った。


 思うこと、願うこと。


 そして、魔法は想像力が、大事なんじゃないかなと思う。


 ふわっと身体を浮かせる。


 私は飛べる。ふわっと、危なげなく、思うままに、飛べる。


 ふわふわっと、目の前の大木より高く浮かぶ。

 高いところ嫌いでなくて良かった。

 くるりと視線を巡らせて、森の中、少しひらけた場所を見つけた。

 大きな岩がいくつかあるけど、魔法で整地しちゃえば大丈夫。


 そこを目指して、浮かびながら、障害物を避けて進む。

 そういえば、自販機と、公衆トイレはどうしよう?

 消す?

 でも、まあ、せっかくだし、そのままにしておきますか。

 公衆トイレはともかく、自販機はお金か電子マネーがないと、買えないけどね。

 

 よし、拠点づくりだ。


 物心ついたときから、必然的に一人で行動することが多かった私は、孤独とか寂しさとか感じることがない。

 拠点どんなのにしようと、ワクワクした気持ちで、天然のバリケードとなっている木々の上を、ふわふわと目的地へむけて、飛んでいった。


 なんだか、とても、楽しいかもしれない。

 

 


 


 

 

 

 






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